デモ行進に銃向けた弁護士夫妻を訴追 米ミズーリ州
米ミズーリ州セントルイスの検察当局は20日、6月に自宅の前を通ったデモ参加者に銃を向けた弁護士夫妻を、武器の違法使用で訴追した。
マーク・マクロスキー被告(63)とパトリシア・マクロスキー被告(61)は、人種差別に反対するデモが115万ドル(約1億2000万円)相当の邸宅の前を通りかかった際に銃を抜いた。
マクロスキー夫妻は、デモに脅威を感じたために武装したと話している。
しかし検察は、被告らの行動は平和的な抗議活動が暴力に見舞われる危険を作り出したと説明した。
「武器を振りかざした」
セントルイスのキム・ガードナー検事は、「非暴力的な抗議に参加している人に、脅威を与える仕草で武器を振り回すのは違法だ。幸運なことに死者が出るような事態にはならなかったが、セントルイスではこのような行為は受け入れられない」と述べた。
「平和的に抗議活動を行う権利を守らなければならない。脅迫によって抑え込もうとする試みは許されない」
マクロスキー夫妻は武器の違法使用のほか、第4級の傷害罪でも訴追されている。
被告らの弁護人を務めるジョエル・シュワーツ氏は、「何も犯罪が起きていないと固く信じているため、訴追は残念だ」と語った。
問題となった行動は6月28日、デモ隊がセントルイスのライダ・クルーソン市長の辞任を求め、市長宅へ向かっている最中に起こった。2人の様子をとらえた動画では、マーク被告とパトリシア被告がデモ隊が自宅前を通った際に銃を向けている。
被告らの弁護団によると、白人のデモ参加者3人が2人を脅し、私有地に侵入したという。
また、警察の捜査に対し被告らは、大人数の集団が「通り抜け禁止」、「私道」と書かれた鉄の門を破って入ってきたと述べている。
一方、デモの主催者は、門は開いた状態だったと主張している。
このデモは、5月にミネソタ州で黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫されて死亡した事件を受け、全米で起こった人種差別や警察暴力に対する抗議の一環。クルーソン市長は、警察への援助停止を求める活動家の名前と住所をフェイスブックのライブ配信で読み上げ、反感を買っていた。
州知事は被告らを擁護
被告らは共に人身傷害事件を専門とする弁護士で、私有地に住んでおり、私有地を守る権利があると主張している。
ミズーリ州のマイク・パーソン知事(共和党)もマクロスキー夫妻を擁護しており、検察当局がこの件を刑事訴追した場合には恩赦を与える用意があると話している。
また、地元のラジオ番組に出演した際には、「2人が刑務所で過ごすことはないと思う」と語った。
同知事は州議員時代、自宅を侵入者から守る際に殺傷能力のある武器の使用を認める通称「城の原則」法の草案を共同執筆した経緯がある。
「多様性プログラム」への参加を推奨
武器の違法使用は、最大で4年の禁錮刑となる可能性がある。
しかしガードナー判事は、被告らが裁判所と関わるのを減らすため、「多様性プログラム」への参加を推奨。地域サービスや改善のためのコースを受けさせる命令になるとみられている。