新型コロナの1日あたりの感染者が東京都で400人を超し、全国では3日続けて1千人を超えた。九州や東北などでは豪雨被害も相次いだ。国民の不安に応え、命と暮らしをどう守るのか。安倍首相は速やかに臨時国会を開き、率先して国民への説明責任を果たすべきだ。
立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党などが、憲法53条に基づき、臨時国会の召集を内閣に要求した。衆参いずれかで総議員の4分の1以上の求めがあれば、内閣は召集を決めなければならない。少数派の発言権を保障し、国会と内閣のバランスを保とうという、この規定の趣旨に従い、首相は野党の要求に応じる必要がある。
ましてや、今はコロナ禍のさなかである。感染の拡大防止と経済活動の両立という難題に、与野党の枠を超えて知恵を絞る時だ。試行錯誤は避けられまい。それでも、誤りに気づけば、迅速に軌道修正をし、国民に丁寧に説明する。国会はそのための重要な舞台といえる。
しかし、安倍政権は6月、会期延長を拒んで通常国会を閉じた。その後、毎週1回、衆参両院で閉会中審査に応じているが、散発的な限られた時間では議論は深まらない。何より「閉会中でも求められれば説明責任を果たしていく」と述べた首相が答弁に立たない。これでは首相隠し、首相の責任逃れと見られても仕方あるまい。
そして、この間、国民が見せられたのは、何ともちぐはぐな政府の対応だった。感染再拡大の兆しが明らかだったにもかかわらず、東京を除いただけで観光支援策「Go To トラベル」を半ば強行する。マスクの品薄が解消されたにもかかわらず、税金の使い道として批判のあった布マスクの配布を続けようとする。国会による厳しい行政監視が不可欠なゆえんだ。
風俗営業法に基づき、夜間の繁華街での感染防止に警察の協力を求めるなど、コロナ対応の特別措置法以外のさまざまな法律を使う動きもでている。想定外の運用であり、どうしても必要なら、特措法を改正して対応するのが筋だろう。ただ、その前提は、国会における開かれた議論でなければならない。
安倍政権は3年前、今回と同様の要求を3カ月以上たなざらしにした。ようやく召集された臨時国会は冒頭で衆院が解散されたため、審議は一切行われなかった。那覇地裁は6月、この時の対応が違憲かどうかの判断には踏み込まなかったが、内閣には合理的期間内に召集する法的義務があり、裁量の幅は「限定的」だとした。重い指摘である。首相が再び無視を決め込むことは許されない。
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