- 残間
- もうタグボートが始まって14年ですが、
そういえば、最初に岡さんにお会いした時、
「もっといろんな人が僕たちに続くかと思ったら、
誰もついて来なかった」と言ってましたね。
企画のクオリティで勝負する
クリエイティブ・エージェンシーが、
欧米のようにたくさん出来て欲しいと。
- 岡
- (笑)誰も続いてくれなかったですね。
- 残間
- 世の中的には、
若い人が新しいことに続くのは、
どんどん難しくなってます。
- 岡
- 難しいでしょうね。
結局、先頭を行こうと思ったんだけど、
先人じゃなくて変人になっちゃった感じですね(笑)。
- 残間
- (笑)電通でも博報堂でも、
最近はクリエイティブの人が子会社の社長という形で
独立するパターンが増えています。
- 岡
- あれは、実は辞めてないんですよ。
100%電通や博報堂が出資してますし、
仕事の最低保証もしています。
その代わり、別の代理店と組むことはできない。
- 残間
- 4人で始まったタグボートも、
関連の会社も出来て、
ずいぶん大所帯になったみたいですね。
- 岡
- 今、グループで6社あって、80人います。
でも、グループそれぞれに社長がいますが、
基本的には「倒産しても知らないよ」
という条件で始めてもらってます。
- 残間
- 6社はどういう形でできていったんですか?
分社ですか?
- 岡
- いえ、そうじゃないんですよ。
インターネットが出てきたでしょ。
すると広告キャンペーンをする上で、
インターネットの専門家が必要になってきますが、
いちいち外部スタッフと連携を取るのが
面倒臭いんですね。時間のロスです。
打ち合わせ場所をどうしましょうとか。
- 残間
- この手のことは、
とにかく打ち合わせが多いですから。
- 岡
- ええ、近くにいてくれないと困ります。
だったらそういう専門家で
独立したいという人がいたら、
「うちの横でやらない?」と。
設立の費用も半分以上出してもいいよと。
その代わり、何の保証もしない。
仕事は自分で取ってきてくれと。
- 残間
- こちらからコンスタントに
頼むこともあるかもしれないが、
なくなるかもしれない。
- 岡
- ええ、それを覚悟してやってくれと。
今、インターネット関連だけで、
グループ会社が3社あります。
それから「TUGBOAT 2」「TUGBOAT 3」があって、
それから「ブリッジ」という
グラフィック専門の会社があります。
グラフィックというのは
「ここ、少し文字を大きくしてくれ」とか、
そういうやり取りが多くなるでしょ。
すると、すぐそばにいてくれる
専門の会社が必要になります。
でもそれぞれは別個に経営されているので、
僕は売り上げとかの数字は知りません。
- 残間
- ホールディング・カンパニーとして、
全体を把握するというわけじゃないんですね。
- 岡
- 違うんです。
僕は基本的には、
最初に始めた僕を含めた4人しか見てません。
グループ会社から何かを取ろうと思ったら、
きちんと見ないといけませんよね。
株主配当取ろうと思ったら。
でも、「配当なんていらないよ、
その代わり倒産しても知らないよ」
というスタンスですから。
- 残間
- 業種は違いますが、
経営が上手くいくようになると、
すぐチェーン展開とか、拡大したがるところが
多いですが、そこは違うんですね。
- 岡
- (笑)だって、そういうのが嫌だから
こっちに来たんです。
利益さえいらないと考えれば、気楽なものですよ。
- 残間
- 先ほど、会社設立メンバーの
4人しか見ていないと言いましたが、
14年経って、この4人の関係というのはいかがですか。
- 岡
- 僕ら4人は年齢も全然違っていて、
会社を始めた時には、
5年も保てばいいかなと思ってましたが、
やっぱり裏切ったわけでもないですが、
共通の電通への恐怖とかね‥‥‥。
- 残間
- (笑)
- 岡
- そういう思いから意外に団結しまして、
今やある意味、
家族的なまとまりを持っているんですよ。
こんなに長くチームでいられるとは、
思ってなかったですね。
- 残間
- 一度も揉めたことはなかったんですか。
- 岡
- 揉めることはないですね。
揉めてるヒマもないし、常に危機があるし。
- 残間
- 4人が寄り添って壁に立ち向かわざるを得なかったと。
- 岡
- (笑)そうそう。
だから穏やかでない日常な分だけ、
内部はまとまっていくわけで。
- 残間
- それは家族がまとまる時の状況と、
同じかもしれませんね。
- 岡
- そうかもしれない。
台風で停電となると、昔はロウソクを囲んで集まって、
あの時が一番家族が仲良かったかもしれない。
みんな僕の部下だった人間ですけど、
それは電通時代には味わえなかった感覚ですね。
- 残間
- 特に電通は大きい会社だし。
- 岡
- 要するに人事異動によって集められた部下だから。
でも僕らは辞表を出して不退転で独立した4人なので、
かけがいがないじゃないですか。
逆に言えば、
そこに新しい人間を増やせなくなりましたよ。
もう僕らとストーリーが違うから。
- 残間
- 岡さんの場合は40歳過ぎて、一定の年齢になってから
独立したせいもあると思うんですが、
4人というのは、なかなか絶妙だと思いました。
20代や30代で7~8人で始めた人たちって、
必ずと言っていいぐらい喧嘩別れしてるんですよね。
- 岡
- (笑)
- 残間
- 会社が上手く行き出すと、
「あいつの方が仕事をしていない」とか、
「こいつが中心になって営業やってるな」とか
8人もいると見えてくるんですって。
- 岡
- でしょうね。
- 残間
- そういう時にリーダーは、
まず仲間を切ることから始めないといけないそうです。
そこを通過しないと、会社はそれ以上大きくならない。
4人というのが、ちょうど良かったのかもしれませんね。
- 岡
- 1人切ると、もう3人になっちゃいますから。
それから良かったのは、
もともと仲の良かった仲間じゃなかったところですね。
年も全然違うし。
- 残間
- どれくらい違うんですか。
- 岡
- 僕が一番上で、次が6歳下で、もう一人がその1歳下で、
一番若いのは、そこからさらに9歳下です。
- 残間
- すると岡さんとは最大で16歳違い。
- 岡
- こうなると喧嘩にならないんですよ。
6つ下とだって喧嘩にならない。
- 残間
- 同期だったりすると、ちょっとね。
- 岡
- 同期は無理。年の差が良かったですね。
- 残間
- 上下関係は?
- 岡
- 厳しくありますよ。年功序列!(笑)
それからお金の面では、
4人の比率を5:4:4:3ということにして、
同じ比率で出資をし、利益を分配し、
経費も使うということに最初にしたんですよ。
5が僕で。
しかもこの比率に関しての議論は、
もう二度としないと決めた。
やっぱり、たいていお金で揉めるんですよ。
僕が5という比率は、創業者としては低いわけです。
一番上がさほど取ってなければ揉めないですよ。
これが10:5:5:3とかやるから揉める。
実はこれを「タグボート比率」
と呼んでるんですけど(笑)、
ちょうどいいバランスなんです。
- 残間
- 黄金比なのね。
- 岡
- そう。だから僕の5と
一番若い奴の3を足すと8になります。
4と4を足すと8だから、役員会をやっても、
これで引き分けに持ち込めます。
それで僕が4のどちらかと組んだ時だけ
動議が通るわけで、絶妙にできてるんですよ。
- 残間
- それはあらかじめ考えてたんですか?
- 岡
- いや、適当(笑)。
でもお金のルールは決めないといけないから、
出資の比率でやってます。
(つづく)