米、雇用回復に急ブレーキ 失業保険の申請が再び増加

新型コロナ
経済
北米
2020/7/31 4:33 (2020/7/31 4:40更新)

米国で失業保険の申請件数が再び増えている
(閉鎖するイリノイ州の店舗)=AP

米国で失業保険の申請件数が再び増えている
(閉鎖するイリノイ州の店舗)=AP

【ワシントン=河浪武史】新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、米雇用に「二番底」の懸念が浮かんできた。米労働省が30日発表した新規の失業保険申請数は2週連続で増え、総受給者数も約2カ月ぶりに増加に転じた。米議会は雇用対策の延長の是非を巡って紛糾しており、政策リスクも重荷となる。

25日までの1週間の失業保険申請数は143万4千件となり、前週から1万2千件増加した。申請数は3月末に週600万件と大きく膨れ上がり、その後は4カ月にわたって減少してきた。増加は2週間連続で雇用の持ち直しに急ブレーキがかかっている。

18日までの週の総受給者数も1701万8千人となり、前週から86万7千人増えた。5月上旬の2491万人をピークに緩やかに減少してきたが、再び悪化に転じた。失業率は4月の14.7%をピークに11%台まで低下しているものの、このまま高止まりする懸念がある。

雇用の持ち直しにブレーキがかかったのは、新型コロナの感染拡大が止まらず、経済活動が再び制限されつつあるからだ。南部テキサス州や西部カリフォルニア州などでは、一時は前年比4割減まで持ち直していた飲食店の客足が、再び6~7割減に逆戻りした。

公的支援が途切れる「財政の崖」も大きな懸念材料だ。米議会は、7月末で期限が切れる失業給付の特例加算を延長する方向だが、加算額の規模を巡って与野党が対立。延長法案が成立しないまま期限が切れて、一時的に特例はゼロになるリスクが強まっている。

これまでの加算額は週600ドルと大きく、失業者の収入が急減して家賃の支払いなどが難しくなる懸念もある。延長法案の成立が8月にずれ込んでも、過去に遡って失業給付を追加支給できるものの、一時的でも収入の急減は打撃だ。共和党はそもそも加算額を週200ドルに減らすよう主張しており、延長後も支給減は避けられない。

約40万人の従業員がいる航空会社の雇用維持策(250億ドル)も9月末で期限が切れる。米議会は公的支援の延長を断念する方向で、大手各社は10月以降、6万人超の人員をカットする可能性があると表明している。

米連邦政府の財政赤字は年4兆ドルに達する見込みで、国内総生産(GDP)比でみれば第2次世界大戦時並みの水準に悪化しそうだ。週600ドルを加算する失業給付の特例制度も、支給総額は月600億ドルと試算され、財政負担は極めて重い。新型コロナと雇用悪化という2つの危機は「短期決戦」で封じ込める必要がある。

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