あ、今更ですがアンケート締めきりました。たくさんの投票ありがとうございます!
永久、圧倒的人気でありがたいです……ただ、他の選択肢もそこそこ望まれてる方いらっしゃるようなので、上手いことミックスしてちょうどいい塩梅の展開にできないかな~、と模索していこうと思います。
今後ともよろしくです。
第42話 TS少女とヒーロー名
「超声かけられたよ来る途中!」
「私もじろじろ見られて何か恥ずかしかったー!」
「俺も!」
「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ……」
「「「ドンマイ」」」
休み明けの1-Aの教室。話題はまあ、予想通りと言うかなんというか……いわゆる『体育祭効果』ってやつでもちきりだった。
前にもちらっと言った通り、『雄英体育祭』で有名になった面々は、しばらくの間超有名人扱いになるからなあ……登校途中、声かけられたり、握手を求められたり、写真撮ってって言われたりすることが毎年あるそうだ。
特に、最終種目に勝ち残って、さらにそこで上位に行った奴なんかはね……私とか。
教室に入ると、さっきまでそんな風に話してた、芦戸や葉隠、切島や瀬呂なんかが、『おはよ!』って挨拶すると同時に、どうだったって聞いてくる。
「永久とかすごかったんじゃない? 何せ、トーナメント3位だもんね!」
「それに、色々っていうか、一番名場面が多いのも栄陽院だろうからな」
と、上鳴が言う通り……まあ私の場合、第1種目から続けて『名場面』が多かったからなあ……ネット配信のオンデマンドとかは、割と真面目に、視聴に年齢制限をかけるかどうか議論になったそうだし。
そういう意味では、単に強さだけよりも注目されたからなあ……身をもって知ってる。
「……怖いもの見たさで電車とか使うんじゃなかったってめっちゃ後悔したよ……超目立った」
「あー、やっぱりねー」
もともと背が高くて目立つからってのもあって、速攻気付かれて囲まれて……まあ、これもある種の有名税だと思って黙って応対してた。……超面倒だったし、時間食われたけど。
そして何より、乗ってる間に感じる無遠慮な視線が、多いこと多いこと……
いや、もう目立つのは諦めてるしいいんだけどさ……遠巻きに見てる視線の、そのほとんどがその……私のね、胸とかお尻とか、その辺に向いてるわけよ。
まあ、育乃義姉さんに『はしたない』とか言われちゃう目立ち方したわけだから、ある程度は仕方ないっていうか、覚悟はしてたけど……いい気分じゃなかったなあ。
少し最近までは、心の中の男の部分が『まあ仕方ない』とか考えて、精神的な自己防衛が上手く機能してた気もするんだけど……昨日の緑谷との会話で、また一気に女に傾いた感触がある。
……私が自分のことを、『TS転生者』なんて認識していられる時間は……もう多分、そこまで長いことないんだろうな、と思う。
……いやでも、緑谷とのあのひと時を思いだすと……やば、顔がにやけて……
「あれれ~? 何々、永久も笑ってるじゃん! やっぱ声かけられたの嬉しかったの?」
「え!? あ、いや……まあ、多少はね」
「あっはっはっは、だよねー! 何か一気に有名人になっちゃったもんね!」
「たった1日でな。やっぱ雄英ってすげーよ!」
「……まあ、望まない形で有名になった奴もいるけどな……俺とか」
若干ダウントーンの瀬呂。まあ……トーナメントで轟に瞬殺されて、会場中を埋め尽くした『ドンマイコール』が逆にすっかり流行っちゃったみたいだしな……
けど、瀬呂以上に望まない知名度を得てしまったのは……間違いなく常闇だろう。
他でもない、私との試合で……あんだけのことになってしまったわけだから。
攻撃という攻撃で私の体の衣服をはぎ取り、年齢制限すれすれの光景を作り出してしまった彼は……ネット上で、総じて『わざとじゃないんだろうけど、それでもちょっとどうなの』という感じの評価になっていた。
また、一部男性陣からは熱狂的なまでに支持されていたりする上(嬉しくはないというか、素直に喜べないだろうが)、ここ数日のネット検索におけるホットワードの1つに……『黒い淫獣』なるワードが浮上していて……。
他にも検索してみると、『洋服の破壊者』『さらけ出さす者』なんて呼び名も……うん、これ以上言うのも触れるのもやめよう。常闇の精神的な平和を保つために。
……検索で思いだした。
