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義姉たちが全員重度のブラコンだった。 作者:個味キノ/藤宮カズキ

共通ルート 第一部

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生徒会は魔境です

めちゃくちゃ遅れてしまってすみません……!

生徒会は全部で4人いるのですが、そのうち1人を出してみました!

ちなみに全員春斗よりは歳上にあたります。

 

 5月も下旬に入った頃。


 中間テストも無事終わり、6月にある体育祭に向けて徐々にクラスが浮足立つ中、俺は放課後に生徒会室を訪れていた。



 夏希姉ちゃんに呼ばれた……とかではなく、自分のクラスの体育祭のアンケートをまとめて持ってきただけだ。



 なぜ俺が持ってきたかというと、俺がクラス委員をやっているからである。

 なんてことのない理由だ。ちなみに相方のクラス委員は部活があるらしく、アンケートを持っていくだけなら1人で事足りるので快く請け負った。



「失礼します」


 ドアノブを捻り(生徒会室は普通の教室と異なり、きちんと部屋として設置されている)、部屋に入った俺を待ち受けていたのは夏希姉ちゃん――



 ではなく、ウェーブがかった茶色の髪の毛を伸ばした、垂れ目よりの優しそうなお姉さんだった。



「あら、あなたは……もしかして春斗君かな?」



 たぬき顔……と言うのだろうか、可愛さの中に優しさ成分を大量に含んだような整った顔に柔和な笑みを浮かべると、何故か初対面のはずの俺の名前を言い当ててきた。

 そして垂れ目のお姉さんは来客用と思しきソファーから立ち上がると、俺の方に寄って来て、まじまじと俺を観察し始めた。



「そうですが……どうして俺のことを知っているんですか?」

 そこまでまじまじと見られると流石に少し居心地が悪い……。



「なっちゃん――あなたのお義姉さんから話を色々と聞いているからね。あ、自己紹介がまだだったね、私は冴川(さえかわ)小百合(さゆり)。生徒会で会計をやっているの」



 冴川さんは丁寧なお辞儀をすると、今度は悪戯っぽい笑みを浮かべている。



「とりあえず立ち話もなんだし、ソファーに座って?」

「い、いやアンケート用紙を渡しに来ただけですから……」

「いいからいいから♪」



 冴川さんは俺の背を押すと、3人がけのソファーに俺を座らせた。



 ――そして何故か俺の隣に冴川さんも座ってきた。



「え!?」



 ちなみに、この生徒会室にはテーブルを挟んで向かい合わせに3人がけのソファーが二脚ある。

 それは来客用かつ打ち合わせ用なのだろう。

 見る限り、役職ごとに個別の机はあるみたいだが、そこまで多い人数でもないので普段はこちらで仕事をしているのだろう。実際、テーブルの上にはいくつかの書類が置かれているしな。



 つまり何が言いたいかというと、向かいのソファーが完全に空いているのに俺の隣に座ってきたのである。


 しかもめちゃくちゃ密着して。



「冴川さん!?」

「あら、なっちゃんを呼ぶ時みたいに『小百合姉ちゃん』でいいよ? あなたなら『さっちゃん』でも許すよ?」


 今は呼び方を決めてる場合じゃないんだが!?



「なっちゃんがいつも褒めるだけあって可愛い顔してるね……お、しかも意外に筋肉質だね?」



 あまりの急展開に固まってしまった俺を、冴川さんが至近距離で見つめながら体をベタベタ触ってくる。



「さ、冴川さん、離れてくださいっ!!」


「性格も紳士的と……これはなっちゃんが溺愛するのも頷けるなぁ」



 冴川さんは俺の体を触る手を止めようとせず、それどころか俺と向かい合わせになるように膝の上に乗ってきてしまった!!



「よいしょっと……あ、春斗君は体温が高いタイプなんだね? なっちゃんと一緒だ」


 今度は抱き着いて来た……!

 三人の義姉たちはまだ『家族』と思えば理性を保つことも出来たが、冴川さんは本当に他人、というか年上の綺麗なお姉さんという感じなので耐えられるかすら分からない……!!



 そうやって葛藤している間にも冴川さんは俺を抱きしめ撫で回し、挙句の果てには耳元に口を寄せて――



「ね……なっちゃんでは出来ないこと、してあげようか?」



「っ……!!」

 いよいよ色々とヤバくなってきたその時――



「小百合ただいまー!! ねぇねぇ、今日は春斗が来ると思うんだけどもう来――小百合!?」



 夏希姉ちゃんが生徒会室に戻ってきてくれた。

 ありがとう夏希姉ちゃん、あなたの義弟は道を踏み外さずに済んだよ……!!



「小百合!! 春斗から離れて!! いくら小百合でも春斗はダメ!! 今すぐ離れて!!」

 ものすごく焦った様子の夏希姉ちゃんは、俺から冴川さんを無理やり引き剥がそうとする。



「あ~~、見つかっちゃったか~~。はいはい、離れるね?」


 渋々といった感じで俺の膝の上から降りて、向かいのソファーに何事もなかったかのように座り直す冴

川さん。

 あんなに大胆なことをしてたのに、なんでそんなに余裕なんだ……!


「春斗!! 何もされてない!? 大丈夫!?」

 夏希姉ちゃんはまだ焦っていて、俺の体をさすりながら心配そうに覗き込んでくる。



「だ、大丈夫だよ夏希姉ちゃん。ちょっと話してただけだし」


「ほんと? 良かった……!!」


 少しだけ安心したのか、安堵のため息をつく夏希姉ちゃん。

 それでも向かいに座る冴川さんを警戒し、俺の隣に座って俺の腕を抱くように寄り添ってくる。


「小百合!! 春斗にだけはダメだっていつも言ってるでしょ!!」


 冴川さんを睨みながら騒ぐ夏希姉ちゃん。

『ダメ』って何がだろうか……?


 夏希姉ちゃんに睨まれながらも冴川さんは柔らかい笑みを浮かべ

「だって思ったよりも可愛かったから……でもそこまでなっちゃんが怒るなら、やめとくよ? …………今日の所は」


 とのたまった。


「今日のところは!? いつもダメだよ小百合!! 春斗だけはダメ!!」


 そのセリフにまた夏希姉ちゃんは焦り、俺の腕を更に強く抱きしめ、冴川さんに抗議する。




 その後、夏希姉ちゃんは冴川さんに抗議していたが、冴川さんは何を言われても余裕の笑みと回答で受け流していた。

 しかも時折俺に対して際どいセリフを投げかけるせいで、その度に夏希姉ちゃんは焦ったように抗議することになり――結局アンケートを渡すだけだったのに、下校時刻まで生徒会室にいることになってしまったのだった。



 ――あとで聞いた話。冴川さんは稀代の『歳下殺し』として有名らしい。

 それで夏希姉ちゃんは焦っていたのか……。



次回は秋ねえの大学エピソードです。

1/7の24時までになんとか……!!

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