GAFA公聴会 民意に影響看過できぬ
2020年8月4日 08時05分
米国議会が先月末、巨大IT企業のトップを対象に公聴会を開いた。健全な競争をゆがめているか否かの調査が目的だ。民主主義を脅かし始めているとの指摘もある中、国際的な規制強化が急務だ。
公聴会は米下院の反トラスト法(独占禁止法)に基づく小委員会が開いた。証言したのはGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の経営トップで、四社首脳が公聴会でそろったのは初めてだ。このため、巨大IT規制に比較的消極的だった米国内に、新たな動きが起き始めたとの見方もできる。
議員からは独禁法に抵触しかねない経営手法に批判が集まった。成長過程のライバル社を次々と買収して市場シェアを高めたり、事業参加者に優越的立場を利用した取引を押しつけたりしているのではないかといった指摘だ。
GAFAのうちグーグルを除く三社は、米国の国内総生産(GDP)が記録的なマイナスとなる中、コロナ禍に後押しされた形で高収益を確保。すでに十分すぎるほど成長しており独禁法を適用した規制導入は妥当といえるだろう。
市場独占に加え、今回問題となったのは民主主義社会への影響である。会員制交流サイト(SNS)を通じて誤った情報が拡散するケースは各国で激増している。誤情報が世論の形成や、議会での議論に悪影響を与えることは言うまでもない。
巨大IT企業は、集積した個人データを利用して好みを予測した広告で膨大な収益も上げている。これにより米国各地の新聞社やテレビ局の多くが広告収入の激減で経営が悪化するなど、権力をチェックすべき報道機関の体力が落ちる深刻な事態に陥っている。
IT企業の成長が社会の利便性と生活の質を高めている点は否定できない。だが市場をゆがめ民主主義社会にまで影響を及ぼしているのなら看過できない。
税納付への姿勢についても指摘する必要があるだろう。IT企業の納税意識は薄いといわざるを得ない。収益が各国にまたがり税制の網をかけにくいという面もある。
GAFAを中心とした巨大ITを制御するには国際的な連携が欠かせない。ドイツやフランスは積極的だが、公聴会を契機に米国が前向きな姿勢に転じれば制御力は劇的に強まるはずだ。独禁法を活用したIT規制では先駆的な日本も連携の輪に加わり大きな役割を果たすべきだ。
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