与論コロナ集団感染1週間 「戦々恐々」島の施設ギリギリの運営 子ども、高齢者をどう守る

(2020/07/30 12:30)
ビニールカーテンなどでレッドゾーン(奥)が仕切られた施設=28日、与論町茶花の特別養護老人ホームヨロン園(同園提供)
ビニールカーテンなどでレッドゾーン(奥)が仕切られた施設=28日、与論町茶花の特別養護老人ホームヨロン園(同園提供)
 与論町で新型コロナウイルスの集団感染が発生して1週間。感染者は29日で44人に上り、感染拡大の収束は見通せない。接触者も増え続け、休園を余儀なくされる保育園があるほか、厳戒態勢を敷く高齢者施設は出勤できない職員もおり、運営が逼迫(ひっぱく)しつつある。

■特養 人員確保、サービス維持に不安
 与論徳洲会病院の看護師の感染が確認された日、町内唯一の特別養護老人ホーム「ヨロン園」=茶花=の緊張は一気に高まった。入居者は62~102歳の54人。この中に、感染の可能性が指摘される2週間前までさかのぼると、同病院を退院した人が4人いたからだ。

 施設は早急に4人を施設の最奥にある個室に移し、廊下の天井にビニールカーテンを設置して「レッドゾーン」に指定。他の入居者らとの接触を避けた。防護服やフェースシールドを着用した看護師3人だけが対応するよう細心の注意を払う。

 4人のうち2人が濃厚接触者とされ、PCR検査で2人とも陰性が確認された。だが、経過観察のため8月4日までは現態勢を継続する予定だ。

 島内では濃厚接触者の増加も止まらない。勤務する看護師4人、介護士17人の中には、親族がPCR検査を受けることになり、結果が判明するまで出勤できないケースも発生。残りの職員に業務が集中し、休日出勤や連日の残業を余儀なくされている。

 同園の池田靖典施設長は「人口5千人の小さな島で感染拡大が続くと、職員がいつ濃厚接触者になってもおかしくない」と懸念。仮に施設で感染者が発生した場合、入居者の命に関わるだけでなく「サービス維持のために職員を確保できるかどうか」と不安は強まるばかりだ。

■こども園 通常再開見通せず
 与論町にある全4園の認定こども園は、25日から休園となった。4園には計222人が登録しており、そのうちの1園は、28日から医療従事者らに対象を絞り一部開園した。ただ、通常再開はどの園も見通せていない。

 一部開園したのは、園児115人が在籍する町唯一の私立園「ハレルヤこども園」。医療従事者、介護施設職員、役場職員のうち、PCR検査対象者のいない家庭に限り、受け入れを決めた。29日には7人が登園した。

 運営するハレルヤ福祉会の徳永哲秀理事長(66)は「島の医療福祉を守るため再開した。喜んでもらっているが、子と向き合う職員は防護服などの重装備はできず戦々恐々としている。かなり緊迫した状況」と説明した。

 9カ月の長男を預けるパート女性(28)は休園以後、仕事を休んでいる。「収入が減るため再開してほしいが、園で感染する可能性もあり不安」と複雑な心境を語った。

 町立の3園は休園を続ける。再開は各園長の判断によるがめどは立っていない。田畑文成町民福祉課長(58)は「困っている保護者をできるだけ早く助けたいが、感染者が毎日増える中、思うようにいかずつらい」と話した。