前回:【ポケモンカード旧裏/e】世界王者Jason氏が語る旧裏環境の歴史⑬「eシリーズ環境デッキ紹介」
http://blog.livedoor.jp/aqwsderft/archives/51011577.html最初:【ポケモンカード旧裏】世界王者Jason氏が語る旧裏環境の歴史①「第1弾~ジャングル環境」
http://blog.livedoor.jp/aqwsderft/archives/48758247.html
世界大会3度の優勝経験を持つ、まさに最強のポケモンカードプレイヤーJason Klaczynski。
そんなJason氏のポケモンカードの歴史を振り返る記事の新作が公開!
ということで、早速翻訳してみました。
今回は原作ゲームでは「ルビー・サファイア」に当たる、いわゆる「ADV~PCGシリーズ」(英語圏ではEXシリーズ)について言及されています。
なので、今までは「旧裏環境の歴史」として扱ってきましたが、いよいよ旧裏の名前を外さなければなりません(笑)(元々向こうでは裏面そのままなんですけどね……)
ちなみに、訳者は当時PCGの中期辺りでいったんポケカを辞めてしまったため、以降はほとんど伝聞としてしか知りません。それでも、個人的な印象としては、このADV~PCGシリーズは次々に新機軸が打ち出された、まさに激動の4年間だったように感じています。
果たして、Jason氏はどのように語られるのでしょうか?
また、普段旧裏中心のこのブログでは、今回のADV~PCGシリーズは馴染みが薄い読者の方も少なくないかと思い、文中のカードには
ポケモンwiki様へのカードテキストリンクを貼らせていただきました。
EX時代を振り返る:ポケモンカード黄金時代プレイヤーたちにアンケートを取ったら、同じような答えがたくさん得られることだろう。デッキの選択肢が多い環境がいい、プレイングが試されるような試合がしたい、幅広いカードプールが欲しいなどなど。
過去のポケモンカード環境の多くは先攻プレイヤーに大きなアドヴァンテージがあったから、「後攻すなわち即ディスアドヴァンテージ」ではない環境がいいという答えもあるかもしれない。1試合が長すぎない環境というのも好まれる傾向にある。要するに、相手が1ターンに5分も使っているのをただ座って見ているだけの試合はみんな嫌だということだ。
ポケモンカードのEX時代(2003~2007年)の競技環境は、これらの美点をすべて兼ね備えている。この環境は、強いデッキやプレイング重視の試合が盛りだくさんなだけでなく、1ターン目関連のルールが絶妙なバランスなのだ。2004年に始まったことだが、先攻プレイヤーは最初のターンにドローできず、サポーターも使えなくなった。これによって自然と、互角で対等な試合ができるようになった。
「EX時代」という用語は、ポケモンexが登場したことで名付けられた「EXシリーズ」から来ている。(※訳注:日本ではADVシリーズ及びPCGシリーズ)
EXシリーズは全部で16のエキスパンションがあり、公式大会のレギュレーションとしては5つのシーズンに分けられる。特に内4つのシーズンは使用可能なカードの多数がこのシリーズに集中している。
ここではEXシリーズ中心に構成されたそれら4つのシーズンをEX時代と定義する。
(※訳注:カッコ内は対応する日本語版エキスパンション)
2003~2004年
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2004~2005年
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2005~2006年
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2006~2007年
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・Expedition ・Aquapolis ・Skyridge (3つ合わせて日本語のeシリーズ第1~5弾に相当)
・EX Ruby
& Sapphire (ADV1) ・EX
Sandstorm (ADV2「砂漠のきせき」) ・EX
Dragon (ADV3「天空の覇者」) ・EX Team
Magma vs Team Aqua (ADVex「マグマVSアクア」) ・EX
Hidden Legends (ADV4「とかれた封印」) ・EX
Trainer Kit ・Nintendo
Black Star Promos 001–026 (プロモ)
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・EX Ruby & Sapphire (ADV1) ・EX Sandstorm (ADV2「砂漠のきせき」) ・EX Dragon (ADV3「天空の覇者」) ・EX Team Magma vs TeamAqua (ADVex「マグマVSアクア」) ・EX Hidden Legends (ADV4「とかれた封印」) ・EX Trainer Kit
