ゴーレムの正体は   作:はんでぃかむ

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未だつかめず

 玉座の前の広間の中央にいるのは女性のような顔をした男性の悪魔の像。

 悪魔図鑑の9番目、秘密を司る悪魔パイモンである。

 

――天誅

 

――玉座の前の広間で追いかけっことは、暇な奴らめ、私が直々に仕事をくれてやろう!

 

 誰が走ってしまったのかは、本人のために秘密にしておこう。

 

 すでにゲームには2回挑戦済である。広間全体とパイモンを除く71体の悪魔の像を使ったものである。

 

 1回目はその場にいたものたちだけで、2回目は1回目の反省を踏まえ対策を施してから挑戦した。

 

 ルールは簡単、中央の像の指示通りに像を並び替えていくだけだ。問題数は3問。これはシズから予め聞いていたことだ。

 

1回目で出た反省を上げていこうと思う。

 1つ、悪魔の名前なんて覚えていない。

 2つ、像を持ち上げて運ぶのは大変。

 

 施した対策は人海戦術、像の名前も一つなら覚えるのは容易である。故に71人で挑むことにした。一人一つの像の名前を覚えてもらい、指示が来たら手を挙げる。像を運べるものを一人、または二人ごとに配置してある。移動する場合は、名前を覚えた像とともに移動し、運んだものは終わり次第元の位置に戻る。

 

 ゲームに失敗すると広間に仕掛けられていた転移トラップが発動し2層の黒棺(ブラックカプセル)まで飛ばされるため戻ってくるのも大変だ。

 

 9層と10層のギミックは自動扉のような普段使うものもあったため解除していないかったが。2層に戻されるのも面倒だからといったん解除したのだ、しかしギミックを止めると像がゲームを始めなくなってしまったため、解除は取りやめた。失敗したら黒棺(ブラックカプセル)送りである。

 

「さすがに666時間この像の前で待機するわけにもいかないからな」

 

 停止条件が666時間この悪魔の像の前で待機することだ。

 

「それでは、先ほど確認したとおり、アルベドにゲームを開始させた後、私は中央で運ぶ者の指定と位置を指示すればよろしいということですね」

 

「説明はしたが、いくつか厄介な指示もあってな。運ぶ者を少し遠くから選ばなかったりしないといけないこともある」

 

「畏まりました、命令文が終わるまではタイマーは動かないというのであれば、大丈夫かと思われます」

 

 100秒以内に命令を完了させなければ失敗となる。タイマーは像とともに落ちてきた台座の針が1週するまで。

 

「アルベド、始めてください」

 

 ゴーレム起動させたのは、アルベドである。故に、ゲーム開始者となって悪魔の像とハイタッチをしなければならない。

 

「ゴーレムが嫌いになりそうだわ……」

 

 パンッと像の腕をへし折る勢いでハイタッチをする。

 

――荷運びゲーム!1問目!いぇーい

 

 るし★ふぁー気合の入ったフルボイス実装のゴーレムである。

 

――準備はいいよねー

 

――バールとアモンを入れ替えて!

 

 命令が終わると、台座のタイマーが動き出す。

 

「コキュートスはシクススの像を、シャルティアは司書長の像を入れ替えてください」

 

 すぐに指示が飛び、実行に移る。デミウルゴスの言うところによれば運び屋をあらかじめ絞っておいたほうがいいとのこと。名前の問題がクリアーされたなら、運び屋の数がプレイヤーの数であり、あとはそれを使っていくだけで終わるだろうと。

 

2つの像が入れ替わるとタイマーが止まる。1問目が終わるまでの命令を全部で100秒以内に終わらせないといけないのだ。

 

――カイムとアンドロマリウスを入れ替えて、フルカスは裏返し!

 

 すぐに2個目の命令がくる。

 

「パンドラズアクターはエクレアの像を、ルプスレギナとユリでフォアイルの像を入れ替えてください、エントマたちで手を上げている雪女郎の像を後ろ向きに」

 

――1問目は終わりだよ。次は命令が多くなるから気をつけてね!

