今となってはすっかりオシャレ靴の定番となったデッキシューズ。しかし、もともとは『船乗りの命を守るための靴』として生まれた靴です。
船の上は水で濡れていることは多く、普通の靴だと滑ってしまいます。船の上で足を滑らせると、そのまま海に落下してしまったり、船が揺れて頭をぶつけてしまったりといったように、命の危険があります。
そうした事故が起きないように開発されたのが『デッキシューズ』です。高いグリップ力で濡れた地面でも足を滑らせないような機能を備えています。
「モカシン縫い」を採用しているデッキシューズは、見た目が非常にモカシンと似ています。そのため、デッキシューズとモカシンを同じ靴だと思われている人も少なくないようです。
モカシン縫いのデッキシューズとモカシンの違いは、機能性にあります。
デッキシューズは最初に書いた通り「船乗りの命を守るための靴」として開発されており、濡れた床の上でも滑らないような機能を持ったアウトソール(靴底)を備えています。デザイン性でデッキシューズとモカシンを分けることはありません。
モカシンは必ずアッパーが革素材で作られていますが、デッキシューズにはさまざまな素材が採用されています。キャンバス地やナイロン地など、スニーカーに近い素材で作られたデッキシューズも少なくありません。
モカシンは必ず革素材で、アウトソールに決まりはなし。デッキシューズは必ずアウトソールが滑らないような機能を保持していて、素材に決まりはなし。こうした違いがあると覚えておきましょう。
革のデッキシューズは、基本的に動物油でなめした「オイルドレザー」で作られています。油が革に染みこんでいるため、ある程度の水を弾いてくれます。
革は水を吸うと重くなったり、乾くときに罅割れてしまったりします。そうした革のデメリットを回避するためオイルドレザーが使用されています。
ただし、デッキシューズを使用しているうちに、油分は徐々に抜けてしまいます。オイルドレザー用のメンテナンスクリーム等を活用して、時々油分を補いましょう。メンテナンスすることでお気に入りのデッキシューズが長持ちするのはもちろんのこと、革の風合いが出て見た目も美しくなっていきます。
トップサイダー
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デッキシューズとドライビングシューズも比較されることが良くあります。ドライビングシューズもデッキシューズ同様、滑りにくいような機能を持ったアウトソールを備えています。
似た性質を持つデッキシューズとドライビングシューズの違いは「かかとに滑り止めが施されているか否か」です。
デッキシューズは船の上で使うことを想定しているため、底面にのみアウトソールが施されています。ドライビングシューズの場合、アクセルやブレーキ等をしっかりと踏むことを想定しているため、かかとにもグリップ力が求められます。
デッキシューズとドライビングシューズにデザイン的な差はなく、こうした機能性の違いとなっています。
ここまで見ていただいてわかるように、デッキシューズはデザイン性ではなく機能性を差していることがほとんどです。そしてその「機能」はアウトソールに集約されています。
デッキシューズのアウトソールは「自動車のタイヤ」と構造が似ていて、切れ込みや波形の“溝”が刻まれています。この溝がアウトソールとデッキの間にある水を効率よく排出し、乾いている状態と変わらないグリップ力を発揮するようになっているのです。
独自のアウトソールが有名なデッキシューズブランドとして『デュバリー』と『トップサイダー』が挙げられます。
『デュバリー』のアウトソールは、F1雨用タイヤである「フォーミュラー1」の溝を参考にして開発されました。このアウトソールは特許を取得するほど評価されています。
フォーミュラー1のタイヤはヨット競技向けシューズと同様、異なる使用環境において同じ性能が求められます。天候にかかわらず常に優れたグリップ力を求められるタイヤパターンが、アウトソールデザインに適していたのです。
グリップ力が非常に高い『デュバリー』のデッキシューズは、世界で活躍するヨットレーサーが愛用しています。
『トップサイダー』創立者のポール・スペリーが1935年に開発したデッキシューズのアウトソール「スペリーソール」。今でも愛され続けているスペリーソールが誕生したきっかけは、ポール・スペリーの愛犬でした。
デッキシューズの開発に携わっていたポール・スペリーは、ある冬、愛犬が氷の上を走り回っている姿を目撃しました。それをきっかけに犬の肉球を調べてみたところ、小さな円錐状の突起が集まってできているということに気付きます。
その後、スペリーソールはさまざまなシューズのアウトソールとして採用されました。そして、第二次世界大戦中、政府はスペリーソールが採用された『トップサイダー』のシューズをオフィシャルシューズとして認定しました。それほどグリップ力が評価されているのです。
デッキシューズのアウトソールは、グリップ力を高めるため柔らかいものが採用されています。一般のシューズのソールと比較すると、その柔らかさの違いに驚かれるかもしれません。
アウトソールのグリップ力は、アウトソールと地面がしっかりと密着した状態で発揮されます。そのため、どれだけ優れたソールパターンのアウトソールでも、固ければ効果が半減されてしまうのです。
そのため、「普通の靴よりもデッキシューズの方が履きやすい」と感じる方もいらっしゃるようです。一度履き比べてみると面白いかもしれません。
デッキシューズとは本来機能性を差す言葉でした。しかしその高いデザイン性に評価が集まり、ファッションアイテムとして活用されるようになってきています。
デッキシューズは革靴よりもカジュアルで、スニーカーよりもフォーマル感のある“ちょうどいい大人靴”です。機能性を求めてはもちろんのこと、ぜひ普段のファッションに合わせても使ってみてください。
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