私は、直接は聞かされたりすることはなかったが……後からネットニュースを見て、知った。
体育祭ラストで、突然帰ってしまった飯田。
その家族に……兄に、一体何が起こったのかということを。
『保須市』に現れたという、強力なネームドヴィラン『ステイン』……通称『ヒーロー殺し』。
そいつに遭遇した、飯田の兄……ターボヒーロー『インゲニウム』が、重傷を負って今、入院中なんだとか。
教室にいる飯田は、その様子を表に出す様子はないけど……平気なはずないよなあ、身内がそんなことになって。
しかし、自分から何も言いださないことを、こっちから聞くのもアレだし……
そんな感じのことを考えつつ、わいわいがやがや騒いでいる教室をぼーっと眺め……
――ガラッ
「おはよう」
ぴたっ、と一瞬にして静かになり、全員速やかに席につく。
無論、私も例外じゃない。相澤先生が教室に入ってきたその瞬間に、私語をやめて背筋をのばしてきちんと話を聞く姿勢になっていた。
なんかもうこの辺は、芸かってくらいに見事に揃うようになってるな……このクラス。
そしてその相澤先生――包帯取れてる。よかった――によれば、今日の『ヒーロー基礎学』はちょっと特別だとのこと。
それを聞いて、上鳴や切島あたりは、抜き打ちテストや新しい学習範囲を告げられるのを警戒してるようだが……続く形で相澤先生が言ったのは、
「『コードネーム』……ヒーロー名の考案だ」
「「「胸ふくらむヤツ来たああああ!!」」」
ヒーロー名。読んで字のごとく、ヒーローとして自分が名乗るべき名前。
自分がやがてプロヒーローとなった時に、世間に広く知られることとなるその名前を、ついに、今、考えるとなれば……まあ、そりゃ盛り上がろうってもんだ。
かくいう私も、テンションはそこそこ上がっている。ぶっちゃけ楽しみにしてた。
当然のごとく騒がしくなる教室。スタンディングオベーション。うるさし。
その直後、髪をザワッと、目をキュピーンとやって再び教室を静かにした先生曰く、どうやらこないだ聞かされた、プロからの『ドラフト指名』に関わってくる話のようで……大きな山場である『体育祭』を終え、現在集まっている指名を昨日までに集計した結果が、既に出ているそうだ。
もっとも、指名が本格化してくるのは、経験を積んで即戦力として期待されるようになる2年以降だ。今回のはあくまで『興味』に近いらしい。
だとしても……まだ未熟な私らに興味を持ってくれたってだけでも御の字だ。これが、社会に出る第一歩になるのには変わりない、軽んずるわけにはいかないだろうな。
で、その指名結果ってのがが、こちら。
○A組指名件数
緑谷 3069
栄陽院 2849
轟 2798
爆豪 2552
常闇 294
飯田 227
上鳴 199
八百万 108
切島 65
尾白 47
麗日 20
瀬呂 14
「例年はもっとばらけるんだが……今年はトーナメント上位4名に集中した形だな」
緑谷はさすがというか、『体育祭優勝』の話題性はすごいってことだな。
ネットとかでもすごい話題になってて、色々取り上げられてたからなあ……『大型新人現る!』とか、『彼は単なるフォロワーか、それとも新たなる『平和の象徴』足りうるか』とか……。
体育祭を通して使ってた技が、オールマイトリスペクトのそれだったことや、オールマイトと似た超人的な身体能力が『個性』だってこともあって、いろんな雑誌や新聞で格好の話題になってた。一躍時の人だ。
その本人、自分のまさかの指名数に口をあんぐり開けて驚きまくってるけども。ただ1人3000件超えだもんなー……
もちろん、同じく『優勝』したもう1人の方も相当なもん、ではあるが……
「なんか順位一部逆転してね? 誰とは言わねーけど」
「まあ……表彰台で拘束された奴とかビビるもんな」
「ビビってんじゃねーよプロが!」
吼える爆豪。……ビビったんじゃなくて単に避けられただけじゃなかろか。それでこれだけの件数だと考えれば逆にすごいかもだが……
しかし、私も轟も多いな……。
そして、そのトップ4より下の順位の連中は大きく差が開いた形になってる。そのことを悔しがる者もいれば、単純に指名をもらったことだけでも嬉しくて騒いでる奴もいる。
「わあああああ!」
「う、うむ」
めっちゃ興奮して、前の席の飯田の肩をなぜかゆすりまくってる麗日とか。
対して、轟や八百万なんかは静かなもんだが……それでも、八百万からみて、文字通り桁違いの指名数を獲得している轟は尊敬の対象になるようで、
