【ワシントン=河浪武史】米連邦政府が新型コロナウイルス対策として発動した失業給付の特例が7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額する見通しとなった。2500万人を対象に週600ドル(約6万4000円)を支給しており、米議会が延長法案を用意しているが、与野党の対立で同日までの成立は困難になった。
ムニューシン財務長官らホワイトハウス側と野党・民主党のペロシ下院議長らが31日まで断続的に協議したが、合意に至っていない。米政権と議会指導部は1日以降も協議を続けて特例制度の延長を探るが、関連法が成立するまで失業給付は州の支給分(平均370ドル)だけになる。失職者は特例加算が決まった3月末以降、平均で週1000ドル近くを受け取っており、大幅な収入減が避けられない。
共和党は7月27日、失業給付の特例加算を延長するものの、支給額は週200ドルに減らす新法案を上院に提出した。民主党は5月に下院で週600ドルのまま2021年1月まで制度を延長する独自の法案を可決済みで、失業給付の特例を維持するには両党の統一法案を上下両院で可決する必要があった。
米経済は4~6月期の国内総生産(GDP)が前期比9.5%減、年率に換算すれば32.9%減という大幅なマイナス成長に陥った。7~9月はプラス成長が見込めるが、個人消費を下支えする失業給付が大幅に減れば、景気の回復力が鈍りかねない。
ホワイトハウスは30日夜、民主党の議会指導部に対し、週600ドルの特例加算を4カ月だけ延長する折衷案を提示した。ただ、民主党は3兆ドル規模の包括法案を主張しており、合意には至らなかった。共和党の財政保守派も週600ドルという特例措置に「給与水準を上回る大幅な加算だ」と批判しており、延長そのものに反対する議員が少なくない。
ホワイトハウスのメドウズ大統領首席補佐官は31日、記者会見で「民主党はこの3日間、何の提案もしてこない」と強く指弾した。民主党のペロシ下院議長も「10週間も前に包括法案を出したのに、議論を放棄していたのは共和党だ」と反論。メドウズ氏は週末を返上して1日以降も合意案を探ると表明したが、与野党が早期に歩み寄る兆しはない。
米議会は7日まで審議を予定するが、その後は夏季休暇に入る。休暇そのものを返上して新型コロナの追加対策の協議を続ける可能性はあるが、両党が決裂したまま休会し、雇用対策が宙に浮いたまま9月を迎えるリスクもある。