・EX FireRed
LeafGreen (PCG1「伝説の飛翔」) ・EX Team
Rocket Returns (PCG3「ロケット団の逆襲」) ・EX
Deoxys (PCG2「蒼空の激突」) ・EX
Emerald ・POP
Series 1
・Nintendo Black Star Promos 001–027 (プロモ)
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・EX Hidden Legends (ADV4「とかれた封印」) ・EX Trainer Kit
・EX FireRed LeafGreen (PCG1「伝説の飛翔」) ・EX Team Rocket Returns (PCG3「ロケット団の逆襲」) ・EX Deoxys (PCG2「蒼空の激突」) ・EX Emerald ・EX Unseen Forces (PCG4「金の空、銀の海」) ・EX Delta Species (PCG6「ホロンの研究塔」) ・EX Legend Maker (PCG5「まぼろしの森」) ・EX Holon Phantoms (PCG7「ホロンの幻影」) ・EX Trainer Kit 2 ・POP Series 1 ・POP Series 2 ・POP Series 3
・Nintendo Black Star Promos 027–036 (プロモ)
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・EX Deoxys (PCG2「蒼空の激突」) ・EX Emerald ・EX Unseen Forces (PCG4「金の空、銀の海」) ・EX Delta Species (PCG6「ホロンの研究塔」) ・EX Legend Maker (PCG5「まぼろしの森」) ・EX Holon Phantoms (PCG7「ホロンの幻影」) ・EX Crystal Guardians (PCG8「きせきの結晶」) ・EX Dragon Frontiers (PCG9「さいはての攻防」) ・EX Power Keepers (「ワールドチャンピオンパック」) ・EX Trainer Kit 2 ・Diamond & Pearl (DP1「時空の創造 ダイヤモンドコレクション/パールコレクション」)
・POP Series 2 ・POP Series 3 ・POP Series 4 ・POP Series 5
・Nintendo Black Star Promos 029–040、DP01-05 (プロモ)
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※訳注1:PCG2とPCG3は2004年のデオキシスの映画公開に合わせるため、日本語版と発売順が逆。
※訳注2:PCG5とPCG6は翻訳の事情で日本語版と発売順が逆。
※訳注3:「EX Trainer Kit」は日本語版のプロモを中心に構成された英語版オリジナルの構築済みデッキ(一部再録カードも収録)。
※訳注4:「EX Emerald」は日本語版のプロモを中心に構成された英語版オリジナルのエキスパンション。
※訳注5:「POP Series」は日本語版の明治チョコスナックプロモやその他のプロモがセットになった英語版オリジナルのプロモパック。
ここではEX時代にどんなパックがあったのか概略をお見せしたいだけなので、こんな長ったらしい図を見るのはほどほどにしよう。まあどのカードがどの環境で使えるか気になる人にとっては役立つと思うが。
知っておいてほしいのは、この4つのシーズンにはどれもそれぞれユニークな個性と特徴的なデッキがあるということだ。EX時代の理解を深めるために、2003年から順番に追っていこう。
2003~2004年:株式会社ポケモンインターナショナルの乗っ取り
フォーマット:eシリーズ~ADV4「とかれた封印」
2003年はカードの経営がウィザーズ社から株式会社ポケモンインターナショナルに変わった、ポケモンカードの歴史的な一年だった。
ウィザーズ社が自社の看板商品であるマジック:ザ・ギャザリング中心の経営に戻った一方で、株ポケインターナショナルは自身が最初にリリースしたポケモンカード、「EX Ruby & Sapphire」(=ADV1)によって、死にかけ同然だったポケモンカードを甦らせようと試みた。
この野心溢れるパックでは、カードのデザインも変わり、ポケモンのまったく新しい時代が切り拓かれた。さらにマリガンやにげる、こんらんなど現在にも受け継がれる新しいルールも設定された。
