「市田柿」の加工、販売などを手掛ける飯田市川路のかぶちゃん農園(鏑木武弥社長)が18日、40人余りの従業員に対し、ほぼ全員を整理解雇する意向を伝えたことが関係者への取材で分かった。鏑木社長の父親が社長を務め、市田柿の主要販売先だったケフィア事業振興会が3日に破産手続開始決定を受けたことで販路が断たれ、事業の見通しが立たなくなったことが要因と見られる。
関係者によると、鏑木社長は14日に社員に対し希望退職を募るなどと説明したが、退職時の待遇などを巡り社員から不満の声が上がったことで対応を保留。18日にあらためて説明の場を設け、10月20日付でほぼ全員を整理解雇する方針を伝えた。社員らからは詳細な説明を求める声や憤りの声が挙がったという。
ケフィアが破産開始決定を受けた3日、鏑木社長は南信州新聞社の取材に対し「主要な取引先を失い大きな痛手だが、何とか踏ん張って事業を継続していきたい」などと述べていたが、同関係者は「一部に独自の販路を持つものの大部分をケフィアが占めており、干し柿を製造しても売ることのできない状況が続いている」と現状を語った。
飯田下伊那地域には、同社の関連会社として、かぶちゃん農園食堂、かぶちゃん信州乳業、かぶちゃんファームがあり、各社への影響も懸念される。
19日、かぶちゃん農園の社屋はカーテンが閉まり休業の様子。取引業者と見られる来訪者もあったが、休業と知り帰る姿も見られた。10年以上の付き合いがあるという飯田市内の取引業者は、「昨日の午後から連絡が取れなくなったので訪ねてみた。関係者と会うことができず残念。連絡を絶つというやり方は誠意にかける」と憤りをみせた。
かぶちゃん農園は2004年にケフィアグループ内の「ケフィア・アグリ」として設立。05年に川路へ本社を移転し、07年に社名を変更した。
同社は、市田柿を中心に農産物や農産加工品などの通信販売事業を展開。生産、物流、営業、コールセンター、食堂など順次事業を拡大し、設備投資を進めたが、11年には資金繰りが悪化し、事業の合理化のため100人規模の人員整理を実施。以降、事業を市田柿など農産物の加工製造にしぼり、他の部門をケフィアグループに移管した。
ケフィアは、通販会員に対する買戻付売買契約などの「オーナー制度」により資金を集めながら、多額の未払金を発生させ、被害対策弁護団が結成されるなど社会問題化した後に破産。かぶちゃん農園が製造する市田柿などは、オーナー制度の対象商品として扱われていた。