メーカーは巨額の費用損失? コロナワクチン開発の高い壁
「ワクチンの実用化には有効性もさることながら、最も重要なのが安全性です。体内で免疫学的に起こる『副反応』が問題です。有効性があるということは、それだけ体内の組織に影響を及ぼしているということです。治験人数が少ない臨床段階では出てこなかった有害事象が、最終の第Ⅲ相試験の数千人、数万人規模の投与で問題が起きれば開発は中止されます」
研究開発費は第Ⅲ相臨床試験で約半分が費やされるといわれるが、第Ⅰ相、第Ⅱ相をクリアしながら第Ⅲ相の臨床試験で問題が起き、開発中止となったプロジェクトは少なくないのだ。その結果、新薬メーカーは巨額の費用損失となる。オックスフォード大チームの場合、患者に疲労感、頭痛といった副反応が認められたという。
「ここまでは織り込み済みでしょう。そこから先の臨床試験が成功のカギとなります。さらに重い症状が出れば遺伝子として後世に残ってしまうこともある。安全性の確認には十分な時間が必要です」(前出の篠原氏)