つまり、ロッキード・マーチンがこれら4つの技術を手中に収めている限り、だれもこの技術を入手できない。しかし、ロッキードの保有するその他の21の技術項目をロッキードが売ることを国務省と国防総省が認めるかどうかは、疑問だ。これら21の技術にも非常に高度な武器や電子技術が含まれる。
■欧州メーカーへ働きかけ
こうした不確実な要素を背景に、韓国は、米国内で開発された技術を活用した電話機器やコンピューターの大量生産にたけている、欧州の部品メーカーとの関係構築や国内メーカーへの働きかけを急いでいる。最高レベルの戦闘機に必要な技術案を見つけ出すためだ。ユーロジェットはどうやら、この利幅の大きなビジネスに乗り気のようだ。同社のクレメンス・リンデン最高経営責任者(CEO)は、競合他社に比べ「より高性能で重量は軽く、より長持ちして信頼度が高く、製品の幅もある」エンジンを提供すると約束した。
一方、韓国航空宇宙産業は10年後にはKFXが飛行可能で将来の発展性もあると説明するが、その結果は決して保証されていない。技術移転の問題以外にも、KFXは費用がかかりすぎると指摘されている。KFXの価格はF16戦闘機の2倍で、性能はF16よりさほど高度でもない。
ロッキードがKFX向けに技術のほとんどを提供しないなら、韓国もF35戦闘機を予定通りすべて購入することは確約していない。
KFXへの技術移転をめぐるせめぎ合いと並んで、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の(在韓米軍への)配備をめぐって韓国側を説得するというもう一つの交渉案件もあった。THAADは上空200~300キロで侵入してきたミサイルを撃ち落とすシステムで、コストは甚大だ。
韓国防相は、朴大統領と韓国防相がワシントンにいる間、THAADは正式に議題にはのぼらなかったと説明したが、国防関係者間の協議では話し合われるとみられていた。中国とロシアはTHAADを韓国内に配備する計画に強く反発。このシステムが両国を念頭においたものではないと米国が表明したことも受け入れられないとした。
■合意を先送りする枠組み
米国防総省は不必要に長い言い回しで疑念や疑問を凍結させようとし、あらゆる事項について合意を先送りする枠組みをつくった。韓国メディア、聯合ニュースによると、この先送りの取り決めは「防衛技術に関する協力関係の向上に向けた省庁間の作業部会」と名付けられた。
米韓同盟は危機にないと見せるために、共同声明は今までにも繰り返された約束で締めくくられた。韓国は「朝鮮半島とアジア太平洋地域における平和と安全保障の要」と定められた――見解の相違の有無にかかわらず、こうした会合がしばしば結論づける、無難で冗長な言葉といえる。
By Donald Kirk, Contributor
(2015年10月16日 Forbes.com)