「流石ですわね……轟さんも、栄陽院さんも」
「俺のはほとんど親の話題ありきだろ……それより、栄陽院のが上じゃねえか、大したもんだ」
「どうだかなあ……まあ、数は普通にうれしいけど……私の場合、目立ち方が目立ち方だったから……どんなとこから来てるかってのを確認するまでは素直に安心しづらい……」
「「ああ……」」
過去にも、テレビや劇団関係者のヒーローから、お色気枠とかで指名が来た例があったそうだし……そういうのじゃなくて、普通にヒーローやれるようなのがいいな。
まあ、今更祈ったってどうしようもないことではあるが。
そして相澤先生曰く、この結果を踏まえ、指名の有無に関係なく『職場体験』に行くことになるそうだ。現場で実際にヒーローの仕事を体験することで、より実りある訓練をすると。
なるほど、その時に使うことになるから『ヒーロー名』か。
「まあ、あくまで現段階で『仮に』考えるものではあるが、適当なもんは……」
「つけたら地獄を見ちゃうよ!」
そんな言葉と共に、教室の扉を開けて乱入してきたのは……ミッドナイト先生である。
今日も相変わらず、ボンテージに極薄タイツというギリギリファッションの18禁ヒーロー(担当科目:倫理)は、相澤先生とは真逆のテンションで教卓の脇に立った。
そしてその隣で寝袋を取り出し始める相澤先生。あ、コレ全投げして寝る気だなこれから。
「この時の名前が世に認知されて、そのままプロ名になってる人多いからね!」
「ま、そういうこった……そのへんのセンスをミッドナイト先生に査定してもらう。俺はそういうのできん。ただあえて言わせてもらえば……将来自分がどうなるのか、どうなりたいのか……名前を付けることでイメージが固まり、そこに近づいていく……それを意識しろ。『名は体を表す』って奴だ……『オールマイト』とか、まさにそんな感じだな。よく考えて決めろ」
相澤先生がそう説明している間に、ミッドナイト先生は……何だろアレ? テレビのクイズ番組とかで見るフリップ(ペン付属)みたいなのを、1人1枚いきわたるように前から配っていた。
「基本的にヒーロー名だけでもいいけど、『○○ヒーロー』っていう前書き部分がある人はそれ添えてもよし。任せる。考えた人からコレに書いて、前に出てきて発表すること」
「発表形式すか!?」
「あったり前でしょうが。仮にとはいえ社会に出て名乗る名前だってのに、こんな教室で名乗るの恥ずかしがるようでどうするの」
なるほど、そりゃもっともだ。
それからしばらくの間、シンキングタイムになって……10分位した頃から、ポツリポツリと発表が始まっていった。
最初、何を思ったか芦戸が『エイリアンクイーン』とかいう、強酸性の血をイメージしたのかっていうネーミングをかまして、先生から『やめときな!』とダメだしを食らっていた。
……そんなにアレだったかな? 実は私、ちょっといいんじゃないかって思っちゃったんだが。
そのせいで若干大喜利みたいな雰囲気になりかけたが……続いて梅雨ちゃんが『フロッピー』という可愛くて親しみやすい名前を発表したことで、無事に軌道修正。
ミッドナイト先生からも『みんなから愛されるお手本のような名前』と絶賛。
その後は、思いついた者からどんどん発表していく流れになった。
なお、別に出席番号順ではない。1番と2番の芦戸と梅雨ちゃんが最初に発表したのは、まあ、単なる偶然と言うか、思いついた+物怖じや緊張をしづらい2人だったってことだろう。
切島は『
耳郎は『イヤホンジャック』。個性名そのままだが、わかりやすくていい。
尾白は『テイルマン』。まあ、シンプルイズベストってことだろうか。
さらに砂藤が『シュガーマン』で、コンセプトが被ったってちょっと気にしてた。
芦戸第2弾『ピンキー』。……色?
上鳴は『ジャミングウェイ』。由来は言わずもがな、ウェ……
「違う! 『チャージズマ』! それ耳郎がふざけてつけた奴だから! 間違えて覚えないで!」
……だってさ。
麗日は『ウラビティ』。なるほど、洒落てる。
その後も、轟が名前そのまんま『ショート』っていうのにしたり、爆豪が『爆殺王』っていうアレな名前でボツ食らってたり、峰田が『グレープジュース』っていう意外とポップでセンスある感じで褒められてたりした。
……ここまで相澤先生は寝っぱなしなんだが、後から書面で確認とかでもするんだろうか?
