先日このブログでも、キリンのシングルグレーン、富士を飲みましたが、改めて、日本の大手メーカーのシングルグレーンを飲み比べてみようと思います。

今回は特別に、ニッカの蒸溜所限定のボトルも飲みます。
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シングルグレーンとは

一般的なブレンデッドウイスキーでは、大麦麦芽を使った「もろみ」を単式蒸留器で蒸溜したモルトウイスキーと、トウモロコシやライ麦、小麦などの穀物を使ったもろみを連続式蒸留器で蒸溜したグレーンウイスキーをブレンドしています。

比較的個性の強いモルトウイスキーに対して、グレーンウイスキーは連続式蒸留器で蒸溜することで比較的純粋なアルコールが取れるため、香りや味わいは穏やかになる傾向にあります。

ブレンデッドウイスキーにおいては、複数のモルト、グレーンをブレンドすることによって、癖をある程度抑えて比較的多くの人にウケるボトルを大量に生産するための方法と言っていいでしょう。

さて、シングルグレーンとは、一つの蒸溜所で作られるグレーンウイスキーをボトリングしたものになります。
シングルモルトでは、同じ蒸溜所内で複数の原酒をヴァッティングしてボトリングしているのと同様に、シングルグレーンでも同じ蒸溜場内で作られる複数のグレーン原酒をヴァッティングしています。

また、モルトウイスキー同様に樽で熟成を行っているため、味気ないものにはならず、樽からの抽出物によって一定の香りと味わいを加えていきます。

2012年に、ニッカがカフェグレーンをリリースした後、2015年にサントリーが知多を、2020年にキリンが富士をリリースし、日本の大手3メーカーがそろってシングルグレーンをリリースしました。

では、それぞれ飲んでみましょう。

ニッカ カフェグレーン

  • 700mL、アルコール度数45度、8000円
2012年にフランス向けに発売された後、翌年に日本でも発売が開始されました。

ニッカでは連続式蒸留器として、イーニアス・カフェが作ったカフェ式蒸留器という古い方式のものを使っています。
現在の連続式に比べると純粋なアルコールの抽出がされないものの、それによってもろみが持つ香り、味わいを保持して抽出されるメリットがあります。

ニッカ創業者の竹鶴政孝は、理想的なブレンデッドウイスキーのために、当時の株主だったアサヒビールの協力によってカフェ式蒸留器を導入しました。
現在は宮城峡蒸溜所で稼働しています。

ストレート

ゴムのような香りの後でバナナの甘い香りが続きます。奥からはバニラ、レモンの香りが続きます。
味わいは、苦みを多少持ちつつも、全体的には酸味が主体になります。そして後味には甘みが感じられます。

ハイボール

バナナ、栗、マスカット、レモンの香りが広がります。
味わいは、柔らかめの酸味の後にほろ苦さを得ます。

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ニッカ シングルグレーンウイスキー ウッディ&メロウ

  • 180mL、500mL、アルコール度数55度
ニッカの余市、宮城峡蒸溜所限定で販売されているカフェグレーンウイスキーです。
レギュラーとの違いはアルコール度数で、加水をほとんどしていない、55度もあります。

ストレート

ゴムやバナナの香りはするものの、レギュラーよりも薄い印象です。奥からバニラ、レモンの香りがするのも同じですが、やはり薄いです。
味わいは、アルコールの辛みが強く、それを過ぎると酸味が主体になります。甘みはしばらくして感じられます。

ハイボール

栗とバナナの甘い香りが主体になります。奥の方からはレモンの爽やかさもやってきます。

味わいは、苦みが前に来て、奥から甘みが訪れます。

サントリーウイスキー 知多

  • 700mL、アルコール度数43度、4000円
愛知県知多市にある、サントリー知多蒸溜所(旧:サングレイン)で作られているシングルグレーンウイスキーです。

1972年に創業後、サントリーのブレンデッドウイスキー向けのグレーンウイスキーの製造を手がけています。

シングルグレーンとしての知多では、ヘビー、ミディアム、クリーンという3タイプの蒸溜原酒を造り、それをホワイトオーク、スパニッシュオーク、ワイン樽に入れて熟成を行い、ヴァッティングをしています。

ストレート

レーズンの後にリンゴ、カラメル、バニラの甘い香りが次々とやってきます。

味わいは、甘みが主体で、所々でほろ苦さもあります。

ハイボール

香りはバニラが少々強めになり、後からバナナ、リンゴが続きます。レーズンは抑えめです。

味わいは、甘みが前に出て、苦みは抑えられて飲みやすくなります。

飲食店によっては知多のハイボールも飲めますが、単体で飲むにもいいです。

キリン シングルグレーンウイスキー 富士

  • 700mL、アルコール度数46度、6000円
キリンの御殿場蒸溜所で作られるグレーンウイスキーで、2020年に新発売となりました。

特徴的なのは、一般的な連続式蒸留器のほかに、ケトルと呼ばれる単式蒸留器と、ダブラーと呼ばれるバーボン向けに近い連続式蒸留器を使用していることです。
これによって、異なる特徴のグレーンウイスキーを作ることが出来るようになっています。

ストレート

軽くバーボンを思わせるエステリーな香りが先に訪れ、その後はナシ、リンゴ、樽からのウッディな香りが続きます。

味わいは、アルコールからの辛みが強く、その後はほろ苦さ、酸味へと続きます。

ハイボール

バーボンを思わせるエステリーな香りから始まり、リンゴ、カラメル、オレンジの香りが続きます。

味わいは、ほろ苦さがあるものの、後から酸味と甘さも追いかけてきます。
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まとめ

それぞれのメーカーのシングルグレーンを飲み比べると、メーカーごとにブレンデッドでも得られる個性を持っていることに気付かされます。

サントリーは日本人の口に合いやすいソフトな香りと味わいがあり、ニッカは濃厚で甘い香りに酸味を含ませた味わい、キリンはバーボンを思わせるエステリーな香りを持っています。

ただしブレンデッドとして加えるのとは異なり、シングルグレーンとして単体で飲めるよう、複数の原酒をヴァッティングして個性をしっかり引き出している点で、どのメーカーも共通しています。

とはいうものの、様々なシングルモルトと合わせることによって、より豊かな香り、味わいを持った即席ブレンデッドとしても楽しめる側面もあります。

どちらかと言えばシングルモルトに注目が集まりがちですが、今後はシングルグレーンも目を向けた方がいいでしょう。