ごめんねヒーロー
▼ぐだ♂ホム短文まとめ/Twitterログ/足し算程度の話もあります。
▼表紙:illust/81710952よりお借りしました。
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【たわむれにふれる】
※フォロワーさんのイラストに添えさせていただいたもの
壊れ物を扱うように、トラウザーズ越しにそっと相手の尻に触れる。
女のように柔らかで丸みを帯びたラインを持つわけでもなければ、さほど良い肉付きをしているとも言えない。やや小ぶりとはいえ、ごくごく普通の男性の臀部だ。
いや、普通ではないな、と、ベッドに二人向かい合って――最早抱き合うようにして――ホームズの尻に触れる立香は思った。
普通ではない――それは別に相手が人ならざるサーヴァントという存在だから、という意味ではない。
ホームズが立香にとって特別な相手だから、という意味だ。
互いに触れて、触れられて、そういうことを許してもらえるような仲になってから、一体どれほど経っただろう。
況してや相手は何人たりとも自分の領域に足を踏み入れさせるような人物ではない。
そんな彼が今こうして、立香の望むように好きに身体を触らせてくれている。そんな状況が立香は何よりも嬉しかった。
「ん……ふ……」
尻に添えた手を立香が動かすたび、立香の肩口ではホームズがくぐもった声を零す。
始めは壊れ物を扱うように。
次第に力加減を調節して、時には優しく、時には強く。
女のような柔らかさはないが、トラウザーズ越しにも分かる、適度に鍛えられて引き締まったホームズのそこ。
柔らかさの上ではお世辞にも触り心地が良いとは言えないが、それでも揉めばちょうどいい塩梅の弾力で応えてくれるその感触に、立香の口元には自然と笑みが上った。
「いや中々……小さくて手の収まりが良いというか……」
零す感想も思わず好色な中年のようになって、そんな自分にまた苦笑を洩らす。
思えば情事の時にも、ここまで相手の尻そのものに意識を向けることはなかった気がする。
それよりも相手が如何に苦痛を感じず快楽を感じてくれるか、そういうことに苦心して、この収まりのいい可愛らしい部位を堪能することを疎かにしていたことに気付く。
「ね、ホームズ……」
尻を揉む手はそのままに、肩口に顔を埋めて恥ずかしそうに吐息を零すホームズにそっと囁く。
いつの間にかホームズは始めの時よりもずっと感じ入っていて、吐き出すその息を熱く甘いものにしていた。自分はそんなに彼にいやらしい触れ方をしてしまっただろうか。
「触るだけじゃ満足出来なくなっちゃった。……このまま、だめ?」
言うと同時に、服越しに割れ目を指先でなぞる。
これまでになかった動きに一瞬びくりと身を竦ませたのが何とも愛おしい。
ホームズは相変わらず何も応えはしなかった。
ただぎゅっと、立香の背に回した腕に微かに力を籠める。
「……うん。ありがと」
それを以って、立香は先ほどの自分の言葉に対する彼からの答えと受け取ることにしたのだった。