日本の肖像画は、西洋の肖像画とは違う。立体ではなく平面。目や鼻や口などのパーツを組み合わせることで、線だけで特徴を捉えることができる。ただしその表現は、カリカチュア(特徴を大げさに描いた風刺画)と紙一重になる。
御門のアