TERUMO STORY エピソードで綴るテルモの歴史 SINCE1921

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水銀体温計の60年の歴史に幕
───水銀体温計から電子体温計へ

水銀体温計はテルモの原点だった

1985(昭和60)年11月、ある製品の生産が終了しました。その製品は水銀体温計。1921(大正10)年に生産を開始し、第二次世界大戦の期間中も、戦後の混乱期にも、全社員が心血を注いでつくり続けた商品でした。60年以上にわたってつくり続けられた水銀体温計は、まさにテルモの原点でした。テルモは水銀体温計を通じて、経営、生産、販売、技術などあらゆるものを学んできたのです。

そんなテルモにとって大きな財産であった水銀体温計の生産終了に踏み切ったのは、水銀が環境に良い影響を及ぼさないということからでした。体温計に使われる無機水銀は、有機水銀よりも毒性は低いものの、有害物質であることにかわりはありません。病院などで使われる体温計が間違って床に落ちてしまったりすると、水銀が流れ出ることもあり、医師の間からも水銀体温計の安全性を問う声が上がるようになったのです。

電子体温計の誕生

製造終了時の水銀体温計全品種 製造終了時の水銀体温計全品種

テルモは、水銀を使わないより安全な体温計の開発をめざして、1980(昭和55)年から電子体温計の開発に取り組みました。新しい電子体温計の開発にあたっては、使い勝手や精度はガラス体温計に匹敵するほど高品質であり、同時に電子化のメリットを加えることを基本としました。さらに重要なポイントに掲げたのは「正しい体温を短時間で正確に測れること」でした。

水銀体温計を使って腋下で体温を測ると、10分ほどでこれ以上上昇しない温度に達し、一定の温度を保ちます。この温度のことを平衡温といい、電子体温計では、検温を始めてからの温度上昇のデータによってこの平衡温を予測し、「短時間で正確に」測ろうとしたのです。

 

社員に配布された、製造終了記念の水銀体温計 社員に配布された、製造終了記念の水銀体温計

そのためには、精度の高い平衡温の予測法を確立することが重要で、そのためには、ごく小さな専用LSI(大規模集積回路)の開発が必要でした。また消毒できるよう防水設計であることなど多くの課題がありました。これらの課題をクリアし、さらに大量生産体制を確立して、1983年12月に病院用を、翌年2月に一般家庭用の販売が行われたのです。

この電子体温計の誕生を見届けるようにして、その2年後に水銀体温計はその歴史の幕を閉じたのでした。

 

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