さて、残ってるのは、再考の爆豪と……飯田、緑谷、そして私か。
「うん。思ってたよりずっとスムーズね。次、誰かいる?」
「あ、じゃあ私が」
他に誰も上がらなかったので、私が挙手して前に出る。
フリップを見せて発表……する前に、ちょっとミッドナイト先生に確認。
「先生。やっぱこういうのって、自分で好きな名前を優先してつけた方がいいんですよね?」
「うん? どういう意味?」
「何ていうかほら……体育祭、私あんな目立ち方しといてアレなんですけど、別にそのへんで期待されてるような名前にしなくてもいいんですよね? その……セクシー路線とか、そういう系じゃなくても」
そう言うと、クラスの皆が『あぁ……』みたいな顔になった。ミッドナイト先生も。
ネット上での評判も、私の場合、『個性』の利便性や体術での戦闘よりも、第1種目からずっとやらかしてきたお色気ハプニングとか関連がメインな感じになっちゃってるからな……。
特に掲示板とかそうなんだけど、ヒーローとしての路線やヒーローネーム、コスチュームなんかも、そういったセクシー路線を期待する声がかなり多い。ミッドナイト先生と同じ『18禁ヒーロー』を期待する声すら、結構な数あるようだ。
……最後のは割と、マイク先生が戦犯だと思う。障害物競争の時のあのアナウンスが……
私としては考えてた、ないし今色々考えてる方針があるんだけど、一応こういうネットの声って奴も気にした方がいいのかと……ちょっと不安だっただけ。
説明すると、『なるほどね』とミッドナイト先生は少し考えて、
「確かに、そういうのもたまにあるのよね……活躍した時の印象がネットで根強く定着しちゃうようなパターン。でも、基本的にはそういうの気にしないで、自分がつけたいようにつければいいわ」
とのこと。そのこころは?
「確かにそのへんを意識すれば知名度なんかは上がりやすくなるけど、自分が好きになれない名前を名乗るようなことになったら本末転倒よ。ヒーロー活動自体も、楽しくなくなっちゃうでしょ? だから、自分が名乗って恥ずかしくない、これだ、って思うフレーズを素直に使いなさい」
「……!」
「……っ……!」
それを聞いて、視界の端でなぜか、緑谷と飯田が反応したように見えた。
緑谷は何かはっとしたような感じで……飯田は、どこか苦しそうな、悩むような……あ、フリップにかかれた文字消した。何だったんだ。
まあいいや……なるほど、ミッドナイト先生の言う通りだな。
「まあちなみに、私はあなたが私の後をついてきてくれるなら実は大歓迎だけどね? ……真面目にどう、目指しちゃう? 18禁ヒーロー」
「いや、やめときます……きちんと私なりの考えがあるんで」
本気かどうかよくわかんない申し出だったけど……きっぱりそう言っておいた。
なお、主に男子の声で、なんか『なーんだ』とか『もったいねー』とか『諦めんなよォ!?』とか聞こえた気がしたが気にしないでおく。最後のが峰田だったということははっきりわかった。叫びが力強すぎて。そんなに残念かお前ら……期待してくれてどうも。
ミッドナイト先生は『そっかー』と残念そうに言ったものの、トーンは軽い感じだったので、別に気にしてはいないんだろう。
促され、私は今度こそフリップを前に向ける。
「はい、どーん! エネルギーヒーロー『ダイナージャ』! 私、これに決めました」
「ほうほう……ちなみに由来は?」
「色々かかってます。頭の部分は、『ダイナミック』とか『ダイナマイト』あと、発電機を現す『ダイナモ』とかですね。後ろの部分は……インドだったかの神話に出てくる蛇の女王に『ナーガラージャ』ってのがいまして、それが『無限』を意味する存在なんだそうです。私の個性が『無限エネルギー』なので、ちょうどいいかなと。で、合わせて『ダイナージャ』」
神話云々のあたりで、常闇がぴくっと反応したのが見えた。好きそうだもんねそういうの。
ちなみに、『ダイナミック』や『ダイナマイト』は、戦い方や攻撃の威力のイメージ。目標的な意味合いも入ってる。
そして『ダイナモ』の方は……私ホラ、エネルギー使って人間点滴みたいに、他人の体力を充電するような真似とかできるし、その他にも応用範囲広いから、そのへんのイメージだ。