このパックの一番楽しいポイントは、新しい種類のポケモンであるポケモンexの登場だ。ポケモンexは良いワザ、高いHPを持っており、普通のポケモンより強い。しかしこれは諸刃の剣でもあって、きぜつするとサイドカードを2枚引かれてしまうのだ。
新しいパックと新しいポケモンに加え、このパックではダブルバトルのルールも作られた。
ゲーム「ルビーサファイア」のダブルバトルを模したこのルールでは、互いのプレイヤーはバトル場に2体のポケモンを出し、どちらのポケモンが相手のどちらに攻撃するか選べるのだ。ダブルバトルルールが人気を得ることはなかったが、厳密には2008年まで存在し続けていた(ダブルバトル環境については後述)。
株ポケインターナショナルは今でこそガチ対戦にゾッコンだが、その最初の大会ルールではウィザーズ社の最後の3セット(eシリーズ全部)が大会で使えるようになっていた。そしてその環境は、ウィザーズ社と株ポケインターナショナルが半々になったコンボが最も強かったのだ。
このコンボを使えば、デッキから好きなカードを2枚引いてこられる。このコンボは様々なデッキで使えるが、一番上手く使いこなせるのは
バシャーモ(ADV1)入りのデッキだろう。エネコロロのエネルギートラッシュがメリットになるのだ。バシャーモデッキは株ポケインターナショナルの最初のシーズンを席巻するデッキなのだが、これは2004年3月に
バシャーモex(ADVex)が登場してさらに強くなった。
2004年6月の「EX Hidden Legends」(ADV4「とかれた封印」)の発売後、環境のデッキに多様性が見られるようになってきた。例えば、2004年のアメリカ大会のマスター部門では
サーナイトex(ADV2)デッキが優勝したのだが、シーズンの最後、株ポケインターナショナル初の世界大会を勝ち抜いたのは、バシャーモデッキでもサーナイトデッキでもなかった。世界中から集まったプレイヤーたちの度肝を抜いたのは、
日本のマグマ団デッキだったのだ。
重い
マグマ団のグラードン(ADVexst)をメインに据えた日本のマグマ団デッキは、ジュニア・シニア・マスターの3部門をすべて勝ち取った。マスター部門決勝戦では日本の大和嗣佳(Tsuguyoshi Yamato)がアメリカのChris Fulopのバシャーモデッキを打ち破った。
このシーズンが終わりを迎える頃には、株ポケインターナショナルのポケモンカード経営初年の成功は明らかだった。株ポケは楽しいプレイング重視の環境を作り上げ、わくわくする真の世界大会を開催してくれた。賞品もウィザーズ社の頃よりずっと素晴らしく豪華になっている。賞金※まで出してくれる。
(※訳注:原文では"scholarship=奨学金"という記述ですが、実質的に大会の賞金のことらしいです)
さらに派手な宣伝を行うべく、株ポケインターナショナルは優勝者のデッキのレプリカを作り、世界中のお店で買えるようにした。これにより、優勝者たちの栄冠は永遠のものになるのだ。
そして何より大事なことだが、このシーズンが終わる頃には、みんなのポケモンカードを遊び続けたいという気持ちは揺るぎないものになっていた。
フォーマット:ADV1~EX Emerald
株ポケインターナショナルが最初の世界大会で栄光を授与する頃には、既に6番目のエキスパンション、「EX FireRed LeafGreen」(PCG1「伝説の飛翔」)発売の準備がなされていた。
株ポケインターナショナルは次の大会レギュレーションでは、ウィザーズ社のeシリーズの3セットをローテ落ちさせ、2004~2005年のADV以降6セットの環境を作ることを決めた。つまり初めて株ポケインターナショナルが発売したパックだけの環境になったのである。
2004~2005年のシーズンには、この時代の最もパワフルなカードたちのほとんどが発売されている。
例えば
ピジョット(PCG1)はポケパワー「マッハサーチ」でデッキがよりスムーズに回せるため、すぐにほとんどすべての2進化デッキに入れられるようになった。
そして2004年11月、このカードゲーム史上最も衝撃的なパックのひとつが登場する。「Team Rocket Returns」(PCG3「ロケット団の逆襲」)だ。「ロケット団の逆襲」には強力な2進化ポケモンやトレーナー(「
ロケット団の幹部」など)が入っており、新しくて面白い手札破壊要素が生み出された。また、このパックでは「ポケモン☆(スター)」が初登場する。1デッキに1枚しか入れられない強力なたねポケモンだ。
(※注釈:「ポケモン☆」は日本語版ではPCG2「蒼空の激突」が初登場ですが、前述の通り、英語版は発売順が違っているため、PCG3が初登場になります)
「ロケット団の逆襲」に続いて登場したのが、「EX Deoxys」(PCG2「蒼空の激突」)だ。このパックの
ジラーチは、初手に一番出したいポケモンとして、すぐに
ノコッチ(ADVex)に代わる存在になった。また、同じパックの
スクランブルエネルギーは、素早くサイドカードを取ろうとする攻撃的なデッキを劇的に弱体化させた。
