米中の対立激化 世界の安定化へ自制を

2020年7月30日 07時50分
 米中両国が互いに総領事館を閉鎖し合うまで対立が先鋭化した。一九七九年の国交正常化以来、関係は最悪である。国際社会の安定に両大国の協調は欠かせない。双方に自制を求める。
 米中和解の立役者ゆかりのニクソン大統領図書館(カリフォルニア州)を、ポンペオ国務長官が対中政策の演説の舞台に選んだところに、国交正常化以来続けてきた関与政策との決別を印象付けたい思惑が見てとれた。
 関与政策には、中国の改革開放路線を後押しすることで民主化を促す狙いがあるが、ポンペオ氏は「失敗だった」と断じ「これ以上関与政策を続けてはならないし、戻ってもならない」と述べた。
 そのうえで「自由世界が共産主義の中国を変えなければ、中国がわれわれを変えるだろう」と指摘し、中国に対抗するため自由主義諸国の新たな同盟を構築する必要性を訴えた。
 関与政策に代わる強硬路線は、トランプ大統領の再選戦略と絡み合っている。それだけに危うい。
 コロナ対策の不手際で支持率低下にあえぐトランプ氏は、外敵をつくることで国民の不満の矛先をかわそうとしているのだろう。選挙情勢次第では一層の強硬姿勢に傾斜しかねない。そうなれば米中対立は歯止めを失う。
 中国が権益を主張する南シナ海では、両国が相次いで軍事演習を行って緊張が増している。偶発的な軍事衝突が起きる懸念はぬぐえない。
 通商に始まりハイテク、宇宙探査、香港問題などあらゆる領域で繰り広げられる米中の覇権争いは「新冷戦」とまで呼ばれる。この戦いは長く続くだろう。
 ただ、衝動的なトランプ氏に確たる対中戦略があるようには見えない。目先の利益にとらわれて同盟関係や多国間協力を軽視してきたのはトランプ氏だ。ポンペオ氏から自由主義陣営の結束を求められても戸惑うばかりだ。
 もちろん、中国が国際社会で責任ある行動をとるよう、各国が足並みそろえて促していくことは必要である。それでも日本をはじめ大半の国が中国との相互依存関係を深めている。米中のどちらかを選べと迫られてもどだい無理な話だ。
 一方、最近の中国は覇権主義的な振る舞いが目立ち、いたずらに摩擦を起こしている。豊かになったとはいえ国全体の経済かさ上げには、安定した対米関係が不可欠であることを認識すべきだ。

関連キーワード

PR情報