独特な都市文化を誇った香港の自由が急速に奪われている。中国政府の新法による締め付けの結果であり、露骨な自治権の侵害に強く抗議する。
香港では9月に立法会選挙が予定されていたが、香港政府は1年間延期すると発表した。新型コロナの感染防止を理由にしているが、それを真に受ける市民ばかりではない。
今の状態で選挙をすれば、中国の強権に抵抗する民主派が勢力を伸ばすのではないか。そう警戒した当局が当面の選挙を避けた、との見方も根強い。
香港では昨年来、デモ活動が続いていたが、香港政府の背後にいる中国政府は市民の声に耳を傾けるどころか、逆に言動を取り締まるための香港国家安全維持法(国安法)を一方的に制定した。
市民が反発するのは当然であり、それが民主派による先月の予備選挙にも表れた。当局の圧力にもかかわらず60万人超が投票に足を運んだのである。
香港政府がコロナ対策に知恵を絞り、選挙を予定通り実施しようと力を尽くした形跡はうかがえない。
それどころか選挙の公正さはすでに損なわれていた。民主派の候補者12人が、国安法に反対したなどの理由で立候補資格を取り消されていたからだ。
審査の基準は不透明で、資格取り消しは前回4年前の6人から倍増した。民主派のなかでも、穏健的とされる候補者にまで対象が広がっている。
こうした経緯を踏まえれば、体制に批判的な言動は一切許さないとする民主派つぶしの狙いは明らかだろう。
香港では国安法の施行後、独立を主張する旗を掲げただけでも逮捕されるケースがおきた。公立図書館では、民主活動家らの著書の閲覧が禁止された。言論を萎縮させる動きは急速に進んでいる。
さらに香港警察は、海外在住の民主活動家ら6人を国安法違反容疑で指名手配した。この法には、香港の外にいる香港人や外国人の行為にも適用されると解釈できる条項がある。
言論・報道、映画づくりのほか、経済、金融など様々な分野で、香港の開放的でダイナミックな文化は知られてきた。その土台にあったのは、中国と一線を画し、独立した司法の存在だった。その基盤が国安法により、蝕(むしば)まれようとしている。
日本を含む国際社会は、香港の自由剥奪(はくだつ)の動きを座視せず、外交的な手を尽くして中国にブレーキをかけさせるべきだ。
香港から逃れる人々の受け入れなど、香港の人権を守るための国際的な対応策を決め、早急に行動する必要がある。
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