2004~2005年のシーズンが進むにつれ、環境は2進化デッキ寄りになっていく。最終的にそのほうが有利になるからだ。
これらのポケパワー偏重の2進化デッキによる環境支配は、2005年3月の「EX Emerald」の発売まで続いた。「EX Emerald」になると、開発側も特定のカード対策のカードをデザインする気になったようで、中でも突出しているのがこの2枚、「
バトルフロンティア」と
チャーレムex(QCP)だ。
「バトルフロンティア」はピジョットデッキへの壊滅的な一撃になり、対策としてスタジアムカードを入れることが必須になった。しかし本当にゲームを変えたのは、チャーレムexのほうである。みんながすぐにこのカードの強さに気付いたわけではないが、気付いた者は確実に美味しい思いができた。ポケパワー偏重の環境では、チャーレムexは完璧な対策カードである。他の2ターン目始動のデッキがスクランブルエネルギーの存在に頭を抱えていた一方で、チャーレムの「ヨガパワー」はそれをものともしなかった。チャーレムデッキは全時代を通して最強デッキのひとつであり、2005年のアメリカ大会では猛威を奮った。そして、Seena Ghaziaskarをマスター部門優勝に導いたデッキでもある。
チャーレムexの環境支配は、同年の世界大会でも続き、ジュニア部門とシニア部門で優勝を勝ち取った。しかし、そんなチャーレムも、次なる流行を目前に、Jeremy Maronの『
ニドクイン(PCG1)&ピジョット』デッキに止められてしまった。MaronとAdam CapriolaとPablo Mezaのトリオによって作られた、シンプルかつ効果的なこの『Queendom』デッキ※は、まったくのノーマークのまま優勝へと登り詰めたのだった。その道中で僕のチャーレムexデッキを倒しつつ、ね。
(※訳注:"kingdom=王国"に対する、"queendom=女王国"。ニドクインの英語名Nidoqueenから来ているかと)
フォーマット:ADV4「とかれた封印」~PCG7「ホロンの幻影」
2005~2006年のシーズンが始まって間もなく、「ホロンの研究塔」にて新しい種類のポケモンが出た。「ホロンの研究塔」のポケモン(名前の最後にδ(デルタ)のマークが付いている)は、普通のポケモンではあるが、従来とは違うタイプを持っている点が異なる。例えば、
イーブイδは無色ではなく鋼なのだ。
デルタ種のポケモンと並行して登場したのが、ホロンのサポーターだ。ホロンのサポーターはデルタ種のポケモンに特定の恩恵を与えるものもあるため、デルタ種を使うデッキでは非常に強い。しかし、ホロンのサポーターはあまりに強く万能だったため、デルタ種を使わないデッキも含め、このシーズンのほとんどのデッキの中核として入れられてしまった(「ホロンエンジン」についてはこの後で詳述)。
ルギアexもハガネールexも、ワザに水以外のエネルギーを2個要求するため、普通はカメックスexと組むことはない。しかしホロンポケモンを以てすれば、実際にどんなカードでもカメックスexの「エナジーレイン」でパワーアップできてしまうのだ。ただ、カメックスの躍進は、確かに2006年を通して最も象徴的なデッキにのし上がるほどのものだったかもしれないが、2004~2005年で成功を収めたアーキタイプのほとんどすべても引き続き使えるような環境でもあった。『Queendom(上述のニドクインデッキ)』、『ルンパカルゴ(ルンカル)』、『マインカイリュー』、そしてチャーレムexはすべて2006年でも粘り強く使われていたし、また、新しいアーキタイプも登場した。
2006年の春頃には、環境は再びポケパワー中心に回るようになり。もうひとつのアンチポケパワーデッキが舞い降りてくる。
ライチュウδ(PCG7)と
ナッシーδ(PCG7)の『Rai-Eggs』は、ポケパワー依存環境を逆に利用したデッキであり、相手にこちらのスクランブルエネルギーを起動させざるを得なくするというもので、2006年のアメリカ大会まで無警戒であった。
そしてこの方程式にある驚くべき要素を足すことで、大会優勝デッキの公式は完璧なものになる。
そう、『Rai-Eggs』を使ったMartin Morenoがアメリカ大会で14勝0敗を成し遂げ、マスター部門優勝に輝いた、という事実だ。
一方、2006年アメリカ大会の影に隠れて、もうひとつの冴えたデッキが息を潜めていた。
Seena Ghaziaskarによって作られた、
ミュウex(PCG5)と
ライボルトex(PCG2)の『Mewtric』(ミュウ(Mew)+ライボルト(Manectric))というデッキだ。このデッキはほとんどライボルトexの「でんじしょうがい」というワザ一本で戦うことになる。そしてスタジアムカードをサーチできる「
エニシダ」で、「バトルフロンティア」か「
呪われたほこら」を出して永久的にロックを仕掛ける。この2枚のスタジアムで環境のほとんどのデッキを軽く倒せてしまうのだ。
