意識調査を覗くとき   作:はんでぃかむ

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めたもるふぉーぜ?

 アルベドとニューロニストを呼び出し意識調査シートを書かせたが、特に何もなく、と言うより二人で話してはいるのだが盗み聞きできないくらいの声量で30分話し込んでいた。所々で聞こえてきたのは研究会がどうのこうのくらいのものだろうか。

 

「アインズ様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか」

「どうしたアルベド?」

 

 意識調査シートを回収した後、通常通り自室で執務をこなしている。

 

「はい、アインズ様の自室にある女性用の服なのですが。今後魔導国外で活動するときのために何着かお借りしたいのですがよろしいでしょうか?」

「許す。というよりもあれらについては気にせず使ってくれていい」

「よろしいのですか? かつての思い出の品と言うわけではないのでしょうか?」

「思い出の品と言えばそうなのだが、特別な思い出というわけでもなくてな……」

 

 先日、シャルティアたちに変身を見せてもらった時に思い出してしまったのだ。

 

「どういう意味か聞いてもよろしいでしょうか?」

 

 あー、と間延びした声とともにアインズは語る。

 

「あれはかつていた世界、ユグドラシルでのイベントでのことだ」

 

 

――性別逆転イベント

 

 

「これって異形種にも適用されるんですかね」

「一応注意書きには性別不明の種族であってもプレイヤーの性別に合わせて適用されると書いてはありますね」

「じゃあ、イベント前日に女性用の外装にした装備を着てからログアウトしてインした時にお披露目ーみたいなことしましょうよ!」

 

 ギルド拠点内でログアウトした場合はインした時に9層にある円卓に出てくる。ログアウト時は各自の部屋で着替えておいて、インした時に晒されるという風にしようという提案だ。

 

「うちの女性メンバー見る限りじゃ異形種だとそんな変化なさそうなんだよなー」

「まぁいいじゃないですか! こんな機会でもなければ女装することなんてないかもしれませんよ?」

「別に女装願望はないんですが……」

 

 

 

 

 

 

「モモンガさんは普通ですね、意外です。もっとゴシックロリータとかそういうの持ってくると思いました」

 

 銀のヘルムに黒いワンピースのワールドチャンピオンだ。全体的に少し縮んでいるように見える。

 

「俺ってどんなイメージ持たれてるんですか」

「軍服かっこいい?」

 

 ヘロヘロは残念ながら外装は肉体の形に少し反映されるくらいで外見は黒いスライムのまま。

 

「え? かっこいいですよね?」

「うん、普通にドレスなんてたまに出る普通の感性が今出るなんて」

 

 頭にピンクの花が咲いているぷにっと萌え。服はホワイトブリム製のメイド服。

 

「軍服かっこいいと思うんだけどなー、あと来てないのはペロロンチーノさんくらいですか」

「そう、今日は珍しくモモンガさんもペロロンさんも遅かったですね」

 

 角の消えたウルベルト。服は白いワンピース。

 適当にインの挨拶をしていると最後の1席に薄いピンクの鳥が現れる。

 

「ぶぼぼっ!」

「ちゃんとゼッケンにぺろろんって書いてありますね」

「おい弟」

「あれー、俺が一番最後か。皆さんこんちゃー」

「さっさとバンされてこいよ」

「姉ちゃん、使いすぎて手垢とかで薄汚れたみたいな色になってるじゃん」

 

 いつものてかてかしたピンクはくすんで陰影が濃くなり、普段より危うくなっているスライム。

 

「羨ましいか? お前のはまだピカピカ新品だもんなぁ弟、いや新品だけどだるだるだったか?」

「うわーん、ん? ホワイトブリムさん慰めてくれ……え? それまだあったの結構数配ってましたよね、没メイド服。着るの? 羽が薄ピンクなら似合う? そ、そう? じゃあ」

「スク水……」

 

 執事服を着た半魔巨人が真剣に不信の目で見ているようにみえた。

 

 

 その後、このイベント以外では女性外装は使いどころがないから、という理由でモモンガの部屋に詰め込まれることになった。

 

 

「それでは、あそこに仕舞ってある服は至高の方々がお使いになられたものということですか!」

「それはそうだが、1度しか使っていないものばかりだ。私も先日までなんで女性服が仕舞ってあるのか思い出せなかったくらいのものでしかない」

 

 性別の変化がわかりやすい種族にしていたプレイヤーたちは、変化した体にいつもの装備を来て違いを楽しんでいたようだが、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーでは気味の悪い仮装パーティにしかならなかったので、みんなすぐに着替えてしまった。

 

「しかし、そのようなものをお借りするのは……」

「では今度お前たちでファンションショーでもやってもらうか? 私が採点でもして何人かに配り、それを借りるということならまだ使いやすいだろう」

「……アインズ様がお使いになられたのはドレスでしたでしょうか?」

「ああ、せっかくだから私が良いと思ったものを選んだつもりだ」

「畏まりました、そういうことなら。ですが、どの御方がどの服を着ていたかというのは伏せさせてもらおうと思います」

 

 後日、女性NPCたち向けにファッションショーをしてもらったが、アインズが着ていたはずのドレスは見当たらなかった。


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