"コロナ専門病院"となり3億円超の赤字...病院長の想いは?十三市民病院が外来診療再開へ
2020年07月09日(木)放送
新型コロナウイルス患者の専門病院となっている大阪市立十三市民病院では、7月27日から一般外来の診療が再開されることになりました。2か月あまりにわたって感染症と向き合った医師がMBSの取材に応じてくれました。
患者がゼロのコロナ専用フロアも
十三市民病院は今年5月から新型コロナウイルスの中等症患者の専門病院となりました。7月9日の時点で入院患者は14人と患者数が減少傾向であることから、産科を除いたすべての一般外来の診療が7月27日に再開されることになりました。これに向け7月9日には受付や待合室などの消毒作業が行われました。
病院の7階は5月22日から新型コロナウイルス患者の専用フロアになっていますが、取材に訪れた7月7日は、7階の患者はゼロでした。
「いま患者さんはいないですけど、患者さんが来たらこう動くとかシミュレーションして、みんな準備している。」(十三市民病院 西口幸雄病院長)
病院では5階から8階までを新型コロナウイルス専用として90床を準備し、多くの患者を受け入れるために改修工事も行われました。
専門病院になった後に“タクシーの乗車拒否”
今年4月、感染者の増加により病床確保が課題として叫ばれるようになり、大阪市の松井市長が突如、十三市民病院の“専門病院化”を発表しました。発表されたのは4月14日。緊急事態宣言真っ只中で、この日の新規感染者は59人でした。その後も連日2桁の感染者が確認され、専門病院としての一部運用が始まった5月1日の感染者は14人。しかし、本格運用が始まった5月27日の感染者はわずか3人と、すでに減少傾向でした。
十三市民病院は専門病院となったことで160人ほどいた入院患者全員を他の病院に転院させるなど対応に追われ、さらに職員がタクシーの乗車を拒否されたり、中傷を受けたりするなどの被害も受けました。
「コロナウイルス患者のケアについて、心身すり減らして使命だと思ってやっている。温かい目で見ていただけたらうれしいです。」(十三市民病院 西口幸雄病院長 今年5月)
「どこかがやらないといけなかった」
運用開始から2か月あまり、医師45人・看護師190人ほどの体制を整えたものの、最大で21床しか使われず、入院者数が1人のときもあったといいます。専門病院の必要性について、病院長は…
「患者さんを集めるための専門病院は必要だったと思います。あの時は体制がどこもできていなくて、増えているときはどこかがやらないといけなかったんだと。感染者数が減ったのは結果論かなと。」(西口幸雄病院長)
専門病院になったことで、外来診療や手術費などで月に4億円あった収益は2000万円ほどになり、毎月3億円を超える赤字だといいます。一般外来が再開されることについては…
「外科医たちは手術したいんだと思います。一生懸命勉強してきたことをやりたいと思っているんですよね。少しずつ再開しないとその人たちのモチベーションが保てない。」(西口幸雄病院長)
外科医や麻酔科などは手術が一切ないため、空き時間で論文を執筆する医師もいます。
「麻酔科関連でもコロナウイルス関係の論文が出つつありますので、勉強していくこともモチベーションの維持につながると考えています。」(麻酔科医)
7月に入って感染者が2桁になるなど第2波の足音が聞こえる中、新型コロナウイルス専門病院は今後はどうなっていくのか。大阪市の松井市長は…
「第2波・第3波がくれば、十三はまた非常に厳しい環境になりますから、少し体を休めてやってもらってもいいんですけど。現場のみなさんにお任せをして、外来の再開の判断をされたと。」(大阪市 松井一郎市長 7月9日)
十三市民病院は入院患者の受け入れは原則行わず、入院患者用の病床は引き続き新型コロナウイルス患者の専用病床として治療が続けられます。