子どもの13・5%、約7人に1人が貧困状態にあることが、厚生労働省が先月公表した国民生活基礎調査でわかった。とりわけ母子世帯の貧困率の高さは長年の課題である。
しかも調査は2018年時点のものだ。コロナ禍で、そうした子どもたちの困窮がさらに深まることが懸念される。実態把握と支援の拡充を急がねばならない。
調査結果は、中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の子どもの割合を示す数字で、15年の前回調査の13・9%より改善した。しかし主要7カ国(G7)の中では米国、イタリアに次ぐ悪い水準だ。
日本では母子世帯の母親の9割近くが働いている。にもかかわらず平均収入は18年の調査で231万円で、子どものいる世帯全体の平均の約3分の1。男女の賃金格差や、非正規雇用で働く人が多いためだ。
NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が今年6月、食品を届けているひとり親家庭を対象に実施したアンケートでは、収入が減ったと答えた人が7割を超えた。生活費を節約するため食事の回数や量を減らしているなどの声も寄せられた。
政府は、児童扶養手当を受給するひとり親世帯に最低5万円、収入が減った世帯にはさらに5万円を支給するとしているが、それでは不十分との声が根強い。コロナ禍の影響は長期化も予想される。実情をしっかり把握し、何が求められているのか、検討すべきだ。
さらに、子ども食堂や学習支援など、子どもの貧困対策に取り組むNPOは、これまで活動を支えていた企業などの寄付が集まりにくくなったり、感染リスクを避けるために活動が制約を受けたりと、苦境に立たされている。そちらにも目を向け、支える必要がある。
安倍政権は子育て世帯への支援の充実を掲げ、大学などの学費の負担軽減や未婚のひとり親世帯への寡婦控除の適用など、取り組みを進めてはきた。
昨年改正された子どもの貧困対策法では、都道府県の努力義務だった貧困対策の計画策定が市町村にも広げられた。昨年11月には子どもの貧困対策大綱が見直され、貧困の現状や政策の進み具合を検証するための指標もよりきめ細かくなった。
これらの取り組みの成果がわかるのはこれからだ。日本は従来、この分野への支援が手薄と言われてきた。検証を踏まえ、より効果の高い施策に結びつけたい。
子どもたちの育ちと学びは社会全体で支える必要がある。そのための投資を、ためらってはいられない。
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