「うんうん、そのあたりもしっかりしてるし、語感も呼びやすくていい感じね!」
こうして、ミッドナイト先生にもOKをもらい、私のヒーロー名は『ダイナージャ』になった。
なお、後ろの方で峰田が、
「なるほど……まさにダイナマイト……!」
とか呟いてた。私の胸に視線を固定して。
……うん。そういう意味じゃねーから。
まあでも……いっか別に、実害なければ、妄想くらいは自由にさせといても。
その後、飯田がこちらも『天哉』という、名前そのまんまのヒーローネームを発表。
しかも……なぜか、苦しそうに、辛そうにそれを掲げてたように見えたのが気になった。
途中で書き直してたのに関係あるんだろうか? ……位置が悪くて、最初あいつ何書いてたのか見えなかったんだよなあ。
そして最後、緑谷のヒーロー名は……
「えぇ!? 緑谷お前、いいのかそれ!?」
「うん……今までずっと好きじゃなかった。けど、ある人に意味を変えられて……僕には結構な衝撃で……嬉しかったんだ。だから……これが、僕のヒーロー名です」
そう、『デク』と書かれたフリップを、誇らしげに皆に見せていた。
それを見て、爆豪が面白くなさそうな顔になったのと同時に……一瞬、緑谷の視線が別な方向を向いたのに気づいた。
その先には……これまた、なんだか嬉しそうにして、にっこり笑っている麗日が。
…………ほぉ、なるほど……そういう感じか?
☆☆☆
結局今日は、爆豪以外全員が、仮にとはいえヒーロー名を決めた。爆豪は後日再考になった。
それはいいとして私は、トイレに行くために、休み時間に入った教室を後にしながら……さっき見た光景を思い出していた。
一瞬交錯した視線。それだけで、2人は……緑谷と麗日はわかり合ったようだった。
多分だけど、その意味を変えた『ある人』ってのが麗日なんだろうが……それはいい。
問題は……今の光景を、緑谷が麗日と通じ合っていたと言ってもいい光景を見て……私の心に生まれた、この感情のことだ。
表情には出さないようにしつつ、私はそれと向き合う。
緑谷が……他の女の子と笑い合っていた。
麗日も、その視線に嬉しそうに応えていた。
さらに言えば、今回のみならず、麗日は普段から緑谷と仲もいいし……距離も近い。多分だけど……そういう感じで意識している部分も、多少なりあるんだろうと思う。
体育祭の時とか、よく見てるとわかったんだが……第2種目で、緑谷が発目と即で気が合って話してたり、発目のベイビーを褒めたりしてた時とか、面白くなさそうにしてたし。
そう考えると私は……緑谷の傍に、油断ならない女子がいると思うと、私は……胸の中に何か、黒い感情が渦巻いて、心がキリキリと痛むのを感じた―――
―――なんてことは全然なく、むしろ喜びでいっぱいである。
(あっはっは、つくづく自覚するわあ……色々歪んでんなあ、私)
考えれば考えるほどに、それを自覚する。
恋敵(って言っていいものかどうか)がいるかもしれないってのに、ライバル意識を燃やしたり、疎ましく思ったり、友情と愛情の板挟みに悩むでもなく……こんな風に感じるってのが、私が普通とは違うっていう何よりの証拠だよなあ……。
それこそ、TS転生とかそういうのすら関係ない、私の中の『ある価値観』あるいは『性癖』が……今まさに鎌首をもたげている。
中学の時、この価値観をクラスの女子にカミングアウトした時に、『雌ライオンかあんたは』とか『野生動物の考え方だよそれ』とか言われたのも、そしてやっぱりドン引きされたのも……そりゃ仕方ないってもんだよなあ。こんな願望……。
「さーて、これからどうなりますかねっと……ふふふ、えらいこと楽しみにしてるな私。でも、やっぱり幸せになりたいよねえ――
――――みんなで♪」
Q.指名件数の合計、1.5倍くらいに増えてるのはなぜ?
A.緑谷や永久、尾白といった、原作ではあまり活躍しなかったキャラが活躍した分、新しく需要というか評価が生まれて、原作では積極的に指名しなかった事務所が参戦したり、1人しか指名しなかった事務所が2人目を指名したりしてるから、という感じです。特に永久は、『目立ち方』関係の指名が増えてます。