コロナ検査を「いつでも、だれでも、何度でも」~ニューヨークを目指す「世田谷モデル」
保坂展人区長は児玉龍彦名誉教授の助言を全面的に受け入れ、実行に移し始めた
保坂展人 東京都世田谷区長 ジャーナリスト
児玉龍彦教授との出会い
4月、第一波のピークを迎えていた頃、知人を介して児玉龍彦教授を紹介され、電話でお話したところ、「今からでもお会いできませんか」という話になり、東京大学先端科学技術研究センターにお訪ねをしました。世田谷にお住まいの児玉教授は、感染拡大に危機感を強め、「院内感染と介護施設等の感染防止を急がなければなりません」と指摘されていました。
当時、世田谷区内の医療機関や高齢者施設でも院内感染や施設内感染の事例があり、一度発生すると病院や施設を中心にして地域全体に広がっていく怖さを感じていました。当時は、「抗体検査」であらかじめ病院の医療スタッフ全員や、高齢者施設のスタッフと利用者全員に「抗体検査」の網をかけて、症状の出なかった感染者も含めて全容を把握しようという提案でした。
世田谷区内での検討期間を置いて7月8日の記者会見で私は、「新型コロナウイルスの抗体の有無を調べる抗体検査を実施する」と発表しました。
「区内の高齢者施設や障害者施設が主体となり、利用者や職員らを対象に取り組む。抗体検査は過去に感染したかどうかを調べることができ、感染実態の調査・分析にもつながる。世田谷区は区内にある東京都医学総合研究所による検査に協力し、1000人程度を対象に採血で検査する。抗体があった人にはPCR検査もあわせて実施する」(日本経済新聞)と報道されましたが、自治体としての感染防止対策をあわせて抗体検査をするのは、独自の取組みです。
すでに、児玉教授は先端研としての研究調査のために、世田谷区内の高齢者施設や病院を対象とした「抗体検査」を実施しています。一方、上記記事にあるように世田谷区も、高齢者施設や障害者施設で合算して1000人規模の「抗体検査」を実施することを、東京都医学総合研究所の協力を得て呼びかけています。この研究所には東大先端研と同型の抗体検査の測定機器が入っていて、研究上の連携をしています。すなわち、「社会的検査」についての課題意識は3カ月かけて、私自身も共有してきました。