安倍首相の引用データ不正確、GoToで宿泊増の沖縄「医療体制すでに逼迫」
2020年8月7日 06時00分
新型コロナウイルスの感染状況について、安倍晋三首相は6日、全国的な重症者の少なさや検査・医療体制の余裕度などから「緊急事態宣言を出す状況ではない」と述べた。一方で、厳しい状況に置かれている地域はあり、首相のデータ引用には不正確な部分もあった。(原田遼、井上靖史、藤川大樹)
「医療体制はすでに逼迫 している」。沖縄県の担当者は、安倍首相が「医療提供体制が逼迫しないよう、きめ細かく対策を講じる」と話した6日、取材に危機感をあらわにした。
県内では7月8日以降、新規感染者が急増。1日あたり47人となった8月1日時点で、病院とホテルに確保した計278床はいっぱいになった。この日、県は独自の緊急事態宣言を発出。離島への渡航自粛や飲食店の営業時間短縮などを求めた。
現在は計430床に増やしたが、感染者はそれを上回るペースだ。重症者は3人と少ないものの、303人の入院・療養先が決まっていない。政府の観光支援事業「Go To トラベル」で、全国から観光客も訪れている。那覇市のあるホテルは宿泊客が増える一方、県から療養の部屋の提供を求められ、難しい対応を迫られた。
新規感染者が急増している愛知県も6日、独自の宣言を出した。感染者の大半は軽症・無症状で病床は逼迫していないが、担当者は「日々100人を超える感染者が出ている状況を好転させたい」と話す。
首相が緊急事態宣言を出す状況にないとする根拠としたデータには不正確な部分があり、データの評価にも疑問がある。
「PCR検査能力は1日5万件まで大幅に向上している」と話したが、厚生労働省のホームページでは3万7400件。担当者は「(簡易な)抗原検査も含めた数を言ったのではないか」と推察するが、抗原検査はメーカーが1日2万件以上、出荷できると説明しただけで精度も異なる。
首相は重症者や死者のデータを挙げて「それぞれ大幅に抑えられている」とも述べた。今春の感染拡大期、死に至るような重症化のピークは感染確認から数週間後にやってきた。
首相は今春と比べ、都内では入院期間が短縮しているとも話した。これは、厚労省が5月にPCR検査を受けなくても退院できるよう制度変更したことが影響した可能性もあり、単純に比較できるかは不明だ。
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