新聞は報じない…日銀副総裁が語った「コロナ後の日本経済」に起きるスゴいこと

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」
歳川 隆雄 プロフィール

消費活動が4月に底入れしたことを示唆

では、雨宮講演は報道に値しない内容だったのか。政治を主たるテーマとしてきた筆者は金融政策や金融経済情勢分析について門外漢である。それにしても、講演中、しっかりとメモを取ったということは記録に残す必要があると判断したからである。

黒田総裁は記者会見で「新型コロナの影響を注視し、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」と述べた(「日経」掲載会見要旨から)。それは、会見当日に日銀がホームページに「経済・物価情勢の展望(2020年7月)」と題したレポート(A4版48枚)をアップしているが、同レポート7頁に<当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短期金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。>と記述されているので、当然のことだが、そのままの発言だった。

日本銀行「経済・物価情勢の展望(2020年7月)」より
 

ここで指摘したいのが、雨宮講演なのだ。配布された資料(図表5)にある「日本銀行の経済・物価見通し」を見ると、実質GDPと消費者物価指数の2020年度(4月見通し)、21年度(同)、22年度(同)の数値が記載されている。実質GDP:20年度-4.7、21年度+3.3、22年度+1.5、消費者物価指数:20年度-0.5、21年度+0.3、22年度+0.7――とある。

コロナ禍は個人消費にリーマン・ショック時以上のダメージを与えたが、このGDP成長率数値は消費活動が4月に底入れしたことを示唆している。消費活動指数は3~4月に急落したが、5月に反転している。雨宮氏も講演で<コロナ第2波という不確実性があるが、と断りながら成長率の好転と指数の上昇率が高くなる。>と言明した。