挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
少女が旅立ったその後で 作者:燦々SUN

第3章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
95/141

更科梨沙(セリア・レーヴェン)視点 3-㉛

短いです。なので、水曜日辺りにもう1話更新したいと思います。


注:日中に読むことをお勧めします。

『じゃがな……本当に危険なのは、白くなった時じゃ』


 脳裏に、ガヌノフさんの忠告が蘇る。

 60年前の大規模攻略作戦において、100人以上の犠牲者を出したという詳細不明の危険地帯。

 それが今、目の前に広がっていた。


(落ち着けっ! そう、落ち着け……大丈夫)


 一瞬目を閉じ、強く息を吐き出してクールダウンすると、私は猛烈に脳を回転させ始めた。

 そう、いくら危険地帯に踏み込んでしまったからといって、パニックになってはいけない。大事なのは冷静でいること。冷静に、それでいて可能な限り迅速に状況を見極めなければならない。


(大丈夫、いざとなれば“空間接続”で戻ればいい……いや、すぐにでも戻るべきか)


 そう、普通の人なら後戻りが出来ない状況でも、私には出来るのだ。

 私が持つ固有神術(チート技)“空間接続”を使えば、ある程度のやり直し(セーブ&ロード)が可能だ。

 問題は、セーブ地点がパッと思い付かないところか。


(さっきの鍾乳洞は……いや、無理か。最後の崩落でかなり地形変わったし、元々地形が複雑過ぎるし……)


 いくら距離的に近くとも、接続先の光景が鮮明に思い描けなければ発動出来ないのがこの神術の難点だ。


(他に、最近通った場所で鮮明に覚えているところは……)


 そう考えて、思い出した。


 あの鋼鉄の扉で閉ざされた謁見の間。

 両側の壁に並ぶ穴と金貨の山。そして、通路の奥にある王冠と、その更に奥でうごめく謎の影……。

 数時間前に通ったばかりのその場所の光景は、良くも悪くも酷く印象に残っていた。


(距離の面でも、成功率の面でも、特に問題はない。でも……)


 問題は、あの奥にいた謎の影。

 ランをして、戦わずに逃げを選択すると言わしめた危険な存在。

 果たして、私の超級神術があれ(・・)を刺激しないと言えるだろうか? いや、刺激しないはずがない。あれが超級神術の気配を無視してくれるというのは、あまりにも楽観的過ぎる。

 最悪、接続先した途端逆に向こうから乗り込まれて、白い通路と謎の影との挟み撃ちになる可能性だってある。


(あそこに直接繋げるのはリスクが高い。扉の前なら……いや、でも周囲の地形までは覚えてないし……)


 どうする? どうするのが最適解だ?


「──ㇼァ、おい! リア!!」

「っ!!」


 強く肩を揺さぶられ、私は思考の渦から抜け出した。

 隣を見ると、真剣な表情を浮かべたランが、その右手にしっかりと戦槌を握りながら私を見ていた。


「考え事をするなら、先に防御結界を張ってくれないか? まだ通路に出てないとはいえ、ここでは何が起こるか分からん。無策で突っ込むのは愚の骨頂だが、無防備に考え事をするのも愚策だぞ」

「……ああ。そうだね、ごめん」


 そう言われて、私は自分のミスに気付いた。

 冷静に状況分析をするつもりが、分析に気を取られ過ぎて安全の確保をおろそかにするとは。本末転倒過ぎる。


(やっぱり、こういった瞬時の対応力ではランには敵わないな)


 反省しつつ、とりあえず聖属性最上級神術“聖護結界”を2人を包むように発動した……ところで、ふとランの言葉が脳裏に引っ掛かった。

 何が引っ掛かったのか考え、すぐに気付く。


(通路に、出る……そうだ。私達が通路に出たら、ここはどうなるんだろう?)


 さながら広めのエレベーターといった感じの周囲の様子を見ていれば、その疑問の答えは自然と導き出された。

 そう、当然私達が出たらこの部屋の扉は再び閉じられ、上の鍾乳洞へと戻って新たな侵入者を待ち構えるはずだ。

 なら……そこで“空間接続”を発動させればいいのでは?


 この場にまた目印となる貴金属類を置いておいて、この部屋が上に戻ったところで“空間接続”を使えばいい。

 それなら成功率も神力消費量も、そして安全度も申し分ない。


(よし、イケる)


 これがこの場の最適解だ。

 その確信と共に、足元に向けられていた視線を上げると、ランに作戦を伝えるべく口を開いた。


「ラン──」


 しかし、視線を上げたところで、視界の隅に何かが映った。


 正面に広がる白い通路。

 その天井付近の壁に、まるでシミのようにポツンと張り付く、黒い何か。


「っ!!」


 反射的に振り返ると、私は腰の剣に手を添えつつ一気に神力を高まらせた。隣で、ランも同じように臨戦態勢に入る気配がする。

 しかし、そのことを意識の片隅で認識しながらも、私の意識の大部分は視線の先でうごめく黒いナニかに向けられていた。


(あれは……何? 丸くて……もぞもぞと……まさか、蜘蛛?)


 しかし、そう思う私の視線の先で、突然黒い物体がぐにゃりと形を変えた。


(何!? 形が……軟体動物? 擬態、とか? いや、でもあれは……トカゲ?)


 4本の足に、ひょろりと長い尻尾。

 それは私が見る限りでは、確かにトカゲのように見えた。

 だが、そう思った瞬間またしても形を変える。その不自然な動きは、明らかに軟体動物とか擬態とかいう範疇を超えていたが……私は特にそんなことは気にしなかった。気にしている場合じゃなかった。そんなことより、あれの変化を見届ける方がずっと大事だ。それ以外のことはどうでもイイ。


(今度は……んん? イソギンチャク?)


 壁に張り付く胴体に、ゆらゆらと伸びる数十本の触手。

 うん、あれはどう見てもイソギンチャクだ。……アレ? 触手……ん?

 うん? イソギンチャクって海の生き物ジゃ……あレ? なんかおかしいよウな? なんか、ヤバ、あれヤバイヤバあれ見ちゃああでも観なくチャ。見ちゃ見なきゃ見て見て見て見見て見て見て見て見て見てて見て見て見て見て見て見て見て観て視て看てみ手見てミテ見て見て視て看て見てミテみて観て見テ見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見見てる見てる見てるみんな見てるミテルミテルミテル私ワタシをををおおおををお銀色人ヒトヒト見テるギン銀銀黒目黒い黒い黒い黒イ目が目が眼が目が芽が目が眼が眼が目が目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目メメメメメメメメメメめめめめめめめめめがががが見て見てミテ見て見てわたシミテみて観て見てて見テ見て黒い黒イ来て着て来て着て黒い黒いクロイ来て来て来て来来来来て来て来テ来てて来テ来て着て来て来テ来て着て来来てルキテル来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来てる来て


「あ──」

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。