FC2ブログ

記事一覧

第10章 音符のプロパティ(パラメータ)を設定する

この章では、音符のプロパティにて音量やモジュレーション、ブレシネス、ジェンダーファクター等の各種パラメータを設定して調声する方法を解説します。

「はじめに/UTAUクイックスタートの使い方/目次」に戻る
前章:第9章 連続音音源を使用する

UTAUでは、VOCALOIDと同様に1つ1つの音符に様々なパラメータを「音符のプロパティ」画面にて設定して調声することができます。
ベロシティやブレシネス、gフラグ(ジェンダーファクター)のようなVOCALOIDと同様の働きをするパラメータと、YフラグやHフラグなどのUTAU独自のパラメータがあります。

10-1 音符のプロパティ画面を開く

10-1-1 音符のプロパティを設定したい音符を選択してから、メニューバーの「編集」→「選択部分のプロパティ」を選択してください。

※複数の音符を選択して、同一のパラメータ値を設定することも可能です。
※ショートカットキー「Ctrl」+「E」押下でも開けます。

10-1-1-1.png

※選択した音符を右クリックして、「プロパティ」または「複数選択のプロパティ」を選択しても開けます。

10-1-1-2.png

10-1-2 最初に「音符のプロパティ」画面を開いた時は、画面下半分の機能が隠されていますので、画面左下の「▽詳細」をクリックして下半分を表示させてください。また、すべて表示されている状態で「△隠す」をクリックして下半分を再度隠すことができます。

10-1-2.png


10-2 基本プロパティを設定する

10-2-1 詞・キー・長さの設定

10-2-1.png

詞 :歌詞を表示。手入力で変更可能です。
キー:音程を表示。リストボックスで選択可能です。
長さ:音符の長さをTicks単位(四分音符=480)で表示。手入力にてTicks単位で設定可能です。

※音符の歌詞・キー・長さは音符入力画面上でも変更可能です。詳細は「第3章 音符、休符「R」、歌詞を入力する/テンポを設定する」をご参照ください。

10-2-2 音量の設定

10-2-2.png

0%~200%の間で上下の矢印ボタンまたは手入力にて音量を調整可能です。デフォルト値は100%です。
おおよそのdB単位の音量にすると、200%で-0dB、100%で-6dB、50%で-12dBになります。基本的には100%を基準にして、音量を抑えたい音符は100%未満に下げると良いでしょう。
注意:UTAUはクロスフェードで音を繋いでいる為、音量を極端に上げ過ぎると音が割れる場合があります。

※音符の音量はUTAUメイン画面左下の「~」ボタンが押されている時に音符の上に%単位で表示されます。また、音符を選択して上下にドラッグして音量を変更することも可能です。

9-6-5-2.png

※VOCALOIDのDYN(ダイナミクス)パラメータのように、1つ1つの音符に音量の抑揚(変化)を付けたい場合は、エンベロープ画面にて調整します。
エンベロープ画面については、UTAU操作マニュアルの「9-1.エンベロープを調整するには」をご参照ください。(後日UTAUクイックスタートにも記載する予定です)

10-2-3 モジュレーションの設定

10-2-3.png

人の発声には、ピッチ(音の高さ)が低い状態から発声が始まり、一定時間後に本来のピッチに達するという特徴がありますが、そのまま歌声を合成すると音痴になってしまいます。
UTAUでは、ピッチの揺らぎを抑制して音痴になるのを防ぐ為に「モジュレーション」というパラメータを設定します。
VOCALOIDの「ベンドの深さ」の設定に相当するものになります。
-100%~200%の間で上下の矢印ボタンまたは手入力にて調整可能ですが、連続音音源を使用する場合は、最もピッチが安定するデフォルト値の0%のままにしてください。
単独音の場合は、モジュレーションの値を上げる事により、ピッチが平準化し過ぎて機械音っぽくなるのを防ぐ事ができますが、上げ過ぎると音痴になるので5~20%程度の小さめの値で設定してください。
注意:デフォルト値は0%ですが、値を削除して空欄にすると100%として扱われます。

