ハノイ=宋光祐
人手不足が深刻な日本と、高い賃金を求めて海外を目指す若者が増えるベトナム。利害が一致する二つの国の間ではここ数年、人の往来が急増している。その中心はベトナムから日本に渡る技能実習生たちだ。一方、急速な経済発展でベトナムには富裕層も現れてきた。都市部で暮らす裕福な若者にとって、日本はもはや出稼ぎの場ではない。日本とつながりを持つベトナム人の多様化は、日越関係の変化を映し出す。
拡大する街角に立てられた技能実習生を募集する看板。「ブローカーは通しません」「国の規定に従った手数料のみ」などと書かれ、飲食や介護、建設などが募集職種になっている=2020年6月13日、ベトナム中部クアンビン省、宋光祐撮影
ベトナム北部バクザン省出身の30代のズンさんは、2年前から関東地方の産業廃棄物処理会社で働いている。しかし、在留資格はない。2016年2月に外国人技能実習生として来日したが、実習先の会社から失踪したからだ。
ベトナムの故郷はライチの産地として知られる。しかし都市部から離れた農村では、十分な現金収入を得るのが難しかった。少しでも暮らしを良くしたいと日本に来た。手続きを請け負うベトナムの人材派遣会社に手数料などとして支払った135万円の一部は借金でまかなった。
実習先は四国地方にある造船工事の下請け会社で、溶接が仕事だった。給料は手取りで毎月約10万円。借金は1年半で返済した。しかし、給料の遅配や社長による暴力が続いた。技能実習制度では原則として転職は認められておらず、実習先から失踪すれば在留資格は取り消される。それを分かっていても、期限の3年まであと半年を残して姿を消した。「何も学ぶことができず、中小企業の労働力として搾取されただけだった」
法務省によると、ベトナム人の不法残留者は昨年7月時点で約1万3千人。同年に韓国人を上回り、最多になった。14年から約9倍に増えており、元実習生はその半数超を占める。
失踪者の増加に合わせて、フェイスブック上にできた在日ベトナム人のコミュニティーには、失踪者向けの就職先のあっせんや偽造した在留カードの販売をうたう投稿が並ぶようになった。
ズンさんも在日ベトナム人のつ…
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