航空会社決算 新たな展望が必要だ

2020年7月31日 08時09分
 ANAホールディングスが決算で巨額赤字を出した。日本航空も大幅赤字は確実で、航空大手二社は未曽有の危機に直面している。再生のためには、変化に対応した新たな展望を探る必要がある。
 ANAが発表した二〇二〇年四〜六月期連結決算は純損失が一千億円超と四半期ベースで過去最大となった。近く発表予定の日航の決算も赤字幅が拡大する見通し。
 コロナ禍で国際線を中心に旅客数が九割以上激減したことが赤字の主因だ。当面、客数が回復する見込みは薄く、経営状態が一層深刻化する可能性は低いとはいえないだろう。
 日航は過去何度も経営危機に見舞われ公的資金投入により再生した。コロナ禍前には、ようやく二社による競争体制が構築されていた。ともに経営課題はあったものの、今回の業績悪化は不可抗力ではある。
 二社は現在、金融機関からの支援を軸に懸命な資金繰りを続けている。もちろん貨物への注力などの営業努力やさまざまな経費節減策も実施している。国内線では需要の下げ止まり気配も出ている。
 ただ国際線でこのままの状態が続けば、事業継続のための資金が不足する恐れは否定できない。機体の購入費や維持費など、固定費の負担が重いという航空会社特有の事情も足かせとなるだろう。
 経営状況の悪化に伴い、二社の統合が検討課題に上る流れは容易に想像できる。ただ統合には異論を唱えざるを得ない。大手一社の独占体制は確実にサービス低下につながるためだ。安全で快適な空の交通サービスを続けるためには、国際的にも評価の高い二社が健全な形で競い合うことが必要だ。
 資金調達や経費節減に限界がきた場合、公的資金投入も視野に入るはずだ。格安航空会社(LCC)を含め、自国の航空会社は仕事でも観光でも必要不可欠な存在だ。万策尽きた際の公的支援に反対する理由はない。
 ただ苦境に立つ企業は中小を中心に各業界に広がっている。税金を投入して支援するためには、国民が納得する理由説明が必要不可欠だ。
 コロナ禍の終息後、空も陸も交通インフラ事業をめぐる状況は劇的に変わるはずだ。航空会社もそれに合わせて新たなビジネスモデルを探らねばならない。
 もちろん再生の中で安全が最優先であることだけは指摘するまでもない。

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