10-2-4 原音値の設定(先行発声・オーバーラップ)

10-2-4.png

UTAU音源には、各音素の音声WaveファイルをUTAU用音源として使えるようにする為に、原音設定ファイルが備わっています。
原音設定のパラメータは各音素毎に決められた値が設定されていますが、「先行発声」「オーバーラップ」のパラメータのみ、音符のプロパティにて音符毎の個別の設定値を付けることができます。
原音設定の詳細については、UTAU操作マニュアルの「10.原音設定について」をご参照ください。

① 先行発声

先行発声は、子音の発声タイミングを合わせる為に、自動的に早めに発声させる設定です。
ミリ秒単位(小数点以下はマイクロ秒単位)で手入力にて設定可能です。
値が空白の場合は原音設定の値が適用されます。
基本的には原音設定に適切な設定値が設定されている為、先行発声の値は空白のままにしてください。

② オーバーラップ

オーバーラップは、前の音符の音声の終端部分と、設定している音符の音声の先頭部分を重ねて音の繋がりを良くする為の設定です。ミリ秒単位(小数点以下はマイクロ秒単位)で手入力にて設定可能です。
値が空白の場合は原音設定の値が適用されます。
連続音音源の場合は原音設定に適切な設定値が設定されている為、オーバーラップの値は空白のままにしてください。
単独音音源の場合は、オーバーラップを長く設定するほど音のつながりは良くなりますが、代償として子音の発音が前の音符の母音にかき消されて滑舌が悪くなります。音素の並び方によってはオーバーラップ値を調整した方が良い場合もありますが、慣れないと適切な設定が難しいので、基本的には空白のままで問題ありません。

③ 「クリア」ボタン

「クリア」ボタンクリックで先行発声・オーバーラップ値を空白にできます。
単独音音源用に作成したUSTファイルを連続音音源用に使いたい場合などに、一括ですべての音符の先行発声・オーバーラップ値をクリアするのに使用します。

④ 「原音値」ボタン

1つの音符に対してのプロパティ画面を開いている場合は、「原音値」ボタンが表示されますので、クリックして原音設定の値をコピーすることができます。

10-2-5 子音速度(ベロシティ)の設定

10-2-5.png

UTAUでは、子音の再生速度を変化させることによって、子音の発声時間を調整することができます。
VOCALOIDのVEL(ベロシティ)の設定に相当するものになります。
デフォルトでは空白に設定され、子音速度の変化はありません。設定値は100が空白値と同様に子音速度の変化なしとなり、0~200の間で設定します。

値を100より大きくすると再生速度が速くなり、子音の発声時間が短くなります。最大設定値200で2倍の再生速度(半分の発声時間)になります。
テンポの速い高速歌唱では子音速度を上げることにより、滑舌が良くなる効果があります。
再生速度を上げ過ぎると却って子音が聞き取りにくくなります。最大150程度に抑えた方が良いでしょう。

値を100より小さくすると再生速度が遅くなり、子音の発声時間が長くなります。最小設定値0で半分の再生速度(2倍の発声時間)になります。
調整によっては、か行、た行等の子音部分が短い音の滑舌を改善できる場合があります。
再生速度を下げ過ぎると音が歪む場合があります。再生速度を下げる設定は必要な音符に個別に実施した方が良いでしょう。


10-3 ブレシネスやその他のパラメータ(Flags)を設定する

UTAUでは、VOCALOIDと同様にブレシネス(息成分の調整)やジェンダーファクター(声のフォルマント調声)等のパラメータを調整して、楽曲に合った声質の歌声を合成する事ができます。以下に各パラメータの種類毎にパラメータの効果と入力方法を解説します。

※UTAUでは1つ1つの音符に一定の値を設定します。VOCALOIDの様に1つの音符内で値の変化を付けることはできませんが、ダイナミクス(音量の変化)やピッチベンド等の一部のパラメータは以下の様に音符のプロパティとは別の設定画面で調整可能です。