『Mewtric』はアメリカ大会優勝の『Rai-Eggs』に必ずしも勝てるというわけではないが、他の多くのデッキに有利で、特に人気のルギアex+カメックスex+ハガネールexの『LBS』(※訳注:ルギア=Lugia、カメックス=Blastoise、ハガネール=Steelixの頭文字)には圧倒的有利だった。
僕の場合は運も良く、『Mewtric』を2006年世界大会で上位32人の決勝シングルエリミネーションに持ち込み、5人の相手を倒して、初の世界大会優勝を勝ち取れたんだ。
2006~2007年:「ロケット団の幹部」のローテ落ち
フォーマット:PCG2「蒼空の激突」~DP1「時空の創造 ダイヤモンドコレクション/パールコレクション」
2003年から2006年までは、手札破壊が環境の鍵となっていた。それもたった1枚のカードによって(2003~2004年環境では「
砂漠のシャーマン」が、2004~2005年と2005~2006年環境では「
ロケット団の幹部」がいた)。
2006年世界大会の後の「ロケット団の逆襲」ローテ落ちで、環境からは強力な手札破壊カードがなくなった(唯一の選択肢は平凡な
シャワーズex(PCGst)くらいだ)。完璧なタイミングで「ロケット団の幹部」を撃つというプレイングはもうできなくなり、直近の2環境にあったようなプレイング重視でわくわくするようなものは、2006~2007年環境では失われてしまったのだ。
それでもなお、シーズンは続いていく。デルタ関連のパックがどれもまだ使えていたこともあり、2006~2007年環境の初期はデルタ種メインのデッキが多かった。『Rai-Eggs』や『Metanite』も依然強力だった。
新しいカードはどうかというと、2006~2007年環境でも引き続きアンチポケパワーデッキが流行していた。2006年8月の「EX Crystal Guardians」(PCG8「きせきの結晶」)では
ダーテングexと「
封印の結晶」が登場した。また、このパックでは初めてホロンポケモンやスクランブルエネルギーを制限するカードが出た。それが「
クリスタルビーチ」だ。「クリスタルビーチ」によって、2ターン目から攻める攻撃的なデッキがまた、スクランブルエネルギーを使うデッキを倒せるようになった。といっても、スクランブルエネルギー対策となるくらい充分な速攻ができるポケモンは、この環境ではジュペッタexしかいなかったのだが。
この環境は、当初は何かひとつのデッキが突出して強いということはなかったけれど、2007年春にダイヤモンド・パールの最初のセットが出ると、その状況は一変した。このセットには明らかにパワーインフレを起こしていた。新しい
ゴウカザル(DP1)がその典型例で、エネルギー2枚で90ダメージを与えられる。
ゴウカザルの完璧な相棒として、
エネコロロ(元々はADV1のカードだが、「EX Power Keepers」(ワールドチャンピオンパック)で再録された)がいて、『ゴウカザル+エネコロロ』はすぐにアメリカ大会で使われるデッキになった。
初めてカードの1位のプレイヤーたちが集まった2007年世界大会においても、当然のように、この『アブソルex+ブイズ』はマスター部門決勝でフライゴンデッキを倒し、再び優勝を勝ち取った。
これを以て、「EX時代」は終わりを迎える。ダイヤモンド・パールのふたつ目のエキスパンションが登場すると、株ポケインターナショナルはEXのセットを5つローテ落ちさせ、EX環境のポケモンは新しい強力なポケモンに取って代わられた。そしてゲームは次の局面へと進んでいくのだった。
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いったん翻訳ここまで。相変わらず雑な翻訳ですが、少しでも雰囲気を感じ取っていただければ幸いです。
原文記事ではこの後にADV~PCG全部をまとめた「EX環境」の考察があるのですが、さすがに長すぎるので、こちらでは2記事に分けようと思います(翻訳自体は既に終わっているので、近日中に公開します)。
環境の振り返り部分となるこの前半だけでもかなりの分量でしたが、この環境の(一応の)経験者からすると、これでもだいぶカットしまくっているなあと感じました。
例えばレックウザex(ADV3)なんかは、このシリーズの歴史を語る上で絶対に外せない重要カードなのですが、それに触れていない辺り、あくまで後半の「EX環境」をメインで語るために、長くなりすぎないように泣く泣く削ったんだろうなあと、Jason氏の苦労というか、葛藤(?)が伺えます。
ではではまた次回、お楽しみに!
次:【ポケモンカードADV/PCG】世界王者Jason氏が語るポケモンカードの歴史⑮「ADV~PCG環境考察」http://blog.livedoor.jp/aqwsderft/archives/51616189.html
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