『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』/amazonより引用

武者震之助の歴史映画 中国

渋カッコいい武士が倭寇で大活躍!映画『戦神ゴッド・オブ・ウォー』が痺れる!

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映画『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』
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    明朝、倭寇、そして世界が抱える問題もわかる

    倉田さんとサモ・ハン、そしてこれまたアクションスターとして名高い趙文卓!

    これはキャストの時点で勝利だろう――。

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    カンフー映画マニア必見だけでなく、本作は世界史の教材としてバッチリ使えるのがいい。なかなかそんな作品はありません。

    当時の明が直面していた内政問題。

    倭寇を招く世界史的な要因が、きっちりと説明されます。

    明の問題とは?

    サモ・ハンが演じる俞大猷は、些細なことで逮捕されてしまいます。

    彼は中国武術史において欠かせぬ人物で「南拳」と称される拳法の確立に功績のある人物です。

    それなのに、なぜ逮捕され、屈辱的な目にあわされるのか?

    嘉靖帝の時代、明朝は政治腐敗が極まっていたことが背景にあります。

    嘉靖帝は現実逃避しがちな性格で、そういう皇帝をコントロールする奸臣が権力を握ってしまう。

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    そんな立ち回りができない武人は、苦しめられるばかり。

    ドロドロした権力闘争の合間に、倭寇は勢いを増してゆく。一体どうすればいよいのか?

    本作の武人が暗い顔である背景には、理由がありました。

    そもそも倭寇にしたって、前述の通り明の人物もいるわけです。海禁政策を見直さない限り、根本的な問題は解決できません。

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    そういう問題提起が、きっちりと出てきます。

    倭寇の主目的が略奪ではなく、あくまで貿易というところもクローズアップされております。

    大航海時代以来、銀が世界的に流出し、明にも貧富の差が生じてゆきます。

    そういう民が求める経済政策が整わぬために、エネルギーが噴出していると描いているのです。

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    倭寇の中の武士だって、そんな世界的なパワーゲームに巻き込まれ、乱世を生き抜くために明まで来ている。

    そういうダイナミックな流れがコンパクトにまとめられていて、とてもレベルが高いのです。

    鉱山が発見された村と、その隣接する村において、住民同士が争う様も描かれます。

    資源をめぐる争いは、同時代の日本でもしばしばあったことでした。

    本作と同時期に放送された『真田丸』や『おんな城主 直虎』では、木材ような資源をめぐる民同士の争いが描かれていました。

    あれは当時の日本のみならず、他国でも噴出しつつある問題であったのです。

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    そういう歴史の流れがわかるからこそ、本作は世界史教材として極めて優れています。

    そうはいっても、所詮外国人から見た日本像だと思っておりますか?

    いえいえ、本作には日本からも多くのキャストとスタッフが揃っています。

    衣装、セリフ、仕草、時代考証、そして日本の武術もバッチリ!

    日本人だからといって「残酷だ」決めつけるようなことはありません。

    小出恵介さんが演じる武士の「山川の若殿」は、略奪や暴行は武士の道に反すると嫌がっています。

    一方で、追い詰められて倭寇になった者もいる。セリフや衣装、所作まで階層差が表現されていて見応えありなのです。

    倉田さんが若い頃の香港や台湾映画では、日本人は忍者なのに新選組の羽織を着ていたり、タクシーで轢殺しないと蘇る不死身設定といった、無茶苦茶な扱いもあったものですが……思えばここまで進歩したのかとしみじみと思えます。

     

    日明関係を描くという意味において、本作は本当にレベルが高いのです。

    歴史映画を楽しむ喜びって、本作のような作品を見つけて見た時にこそ、心の底から湧き上がってくると思えるんですよね。

     

    将たるもの、軍師たるもの

    『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』は、アクションスターが揃っているため、無双乱舞しながら戦うようなイメージを抱く方もいるかもしれません。タイトルからしてそういうイメージはあります。

    しかし、本作はそうではありません。

    リアリズムを重視した作りで、当時の将たるものの心構えや像を示してゆきます。

    サモ・ハン演じる俞大猷は、勇敢で人格高潔ながら、同じ時間帯に攻めてくるというワンパターンさを見せる将として描かれています。

    倭寇は「また定刻通り来たぞ」と簡単に迎撃してしまいます。

    そんな相手を見て、兵法を引きつつ、簡単に勝てると笑うのが熊澤なのです。

    サモ・ハンvs倉田さん!

    となれば、殴り合うところを見たくはなりますが、そうはいかない。両者ともにアクションはせず、演技力、知識、人格によって、将としての力量が示されます。

    そんな俞大猷の後任者として、戚継光が赴任してくると、熊澤が相手から名将の器を察知します。

    明軍は変わった。どうやら戚継光は何かが違うようだ。

    互いに知将がいることを察知して、探り合う。

    そんな攻防が熱いのです。

    熊澤は、リアルな戦国武士であり、軍師像として描かれています。

    個人的武勇は当然あるものの、それだけではなく、兵法を引用し、地の利や敵の動きを見て兵を動かす様がきっちりと描かれる。

    理知的で賢い軍師像で、倉田さんが演じる黒田官兵衛あたりを見たくなってたまらないものがありました。

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    一方の戚継光は、カリスマがあるとか、パワフルであるとか。そういうタイプと違い、理詰めエンジニアタイプです。

    倭寇の武器を入手し、防ぐ手立てを考える。新兵器を開発してワクワクしている。名将というより、発明家のようなところを見せてくるのです。

    押し付けがましく引っ張るというよりも、きっちりと戦術を組み立てて勝利を目指す。そんな将としての姿が見えます。

    しかし、そこが彼の凄いところであり、強みなのです。

    根性論でもない、理知的でクールなイノベーションを用いて、彼は明軍を生まれ変わらせたのです。

    この描き方は、むしろ史実に即したものと言えます。

    彼は『武備志』というイラスト豊富な実践戦闘術書に残されています。本作のワクワク兵器は、それをもとに再現したのでしょう。

    諸葛亮の「木牛流馬」のようなイノベーションを備えた、たいした名将なのです。
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