DYN(ダイナミクス)→エンベロープ画面
※後日解説ページ追加予定。UTAU操作マニュアルの「9-1.エンベロープを調整するには」もご参照ください。

POR(ポルタメントタイミング)、PIT(ピッチベンド)、PBS(ピッチベンドセンシティビティー)→ピッチコントロール(Mode2)画面※後日解説ページ追加予定。UTAU操作マニュアルの「12.Mode2機能について」もご参照ください。

10-3-1 BRE(ブレシネス)

10-3-1.png

BRE(ブレシネス)は声に息成分(ブレス感)を加えるパラメータです。VOCALOIDのBREと同等のものです。
「BRE」欄に値を入力して設定します。デフォルトでは空白に設定され、基本値の50と同じ値として扱われます。0から100の間で手入力で設定可能です。
値が大きいほど息成分が増えてブレス感が増しますが、上げ過ぎると声がかすれて聴きづらい声になりますので、全体的には基本値の50のままにして、語尾等のブレス感が欲しい音だけ値を上げるようにすると良いでしょう。
連続音音源の場合は単独音音源よりも息成分が多く出る為、音源によっては全体的に40以下の少し小さめの値にした方が良い場合があります。音のクリアさを求めるなら小さめ、ウィスパーボイスを生かす調声をしたい場合は少し大きめの値に設定してください。
なお、ブレス(息継ぎの音)を使うときは100に設定すると音の変質が抑えられます。

10-3-2 No Formant Filter

10-3-2.png

チェックを付けると通常は自動的に行なわれるフォルマント調整を行なわないようにします。
通常はチェックは外したままにしますが、原音に楽器等の人の声以外の音を使った場合に使用します。

10-3-3 Flags

10-3-3.png

「g-5H30Y0」という様に、Flags欄にパラメータ毎に決まったアルファベットと数値を入力して、パラメータを設定します。

※UTAUで調整できるパラメータは15種類ほど存在しますが、ここでは特に良く使われるパラメータに絞って解説します。
全てのパラメータについて知りたい方は、UTAU操作マニュアルの以下のページをご参照ください。
7-3.「Flags」の各種設定について

① gフラグ(英小文字のg)

フォルマント(喉や口の中の構造によって決まる声質)をコントロールしたような効果が得られるフラグです。VOCALOIDのGEN(ジェンダーファクター)に相当するパラメータです。

このフラグは、g+10、g-10というように、必ず+(プラス)か-(マイナス)の正負記号を付けて指定します。ただし、プラス記号は省略可能です。

プラス方向へ調整すると声が太くなり、より大人っぽい・男性らしい声になります。
+20以上にすると女声が男声のようになる場合もあります。
例えば「重音テト」に「g+25」を設定すると、若い男性のような声になり、「重音テッド」という男性転換キャラクターの声に当てられます。

マイナス方向へ調整すると声が細くなり、より・子供っぽい・女性らしい声になります。
特に女声音源の場合は-5~-10程度に調整すると低音部分の声の劣化をある程度抑えることができる場合があります。
-20以上にすると男声が女声のようになる場合もあります.

② Hフラグ(英大文字のH)

高音域を削り、低音域を強調するローパスフィルタです。VOCALOIDのCLE(クリアネス:高音域を強調するパラメータ)とは逆の働きをします。

UTAU音源によっては高音域に耳障りなキンキン、ザラザラしたノイズが混ざる場合がある為、Hフラグを設定するとノイズを低減させる効果があります。
Hフラグの値を上げ過ぎると声が籠りますので、最初はH20~H30程度に設定して、徐々に値を上げて調整すると良いでしょう。

注意:Flagsは英大文字、小文字で効果が異なるものが存在します。Hフラグにも英大文字とは別に英小文字のhのフラグも存在します。英小文字のhフラグもローパスフィルタですが、子音の息成分(ブレシネス)以外にかかって高域の子音成分を強調する為、強くかけると声がひどくかすれてしまい調整が難しいフラグです。
ノイズを低減する目的であれば英大文字のHフラグの使用をお勧めします。

③ Yフラグ(英大文字のY)