 

 今のところは順調だ。1問目では4分の1もタイマーの針は回っていない。

 

 

 

 アインズは71人で黒棺(ブラックカプセル)に飛ばされた時のことを思い出す。

 

「ちょっとペンギン! 変なとこ触ったでしょ!」

 

「お前みたいな小娘に触るわけ無いだろうが!」

 

「恐怖公こっちこないでぇえええ」

 

「恐怖公あっち通ってあっち」

 

「恐怖公の足が頭の上にいい」

 

「吾輩が通らなければ扉をあけられないので少し我慢してください」

 

「アインズ様も変なとこ触ってもよろしいのですよ?」

 

「お前は何をいっているのだ」

 

「ウゴケナイ」

 

「マーレ、スカートがすごいことになってる」

 

「うわわ、早く降ろさないと」

 

「マーレそこで手を下げないでおくんなまし! 胸が落ちるでありんす」

 

「ペンギン! わざとでしょ絶対わざとやってるでしょ!」

 

「やめろ、私をふむんじゃない」

 

「なかなか楽しいっすねー」

 

「ルプスレギナ動かないで、ちょっと首の位置がずれてるのよ」

 

「……狭い」

 

「おやつぅみぃっけ」

 

「エントマやめて、今はそれを持ち上げないで」

 

「あああ、恐怖公の眷属がのぼってくるんですけど!」

 

「恐怖公羽広げないで!」

 

「頭の上を通るなというから飛ぼうと思ったのですが」

 

「お家帰りたい」

 

 阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 

 しかし今回は、クリアーまで辿り着けそうである。

 

――3問目! 命令は1個だけ順番通り全部覚えてねー

 

――サブナックをヴィネの左と入れ替えて、ムルムルをシトリーと入れ替えて裏返し、ロノウェをラウムと入れ替えて、アミーをアスタロトと入れ替えて、キマリスは裏返し、ビフロンスを左と入れ替えてさらに左とも入れ替えて、ブエルはストラスの右と入れ替えて裏返し!

 

 初めてたどり着く3問目、これクリアーさせる気あるのだろうか。

 

 右手を上げながら、デミウルゴスの方を確認する。なんのことはないように、淡々と指示を出していく。

 

 さすがはデミウルゴス。

 

――おめでとー! 見事3問目クリアだよ! 気分がいいからもう1問! 今度は針は止まらないよ!

 

 あたりがざわめく。

 

――参加者みんなその場で3回転!

 

 時計の針が進み始めと同時にアインズの方へ視線が集中する。ここまで来て黒棺(ブラックカプセル)には戻りたくない。

 

「やるぞ、回れ!」

 

 その場にいる全員が3回まわる。

 

――参加者みんなジャンプ!

 

「跳べ」

 

 全員跳ぶ。

 

――ワンワンワン

 

「ワンワンワン」

 

 ワンワンワン

 

――……何やってるの? はっずかしー! お疲れ様でしたー。

 

 自分の顔がアンデットのものでなければヒドイことになっていただろう。

 

 あたりを見渡すと、ほとんどのものが殺気立っていた。何人か息が切れるほど笑っているようだが。

 

「……さすがだデミウルゴス、見事な采配であったぞ」

 

「ありがとうございますアインズ様、これでゴーレムは全部揃ったということでしょうか」

 

 心が通じあった気がした。

 

「そうだ、やはりるし★ふぁー……さんはすべてのゴーレムを作り終えていたようだな」

 

 なかったことにしたのだ。今までどおり呼ぶべきだろう。

 

「そのようです。それとこれが、クリアと同時にタイマーとなっていた箱から出てきたのですが」

 

 そう言って1冊の本を差し出してくる。

 

 るし★ふぁーゴーレム大全。先ほどの事もあってこのまま破り捨てたいところであるが、かつての仲間が残した品だ、確認はするべきだろう。

 

 本を開くと、るし★ふぁーの作った72柱の詳細な説明と、ナザリックで使っているゴーレムのことが書かれていた。一通りページを確認すると、あとがき、と書いてあるページを発見した。

 

 合金というものをご存知ですか。金属の混ぜあわせてより使いやすくしたものです。

 このユグドラシルでも合金の概念があるのですが、超々希少金属についての合金は未知な部分が多いためいろいろと試してみたのです。

 別に作れとは言われていないのですが、その試作品もいくつかナザリックの各所へ忍ばせてみました。

 ぜひともその目で確認してください! るし★ふぁー

 

 

――るしふぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!

 

 アインズのゴーレム探しは続く。




これで、ゴーレムの正体は、は終わりです。
ここまで読んでくださった方々に、心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました!

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