香港議会選延期 露骨な民主派つぶしだ
2020年8月8日 06時34分
香港政府は九月六日に実施予定だった立法会(議会、定数七〇)選挙を一年延期すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に挙げるが、選挙前の民主派つぶしの狙いが露骨である。
香港政府の林鄭月娥行政長官は延期を発表した七月三十一日の記者会見で「七カ月にわたるコロナとの闘いの中で、最も苦渋の決断だった」と述べた。
確かに、香港で七月半ば以降、一日の新規感染者が百人を超える状況が続いていた。だが、同政府は九月の選挙実施を前提に七月十八日から立候補を受け付け三十一日が締め切りだった。
コロナ対策が理由なら、もっと早く対応を取れたはずである。昨年秋の区議選で圧勝した民主派は「立法会選での敗北を避けるための口実だ」と反発しているが、その言い分の方が説得力がある。
香港民意研究所が同三十一日に実施した世論調査では、55%が選挙延期に反対し、賛成は36%にとどまった。
中国政府が「一国二制度」をふみにじる「香港国家安全維持法」の新法制を強行した香港の激変期でもある。立法会選を通じて新法制への賛否を問うべきだと過半数の香港住民が考えていることは、世論調査結果からも明らかだ。
延期決定には、中国政府の関与が濃厚だ。中国国営新華社通信は長官会見に先立つ七月二十九日、中国政府が選挙延期を支持する意見を表明していたと報じた。
新法制は表向き、政府転覆などにつながる行動を犯罪として罰することを目的とする。だが、香港住民の民意を問う機会をつぶすような中国政府の強引さからは、香港政府を傀儡(かいらい)とし、香港の民主主義を有名無実化しようとする新法制の真の狙いが透けて見える。
そもそも、香港の選挙管理当局は立候補受け付け終了を待たず、現職の立法会議員四人を含む民主派十二人の出馬資格を剥奪した。
中国と香港の政府はあらゆる手をつかって民主派つぶしをしてきた。かりに、九月の選挙が実施されたとしても、とても公正なものとは言えない。いわんや、延期をや、である。
同法施行により、香港ではデモに参加しただけで逮捕され、「香港を取り戻せ」などのスローガンすら禁句とされるなど、極めて息苦しい社会になった。
延期について、米国は「民主主義のプロセスを損なう」と批判した。国際社会は、中国の香港抑圧に反対する圧力をかけ続けたい。
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