子音部の固定範囲以外の母音部分にかかるブレシネスと思われますが、詳細は不明です。
Yフラグを設定しないデフォルトの状態では「Y100」の値と同じに扱われます。
「Y0」というように小さい値を指定する事により、相対的に子音部分のブレシネスが強くかかる事になるので、滑舌が良くなる効果があると考えられます。
ただし、副作用として高音のキンキンしたノイズが出る為、Yフラグの値を大きめに調整するが、前述のHフラグを併用して調整する必要があります。
注意:連続音音源を使用する場合は、Y0等の小さい値を指定するとノイズの原因になるので、Yフラグの使用は避けてください。

Yフラグの詳細については、以下のUTAU作者様のブログの解説記事もご参照ください。
UTAUについて:加えるだけでカツゼツがよくなる魔法のオプション"Y0"

10-3-4 STP/Others

10-3-4.png

「STP」は先行発声が前の音符をつぶさないように、先行発声の長さを自動的に調整する機能です。
STPの値の調整は自動的に行われるため、特に手動で設定する必要はありません。

「Others」ボタンはエンベロープやポルタメントの設定値をテキスト画面で出力するボタンです。
テキスト画面に直接数値を入力して設定値を変更する事も可能ですが、通常は使いません。

10-3-5 すべての設定が終わったら、「OK」ボタンをクリックして設定画面を閉じてください。

10-3-5-1.png

UTAUメイン画面左下の「~」ボタンと「P」ボタンを両方クリックして押された状態にすると、音符の下にモジュレーション(mod)、ブレシネス(bre)、Flagsの値が表示されます。

10-3-5-2.png


10-4 「プロジェクトの設定」画面にてFlagsの設定を行う

メニューバーの「プロジェクト」から「プロジェクトのプロパティ」を選択して「プロジェクトの設定」画面を開き、「生成時オプション」の欄に「g-5H30Y0」という様にFlagsの値を直接入力して、「OK」ボタンをクリックして設定画面を閉じる事により、プロジェクト全体の全ての音符に一括してFlagsを適用する事ができます。

※「生成時オプション」適用後も、「音のプロパティ」画面の「Flags」入力欄は空欄のままになります
※「音のプロパティ」画面の「Flags」入力欄に値が入力されている場合は、「音のプロパティ」画面の入力値の方が優先して適用されます。

2-2-1.png
10-4.png


10-5 「音符のプロパティ」のデフォルト設定を変更する

音符のプロパティやFlagsには基本値が設定されていますが、「音符のデフォルト設定」画面にて、音符を入力した際に設定されるプロパティやFlagsのデフォルト値を変更する事ができます。
注意:「音符のデフォルト設定」画面にて設定する前に、すでに入力されている音符のプロパティやFlagsは変更されません。

10-5-1 メニューバーの「ツール」より「音符のデフォルト」→「基本設定」を選択して、「音符のデフォルト設定」画面を開きます。

10-5-1-1.png
10-5-1-2.png

10-5-2 「音量」と「モジュレーション」は、スライドのツマミをドラッグするか、値を直接入力して設定します。

10-5-2.png

10-5-3 「ブレシネス(BRE)」、フラグの「g、Y」については、設定したい項目にチェックを入れてからスライドのツマミをドラッグするか、「その他」に値を直接入力して設定します。
「g、Y」以外のフラグについては「その他」に値を直接入力して設定します。
「No Formant Filter」は、人の声以外の音源を使う場合にはチェックを入れて設定します。
設定の状態は「Flags」に青字で表示されます。(「BRE」は「B」、「No Formant Filter」は「N」として表示)

10-5-3.png

10-5-4 設定の入力が終わったら「OK」ボタンをクリックして設定画面を閉じてください。
※設定を全て基本値に戻したい場合は設定画面右上の「クリア」ボタンをクリックしてください。

10-5-4.png


次章:第11章 エンベロープ・母音結合を設定する(後日作成予定)
「はじめに/UTAUクイックスタートの使い方/目次」に戻る
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント