ドライブスルー方式のPCR検査のデモンストレーション(愛知県豊明市)
新型コロナウイルスの感染が拡大する東京都や大阪府など大都市圏では、検査の陽性率が上昇し続けている。検査体制はなお不十分で感染者の増加に追いついていない恐れがある。4月の「第1波」で指摘された目詰まりの解消が急務だ。
厚生労働省の公表データによると、27日のPCR検査の実施人数は過去最多の2万4千人に達した。1日約3万5千件の検査能力の7割の水準まで高まった。
検査体制は逼迫し始め、東京都は抗原検査を含めた検査能力を1日6500件から1万件まで引き上げる方針。大阪府は28日、検査件数が能力のほぼ上限の2千件超となった。愛知県では地元医師会から検査の上積みを求める声が上がる。
陽性率は急上昇し、東京都では7月1日の3.9%から27日に6.5%になった。大阪府で一時13%台まで高まるなど、市中感染の広がりが指摘される。国や都は夜の繁華街などで積極的に検査した結果とするが、4月のような検査体制の目詰まりが懸念される。
積極的な検査で封じ込めを狙う海外に比べ検査数は依然見劣りする。英大学の研究者らのデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」によると、1千人あたりの1日の検査人数は、新規感染の水準が日本と比較的近い英国が1.9人、ドイツが0.9人。日本の人口に置きかえると24万人と11万人に相当する。
日本では民間検査会社のPCR検査の能力も十分高まらない。通常の受託検査に比べ採算性が高くなく、いずれ感染が収束する可能性もあり「設備投資のアクセルを踏みにくい」(検査会社)。
検査能力に限りがあることから、医師は症状を慎重に見極めて検査の要否を判断する。感染者の周囲への検査も抑制的で、検査数は伸びにくい。
カギを握るのが1日約2.6万件の能力がある抗原検査だ。検体を採取した場で結果が分かり、PCR検査より利便性が高いが、当初は精度の問題で制約が多く、利用が広がっていない。東京都で検査全体の2割、愛知県は1%にとどまる。使い勝手は向上しており、普及が課題となる。
保健所の人手不足も再び顕在化している。感染経路を追跡する積極的疫学調査で特に逼迫する。「4月と違い経済活動が止まっておらず、濃厚接触者が多く負担が急速に増した」(葛飾区保健所の担当者)
米ニューヨーク市は「トレーサー」と呼ぶ担当者3000人を雇い、濃厚接触者を探し出す。7月中旬に同市で死者がゼロになるなど、状況は大きく改善している。
日本政府は積極的疫学調査で的を絞って検査して封じ込めを狙うが、感染に歯止めがかからない。専門家でつくる厚労省のアドバイザリー・ボードの27日の非公式会合でも一部のメンバーが、さらに感染が広がった場合は同調査の範囲を絞るなど保健所の負担軽減を図るべきだと指摘した。