米国政府の当局者が米韓の防衛同盟を話題にするとき、好んで使う表現がある。「No daylight between us(我々の間に見解の違いはない)」。しかし実際には、米国と韓国は少なくとも費用規模の膨大な2つの案件で深刻な見解の相違を抱えている。
韓国の韓民求(ハン・ミング)国防相は今週、朴槿恵(パク・クネ)大統領に同行してワシントンを訪れたが、ここで第一の関門にぶちあたった。すでに国務省が決定していた通り、カーター米国防長官は、韓国が膨大な費用をかけて開発している国産戦闘機「KFX」に必要な4つの「主要な技術」を米国が提供するかどうかをめぐり、米国は韓国を信頼することはできないと再び率直に言明したのだ。米国の同意を得ない限り、韓国独自の高度な戦闘機であるKFXを製造するという夢は空中分解する。
■「この件は忘れてほしい」
韓国防相にとってはカーター国防長官の翻意に向け説得することが急務だったが、カーター国防長官は回りくどいことも言わずはっきりと、基本的にこの件は忘れてほしいと伝えた。国務省は5月にKFX開発に必要な25項目の技術のうち4項目について、移転はできないとする裁定を下していた。韓国航空宇宙産業は今後10年で、KFXを120機、製造したいとしている。
韓国側はKFXに必要だと主張する最高度の技術に関して、米国が同盟関係に基づいた技術移転を拒否したことについて、深い失望感を表明した。KFXはステルス能力の装備だけでなく、最先端のレーダーで敵の標的を探知、追跡する能力を手に入れるために、米からの技術移転が必要と主張している。
韓国の顔を立てる形で、カーター国防長官は一般的な技術協力については合意した。この点については、「協議フォーラム」といううまい具合に名前をつけた場を設け、韓国が米国の先端的な技術を手に入れる機会とするのだが、これは韓国が本当に求めていたものとはやや違った。
韓国の関係者によると、取引の内容はこうだった。米防衛大手ロッキード・マーチンが韓国にF35戦闘機を40機、販売する。F35戦闘機は現在製造中の米国の最新型戦闘機で、費用は約70億ドル(約8355億円)。ロッキードはKFXが必要な技術をすべて提供するという内容だった。現在韓国は、アクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダー、赤外線捜索追跡ナビゲーション装置(IRST)、電子光学標的追跡装置(EOTGP)、無線周波数妨害装備(RFジャマー)の4つを欧州のメーカーから入手することを検討するとしている。
これら4つの装置に使われる技術が最先端をいくのは明白で、米国は中国をはじめその他の国がこうした技術を手に入れるようなリスクは絶対に冒したくない。AESAは敵と味方を見分け、IRSTはミサイル発射を探知する。EOTGPは驚異的な精度で標的を発見し、RFジャマーは高出力の電子機器や端末を強制終了させる。