挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
義姉たちが全員重度のブラコンだった。 作者:個味キノ/藤宮カズキ

共通ルート 第一部

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
9/51

夏希姉ちゃん、俺たちは『姉弟』ですよ?

9話投稿です!!

今回は夏希回です~


 ピンポンパンポーン。


『志木春斗君。志木春斗君。至急、生徒会室まで来てください』


 ピンポンパンポーン。


「……春斗、何かしたの?」

「心当たりはまるでないな」

「じゃあなんで、昼休みに生徒会長から呼び出されるの?」

 そんなの俺が聞きたい。

 だから優美、その疑わしそうな視線をやめてくれ。


「ていうか、今のってやっぱり夏希姉ちゃんだよな」

 びっくりした。

 校内放送で名前を呼ばれるなんて、早々あるもんじゃないし。


「とりあえず行ってくる。お昼食べちゃっていいぞ」

「あ、うん。わかった……」

 気持ちしょんぼりとした優美を置いて教室を後にする。


「あ、春斗! もう、遅いよ。お昼休みが半分終わっちゃったじゃん!」

「急に呼び出してそれはなくない!?」

 明らかに文句を言う権利は俺にあるよね!?


「まあ、いいや。ところで、冴川さんは?」

「お昼休みだし、どこかでご飯食べてると思うよ? 今日は生徒会の予定ないし」

 だったら夏希姉ちゃんは生徒会室でひとり何をしてるのさ。



 ──がちゃり。



「え、なんで鍵かけてるの?」

 頼むから脈絡なくそういうことしないで!

「なんでって。春斗とふたりきりなのに、邪魔されたくないから……、かな」

 あー……、そういうこと。


「夏希姉ちゃん。私用で校内放送を使うのはどうかと思う」

「だって、スマホだと気づかないかもしれないじゃない! 春斗がいつまでたっても来てくれないのが悪いんだからね!」

「そもそもなんの約束もしてなかったからね!?」

 言いがかりにも程があると思います!


「え、嘘。春斗それ本気で言ってる……?」

「なんでそんな信じられないものを見るような目をしてんの? 俺、夏希姉ちゃんに何かした?」


「むー」

 頬を膨らましてないで、言葉にしてくれません!?



「呼・び・か・た」

「あ」

「昨日あんなに練習したじゃん!」


 そう言えばそうでしたね。


「忘れたの? 今は『さらにラブラブ強化期間』なんだよ!」

 普通に考えると忘れたいよね。

 ネーミングセンスも最悪だし。さすがあの冬華姉さん発案なだけはある。


「ほら、ちゃんと呼んで!」

「え~」

「春斗!」


「……姉ちゃん」

 超ッ絶、不承不承!


「えへへ~。『姉ちゃん』だって~。春斗が私のこと『姉ちゃん』だって~~~」

 ……そんなに嬉しいことですか!?

 俺はめちゃくちゃ恥ずかしいんだけどね!!


 なんだって今更になって『姉ちゃん』なんて呼ばなきゃいけないんだよ……。


「あ、ほら春斗。ちゃんとカウントして、カウント。冬ねえと秋ねえに負けないようにしないと!!」

「はいはい」

 これまた不承不承。

 スマホを取り出し、『姉ちゃんカウンター』と名付けられたファイルを開く。



「これで私は37回だね!」

 なんで覚えてんの!?

「冬ねえと秋ねえが36回ずつだから──。ふふふ。一歩リード! ぶい!!」

 すごいだろ。俺、昨日一日だけでそれぞれ36回ずつ姉さんたちのこと、『姉ちゃん』って呼んでるんだぜ……?


 もうね、大変だったんだから。

 姉ちゃん呼びをするたびにちゃんとカウントしろってうるさいし、最後は誰かひとりがリードしてるのはズルいってすったもんだあったし、何がしたいんですかね一体!?


「じゃあ春斗。私のことはちゃんと『姉ちゃん』って呼んでね。お昼休みも残り少ないし、時間を無駄にしないようにしないとね!」

 その言葉通りにするなら、俺も夏希姉ちゃんも即刻教室に戻るべきでは?


「あれ。そう言えば春斗。お昼は?」

「教室に置いてきた」

 何しろ校内放送で呼び出されたからな。


「そっかそっか。ふふ。じゃあ、こっち座って」

 いや、なんで今の話を聞いてそんなに喜ぶの?


「一緒にお昼食べよ!」

「そんなことしたら夏希姉ちゃんの弁当なくならない?」

「むー」

 え、なんでむくれてるの!?


