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そろそろ考える、引退後のこと

残間
最近、岡さんのエッセイ(『アイデアの直前』河出書房新社)を
読んでいると、在籍している
シニアのアメフトチームをいつ引退したらいいかとか、
実はデジタル・アレルギーだとか、
老いのカミングアウトみたいなことを書いてますね。
岡さんはそんなものからは超然としていて、
ずっと飄々とクリエーターとして
やっていくのかと思っていたので、意外でした。
 
いや、そこはイジイジと考えてますよ。
 
残間
いつぐらいから考えてるんですか?
 
50歳過ぎたぐらいからですね。
僕らはこれまで、ずっとすぐ上の団塊世代を見て
育ってきたんですが(岡さんは1956年生まれ)、
自分が50ぐらいから、ぼちぼちと団塊世代の引退が
始まっていったんですね。
ところが、それが、どうもあまりカッコ良くない。
先輩たちは、
本人に年を取っている自覚があまりないようで。

もう未練タラタラなんです。
まだまだ出来るという感じで。
定年後に独立して会社を起こしたといっても、
上手くいってる人をあまり知らないし。
結局奥さんのやってる
ネイルショップを手伝ってたり。(笑)
田舎でペンションやっても、3年で帰ってくるとか。
何かやるんだけど、結局くじけちゃう。
「何だよもう」という感じですよね。
僕はもうちょっと上手く年を取っていきたいです。
 
残間
やはり、50代のうちに
自分の次のライフステージを意識した人は
上手くいってるようです。
サラリーマンだと、55歳ぐらいで
自分は執行役員にはならないなって、わかるでしょ?
 
わかりますね。
あの、これ、知り合いのサラリーマンには聞けないんで、
残間さんに聞きたいんですけど、
結局サラリーマンって、専務でも副社長でも、
社長になれなかった人はみんな負けですよね。
じゃあ、社長ってどうなんですか?
 
残間
社長は会長になった瞬間に
ガクッと落ち込むみたいですよ。
経営の実権は社長に移るわけですし。
 
へえー、そうなんですか。社長も負け。
 
残間
それでハタと気がつくんですね。
自分が年を取っていることに。
それからリタイアメントライフに、
相当遅れを取っていることにも。
 
(笑)ずっと現役でしたからね。
 
残間
むしろ部長どまりで、
早くから次のライフステージを考えられた人の方が
幸せかもしれません。
趣味の陶芸も、10年もやれば
人に見せられるレベルになりますからね。
定年後に大学院に進む人はいるでしょうけど、
70近くなってそれをやる人はいないでしょう。
 
なるほどねえ。
僕も残間さんもフリーランスですけど、
サラリーマンの方がきついかもしれませんね。

僕は、大人がカッコ良く年を取って欲しいんですよね。
残間さんが、ウィルビーを作ったのも、
そのためでしょ?
 
残間
そうですね。
世の中の行く末を考えると、
国はあてにならないし、子どもにも頼れない。
自分たちで身を処していかないといけません。
岡さんは、何かこうなればいいなあって思う
イメージありますか?
 
僕は40代、50代のシニアのアメフトチームに
入っているんですけど、
どこかの山の斜面か何かに、みんなで家を建てて、
固まって住んだら楽しいだろうなって
話をしたことがあります。
一緒にゴルフをやったり、いろんな事をして遊んで。
メンバーは全部で50人くらいいますし、
これは面白いと思ったんですが、
「女房はどうするんだ?」という話になりまして、
行き詰まりました(笑)。
 
残間
都会にも家を残しておいて、
二カ所拠点を作ればいいんですよ。
 
そうか、彼女たちには、
彼女たちの世界があるんですよね。
セカンドハウスでもサードハウスでもいいんですが、
みんなで暮らすのって、楽しそうです。
よく子どもに友人は大切って言いますけど、
本当に友だちが大切になるのは、60代からなんですよね。
 
残間
特に男性は友だちがいない人が多いんですよね。
いずれにせよ、
私たち団塊世代にはご不満なようですので(笑)、
ぜひとも新しい“老い方”を
実践していただければと思います。
それから仕事の方では、
新しい大人像をCMで表現して欲しいですね。
 
やりたいんですけどね。
なかなか、そういう依頼がないんです。
 
残間
今日はいろいろと楽しいお話、
ありがとうございました。
 
こちらこそ、ありがとうございました。
 
(終り/2013年2月)