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尾身茂氏から「GoToトラベル」相談の電話

 今後の感染者数はどう推移するのか。

「上がったり下がったりを続けることになるでしょう。この繰り返しの中で、『減衰振動』と言いますが、感染者数の上げ幅を小さくしていかなければなりません。陽性者1人が何人に感染させるかを示す実効再生産数が一を下回れば、流行は収束しています。一を上回っているときは、たとえばリモートワークの実施率を上昇させたり、大規模イベントを自粛したりして抑制させる。この方法はドイツでも行われています」(同前)

 では、話題のGoToトラベルキャンペーンは?

「旅行でリスクがあがらないというのは厳密に言うと間違っています。家族旅行は気をつければ大丈夫ですが、社員旅行など団体の場合は伝播する可能性がある。感染症専門家の有志の会でも、移動は差し支えないが、GoToのように推奨するのは難しいと議論しています。専門家たちの意見も固まっていない中、GoToは進んでいるのです」(同前)

コロナ対策分科会の尾身会長

 7月16日午前中、西浦氏に電話があった。掛けてきたのは、新型インフルエンザ等対策有識者会議会長とコロナ対策分科会長を務めている尾身茂氏だった。

「GoToトラベルキャンペーンの相談でした」(同前)

 その際、尾身氏は、

「できれば2週間は様子をみた上で決めたらいいんじゃないかという話にしようと思う」

 と話した。

 だが、その日に行われた経団連のフォーラムで、尾身氏は「旅行自体は問題ない」と発言する。

 この尾身氏の発言は真意と違うのではないか。感染症の専門家たちはそう心配しているという。

「尾身先生の意向がおそらく通っていないと思う。(対策分科会のメンバーである)尾身先生や押谷仁先生らは感染症の制御について間違った方向に導かないと私は信じています。ただ、有識者会議や分科会には経済学の専門家もいるし、政府の思いが強く入る構造になっている。そのため、政府や経済的な意向が混入されたかたちで、尾身先生は会長としてメッセージを出すことになる。もし流行が大きくなったとき、尾身先生に責任転嫁されるのではないか。政府の人は困ったら『専門家』という言葉を口にされるので」(同前)

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