【香港=木原雄士】香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は31日、9月6日投票の立法会(議会)選挙を1年延期すると発表した。新型コロナウイルスの流行で「公平な選挙実施が難しい」と述べた。民主派は香港国家安全維持法の施行で苦戦が予想される親中派に配慮した政治的な決定だと反発している。
立法会条例によると、大きな災害などがあれば行政長官は投票日を最長2週間延ばせる。今回は行政長官の権限であらゆる規則を適用できる超法規的な「緊急状況規則条例」を使い、新たな投票日は2021年9月5日とする。
香港基本法は立法会の任期を4年と定める。選挙延期で空白が生じるため、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会に法解釈を求める。
事実上、中国からお墨付きを得て、司法判断で延期が覆らないようにする狙いがある。空白解消のため、現職の任期を1年延ばす案が出ている。
香港は新型コロナの抑えこみに成功していたが、7月に入って市中感染が広がった。直近1週間の新規感染者は約900人に上った。親中派は、香港永住権を持つ中国本土在住者や高齢者が投票しにくくなるとして延期を強く求めていた。
民主派は今回の選挙で議席の過半数を目標に掲げた。候補者絞り込みのために実施した予備選には想定を大きく上回る60万人以上が投票し、勢いを示した。ただ、選挙管理当局が民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏ら12人の立候補資格を取り消すなど締め付けが強まっていた。