囲碁との出合いは小学2年生。囲碁好きの父から姉と一緒に手ほどきを受けた。「子どものころの私は相当な負けず嫌いだったみたいで、試合に負けるたびに号泣していました」と下坂さん。目の前でにこにこしている姿からは想像できない。「負けたくない。その思いだけでずっと囲碁を続けているような気がします」。
高校時代に全日本女流アマチュア選手権で優勝してからは「日本で一番強い囲碁サークル」に入りたくて本学へ進学。早速、早稲田囲碁会に入会したが、そのレベルの高さに自信を失ったという。ずっと挑戦してきたプロ登用試験もトップとの厚い壁に阻まれ、一度はプロへの道をあきらめかけたが「でも囲碁以外に、自分のすべてを集中できるものはない」。そう実感した下坂さんは「今年が最後の挑戦の年」と覚悟を決め、女流特別採用試験に臨んだ。見事1位となり、プロになることが決定した時は「父がいちばん喜んでくれたと思います」と語る。
「最後と思って臨んだ対局は今までになく苦しいものでした。それだけにプロ合格報告の電話を実家にかけた時には、いろいろな思いが込み上げてきて、言葉もなく泣いてしまいました(笑)」と振り返る。結局たどりつくのは“自分のすべてを集中できるものは囲碁しかない”という思い。対局のあった朝は大好きな歌手の曲を聴いて喝をいれ、試合に勝ち、夢を自分の手につかんだのだ。
4月からはプロとしてトーナメントに出場している。勝ち続けることが一番の目標だが「発想の柔軟性を自分なりに鍛えることも、目下の目標です。どれだけ先の展開を読めるかが、勝負の決め手になるだけに自分自身の人間性も深めなくちゃとも思っています」。下坂さん自身は自分の棋風を「じっくり攻めていくタイプ」と分析しているが、今後は臨機応変に対応できるようになりたいという。4回目の挑戦でやっとつかんだプロの道。「職業はプロ囲碁棋士、と胸をはって言えるように鍛錬するのみです」とほほえんだ。
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