在宅7割再要請 政策の矛盾が目に余る
2020年7月28日 08時17分
西村康稔経済再生担当相が経済界にコロナ禍対策の徹底を再要請する方針を表明した。ただGoTo事業では観光支援のため人の移動を促している。感染者が激増する中、国の政策矛盾が目に余る。
西村担当相は二十六日の会見やツイッターを通じ企業に再要請する内容を明らかにした。具体的には在宅勤務率七割や時差出勤の維持、大人数での会合や飲食の自粛などだ。
感染者は各地で過去最多を記録している。西村担当相は「重症化リスクのある六十代以上の感染が増えている」と認めており、今回の姿勢に異論はない。
問題は今回の動きと政府の他の政策に大きな矛盾があることだ。旅行を後押しした結果、事業開始後の連休中に人の移動と感染者は確実に増えた。しかし菅義偉官房長官は「重症者は少ない」とした上で、事業の除外地域を広げる考えはないと明言している。
来月には事業の第二弾である「GoToイート」も始める方針だ。食事券やオンライン予約でのポイント付与を組み合わせた事業で、飲食店支援が狙いだ。
人の移動や飲食を推進する一方で、警戒感をあらわにしながら企業に対策の一層の強化を求める。これでは国民は方向感を見失うばかりではないのか。
さらに麻生太郎財務相が率いる自民党の麻生派は十六日に東京都内のホテルで派閥のパーティーを開いている。首相経験者であり現在、副総理の要職にある政治家が堂々とパーティーを開きながら、政権として国民に大人数とはいえ会食自粛を要請することには強い疑問を呈さざるを得ない。
在宅勤務の推進には原則として賛成だ。ただ企業にとって新たに設備投資が必要となることも忘れてはならない。
ただでさえ苦しい企業経営の圧迫要因となるのは確実だ。とりわけ中小企業にとっては大きな負担となるはずだ。在宅七割を目指すのなら、口先の要請だけではなく追加的な支援策も合わせて提示すべきだ。
政府は感染抑止と経済の両立を目指す考えだ。ただ繰り出される政策や方針、発言に矛盾が目立ち始めている。
コロナ禍の先が読めないのは理解できる。だが政策の明らかな矛盾や混乱は見過ごすわけにはいかない。
安倍晋三首相が国民に直接、コロナ禍の現状と政府の対策について説明すべきである。
関連キーワード
PR情報