【ニューヨーク=西邨紘子】米34州・自治領の司法長官は4日、連邦政府に対し、米ギリアド・サイエンシズの新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」の供給拡大と価格引き下げを求める書簡を送った。開発に多額の公的資金が使われており、適切な価格での提供を求めた。
カリフォルニア州やルイジアナ州などの司法長官34人が、米保健福祉省(HHS)や米国立衛生研究所(NIH)の長官に書簡を送った。
ギリアドは6月末、レムデシビルの価格を発表した。米国の民間保険の加入者だと6回の投与で1人あたり3000ドル(約32万円)を超える。司法長官らは書簡で、レムデシビルの生産コストは処方1回分あたり1~5ドルと低価格にもかかわらず、ギリアドが「とんでもない」高価格に設定していると指摘した。
米国の特許制度「バイドール法」は政府資金を受け取った研究開発の成果について、大学や企業に特許の帰属を認めるかわりに、米当局に国民に適切な価格での提供と十分な供給の保証を監督する権限を与えている。司法長官らは書簡で、政府に後発品のライセンス生産許可といった介入を求めた。
レムデシビルはエボラ出血熱向けの治療薬として開発された。新型コロナへの効果が確認され、日米などが特例承認した。ギリアドは当初、各国政府に同薬を無償提供してきたが、商用生産に向けた体制が整ったとして米国では7月から有償販売に切り替えた。
米メディアによると、レムデシビルには基礎研究段階から累計で1億ドル近い公的資金が使われた。