感染で「始末書」、原則在宅で異動の可能性も…コロナ発症した男性の3カ月 続く“見えない差別”
新型コロナウイルス感染症が再拡大する中、今年3月からの「第1期」に感染し、回復した人の中でも不安が広がっている。頭痛や倦怠感などの後遺症に苦しむだけでなく、後遺症がなくても再感染の不安や、明確な「差別」とまではいかないまでも、職場での微妙な扱いや雰囲気に悩む人が少なくない。
4月に新型コロナウイルスの感染が判明し、入院した40代男性も、その一人だ。「幸い体はもう元気です。でも…もう、どうやったって『コロナ前』には戻れないですよね…」と自嘲気味につぶやく。
男性が体に異変を感じたのは3月下旬。倦怠感と発熱があり、一度かかりつけ医を受診したが「風邪」と診断された。一度は熱が引いたものの再び発熱。嗅覚・味覚障害も現れ再度病院を受診したところ、PCR検査を受けることになった。高熱は一週間以上続き、口に食べ物を入れると吐き気がした。3日後に陽性確認が伝えられると同時に、民間の救急車で即日入院。その時には既に自力で歩く力もなくなっていた。ベッドの上で熱にうかされ、目を閉じると呼吸器を着けて搬送される重症患者の姿が浮かんだ。「このまま死ぬのかもしれない」。言い知れぬ恐怖が襲った。
◇マスクに消毒薬を必携、酒も飲めないのに…
昨年12月末に中国・武漢で新型肺炎患者が相次ぎ確認されたというニュースを知って以来、外出時にはマスクを欠かさず、消毒スプレーも持ち歩いていた。下戸で酒もめったに飲まず、夜の街どころか居酒屋すら行かない。「一度、近くにいた人が咳をしていたことがあって席を移ったことがありましたが、それでもお互いマスクをしていた。どこで感染したのか、全く心当たりがなかった」と頭を振る。
入院5日後にようやく熱が引き始め、食事が取れるようになった。心配していた家族や職場関係の人たちも全員陰性だったと聞いた。2回連続でPCR検査も陰性となり、4月下旬に退院。晴れて家に戻ったが、しばらくは階段を上るのにも息が上がった。
入院中には、同僚から職場の様子も聞かされた。座っていたデスクの物は、PCR検査が陽性と判明したその日のうちに全て大きなゴミ袋にまとめて入れられて消毒され、人気の無い倉庫に移された。退院から約1カ月後に初めて出社したが、初めての仕事は一人で倉庫に行き、ゴミ袋を開けて荷物を整理すること。さらに上司宛てに「このたびは多大なご迷惑をおかけして、申し訳ございません」と感染の経緯や職場への影響を詫びる始末書を書くよう言われ、文面は何度も書き直したという。
◇上司には“管理監督責任”が…「隠蔽があっても、全然不思議じゃない」
「上司らへは、感染者が出た場合は管理監督責任が問われる-という通達もあったようです。外出自粛期間中だったのもあるかもしれません。でも、そもそも、最初から疑いの目で見られ、入院直後でも『上に報告しないといけないから』と事情聴取の電話が毎日続いた。『大丈夫か?しんどかったら後にしようか?』とか気遣ってくれる言葉は一切なかった。ああ、やっぱりこの会社は社員個人より、組織が大切なんだな、って思いました」
第2波が広がる中、男性は感染した時の恐怖がよみがえり、外出はほとんどしていないという。時勢もあり、外勤が中心だった仕事はテレワーク中心になった。出社は週に1回。「会社に行くと同僚は『大変だったね』とか気遣ってくれますし、話もしてくれます。でも、上司はやっぱり『もう二度とうちの会社から出したくない』というか、腫れ物に触るような感じですね」と男性。退院から3カ月余り過ぎ、幸い目立った後遺症もないが、「まるで事件か不祥事を起こしたかのような扱い。ずっと監視されているような…。正直、もういい加減、普通にして欲しいな…と思います。でも、それを口にしていいのかどうかすら、分からない」。
20年近く続けてきた業務へは誇りもやりがいも感じていたが、異動の可能性も薄々感じているという。「上司からは、僕への意向確認とかは全くないんですけどね。でも、もう僕の世界は変わってしまった。そう考えると、なんだか正直に(発熱や感染を)申告した自分が、バカみたいにも思えるんです。こうなるのが怖くて隠蔽している人がいても、全然不思議じゃないんじゃないかって」
◇ ◇
日本では新型コロナウイルスへの感染を「本人の責任」と考える割合が欧米に比べ突出していた-という大阪大の調査が報じられたのは今年5月のこと。第2波で繰り返される「夜の街」発言も、ともすれば「感染者=夜の街で遊んだ人」との誤解を招きかねず、今も感染経路を巡って誹謗中傷が相次いでいます。でも、そもそもウイルスは目に見えず、ましてや感染しても無症状の人だって大勢います。感染者に罪の意識や、スティグマを作り出さないよう制度や心の持ちようを整えるのも、ウィズコロナの時代に最も必要な「備え」の一つなのではないでしょうか。
(まいどなニュース・広畑 千春)
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