 って、そういうことか……。あー、恥ずかしいんだよな、この呼び方。


「『姉ちゃん』の弁当なくなっちゃわない?」

 うっわ。言いなおしてるって思うと余計にこっぱずかしいんですけど!?

「ふふ。心配してくれるなんて春斗は優しいねぇ」

 まあ、夏希姉ちゃんが満足そうならいいんだけどさ。


「大丈夫だよ! そう思って、今日は大き目のお弁当箱にしてきたから!!」

 わざわざこのために? ってツッコむのは野暮だろうか。


「ほらほら春斗、食べて食べて。私のお手製。きっと美味しいよ!」

「それはよく知ってる」

 何しろ夏希姉ちゃんの手料理は毎日食べてるし。


「むむ」

「? どしたの?」

 弁当はいつも通り美味しいのに、何をそんなに悩んでるんだ?


「春斗。このまま毎日同じような味付けだと、飽きたりしない……?」

「そんなことないよ。毎日美味しいし」

 この唐揚げとか、どうやって味付けしてんだろうな。

 俺が作ってもこんな味にはならない。


「夏──ッ、『姉ちゃん』の料理はいつも美味いよ」

「ほ、ほんとに!?」

「ホントホント。こんなんで嘘言ってもしょうがないし」

「えへへ~。そっかぁ、美味しいかあ。あ、春斗。私の分の唐揚げも食べる?」

 褒めた途端にそれって、ちょっとチョロくない?


「そんなことしたら『姉ちゃん』の食べる分がなくなるだろ」

「いいからいいから。ほら、あ~ん」

 マジか。

 ふたりきりとは言え、『あ~ん』はさすがに恥ずかしいですよ!?


「春斗?」

「あ、ああ。……あ~ん」

 はっず!!

 いや、これは恥ずかしいって!!


「ねえねえ春斗」

「ふぁに?」

 口に物が入ってるときに話しかけないで!


「今の、お嫁さんっぽくなかった?」


「んぐっ!?」

 いきなり何言ってんの!?

 唐揚げを吹き出しそうになったじゃん!!


「春斗!? 大丈夫? お水飲んで、お水」

「っぷは」

 あー、死ぬかと思った。

 まさか義姉の手料理で殺されかけるとは思わなかった。


「あはは、ごめんね。将来春斗と結婚したら、こんな風に過ごせるのかなって思ったら、つい」

「話を先取りし過ぎだからね!?」

 一昨日カミングアウトしたからって、そんなナチュラルに『結婚』とか言われても困るから!!


「そ、そうだよね。まずはその、……恋人、から、だよね……?」

 いえ僕らは家族です。

 血は繋がってませんが立派な姉弟です。


「ね、ねえ春斗。ご飯食べたら眠くなって来ない!?」

「まだ唐揚げふたつしか食べてないよ、姉ちゃん」

「で、でもほら。もうお昼休みも残り少ないし!!」

「だから何さ、姉ちゃん」

 さっきから昼休みの残り時間気にし過ぎじゃない?

 アディショナルタイムか何かなの?


「膝枕してあげるからお昼寝しない!?」

「しない」

「なんで!?」

「眠くないから」

 今は睡眠欲より食欲。

 おー、唐揚げだけじゃなくて卵焼きも美味い。さすが夏希姉ちゃん。


「春斗のいじわるぅ~。この間小百合とは抱き合ってたのにぃ」

「っうぐ」

 喉つまり、本日二度目。

 水。水を飲む。


「っぷは。──それ掘り返す!?」

「だってだって、羨ましかったの!!」

「冴川さんに二度とするなって言ってたじゃん!」

「小百合はダメ! でも私はいいの! だって、将来春斗とその、……け、結婚するんだから!!」

「だから飛躍し過ぎだからね!? 俺ら姉弟だよ!?」

「でも血は繋がってない!!」

 そりゃそうだけど!!

 そうじゃなくない!?



「どうせ将来するんだから、今しても同じでしょ!! ほら、膝枕!」



 ぐいっと、頭を抑え込まれる。


 えー、膝枕ってこんな勢いのあるものだったっけ?

 確かにやわらかいし、いい匂いもするけど、なんか思ってたのと違う。



「えへへ~。春斗春斗。今の私たちって、とっっっても! 恋人らしいよね!!」

 だ・か・ら!

 俺らは家族!!

 姉弟だから!!!


 結局、昼休みが終わるまで夏希姉ちゃんの膝枕は続いた。おかげで昼飯がろくに食えないままに五時間目の授業を受ける羽目になったけどな!!



10話は水曜日の20時予定です! 可能であれば11話も同じぐらいに投稿します!

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。