【コラム】

チャイム楽曲のお話

2020年7月25日

スコットランド民謡と日本の時報チャイムの関係性

なぜスコットランド民謡は日本の時報チャイムとして受容されたのか

なぜスコットランド民謡がチャイム曲なのか?

 スコットランドの釣鐘草、埴生の宿、故郷の空、蛍の光・・・。明治~大正にかけて日本国内に紹介されたスコットランド民謡は、童謡や唱歌として学校教育の場で歌われるまでに人気を博し、現在では日本の曲とすら認識される節があるほどです。高度経済成長期以降は防災行政無線や学校のチャイムに使われることもあります。これは一体なぜなのでしょうか?その答えの一つは音楽理論で説明できそうです。

スコットランド民謡の音階=日本の音階

 その答えは、スコットランド民謡の音階と伝統的な日本の音階が同じであったために、新しくも懐かしい旋律として受け入れられたのではないかと考えています。

 スコットランド民謡の音階は、4度と7度の音程が存在しない音階(スケール)です。例えばハ長調の場合、CDEGA(ドレミソラ)のみが出てきます。また、日本の民謡や伝統的な童謡が4度と7度の音程が存在しない音階です。明治大正期の日本人にとっては、古来自分たちが親しんできた音階と同じスコットランド民謡が心に響いたのかもしれません。文明開化とともに紹介された音楽のとして、音階のルートで終止する西洋音楽の小気味よさも、好まれた要因と思われます。

 こうして日本人の心と共鳴したスコットランド民謡は童謡として、学校教育の唱歌として根差してきました。愛の鐘運動やその名残としての夕方のチャイムの中でスコットランド民謡が受け入れられたのは、学校教育の場において、誰もが幼少期の原初的体験として記憶する旋律だからだと考えています。幼少期の思い出を呼び起こすメロディーは、心を落ち着けつつ時間の合図を届けるという目的にピッタリと合致していたのでしょう。