初飛行する先進技術実証機「X-2」(22日午前、愛知県営名古屋空港)=写真 今井拓也
レーダーに探知されにくい「ステルス」性能を持つ国産航空機「X-2」が22日、初飛行した。日本の高度な技術を集める先進技術実証機として約400億円の開発費を投じた大型プロジェクトで、三菱重工業など約220社が参加した。ステルス機の有人飛行は米国、ロシア、中国に続き4カ国目で、その実力は今後の試験飛行などで明らかになりそうだ。技術の民間分野への波及も期待されている。
国産ステルス機2月離陸 独創究めた「消える機体」(2月14日)
■日本の技術を結集
防衛装備庁から設計・製造を受託した三菱重工を筆頭に、開発計画には約220社が参画した。主翼と尾翼は富士重工業、コックピット周りは川崎重工業、制御機器はナブテスコ、エンジンはIHIが担当している。
国産ステルス機2月離陸 独創究めた「消える機体」(2月14日)
国産ステルス機、2月初飛行で商機 技術に欧米も一目(2月1日)■なぜ「見えない」か
レーダーは電波を対象物に照射、反射して戻ってきた波から相手の位置や距離を探知する。ステルス機は電波を吸収したり、反射する方向をそらしたりして身を隠す。
電波を吸収するセラミックや炭化ケイ素系の複合材料で機体を覆っている。材料を開発したのは宇部興産。電波吸収材は世界でも日本メーカーしか手がけられないという。
国産ステルス機2月離陸 独創究めた「消える機体」(2月14日)■運動性も超一流?
運動性能も高く、従来の機体ではできなかったアクロバットのような飛び方もできるという。
秘密は左右のエンジン噴射口に備えたアヒルの水かきのような形の「推力偏向パドル」にある。計6枚のパドルを上下左右に動かし、噴射角度を変えることで、急上昇や急降下、急旋回を自在にこなせるという。
国産ステルス機2月離陸 独創究めた「消える機体」(2月14日)エンジンはIHIが担当。燃焼温度を高めて大きな推力を引き出すため、部品には耐熱性が高く軽量の特殊セラミックや合金など最新の複合材料を採用した。
防衛装備庁、ステルス実証機を公開 2月中旬にも初飛行(1月28日)■「F2」戦闘機の後継機開発の下地に
防衛装備庁が2017年度までステルス能力や飛行性能、操縦系統のデータを取得して技術を検証する。
国産ステルス機が初飛行 愛知―岐阜、25分で到着(4月22日)この結果を踏まえ、28年度ごろに退役する航空自衛隊の戦闘機「F2」の後継機開発をどうするか決める段取りだ。
米国と共同開発し、日本で生産している戦闘機「F2」。28年度ごろに退役時期を迎える見通しだ
防衛省などは2018年度までに日本で開発するか、各国の技術を持ち寄った国際共同開発にするかを選択する。数十兆円と莫大なコストがかかるステルス機は国際共同開発が主流。ステルス機を手掛ける米軍需大手ロッキード・マーチンは「共同開発の選択肢があれば耳を傾ける」(日本法人のチャック・ジョーンズ社長)という。
国産ステルス機、2月初飛行で商機 技術に欧米も一目(2月1日)たとえ国際共同開発になるとしても、技術を磨いておけば日本側の交渉力が強まり、企業の商機も見えてくる――。X-2の開発の裏には、そんな計算もありそうだ。
■新技術、生活に役立つ日も?
技術力は民間転用でビジネスにもつながる。日米が共同開発したF2戦闘機からは、レーダーが自動車の衝突防止装置や高速道路の自動料金収受システムに、機体の炭素繊維複合材はボーイング787に応用された。
日の丸戦闘機、復活の野心(2014年9月19日)X-2開発で磨かれた技術は、いつ、どんな形で我々の目の前に現れるのだろうか。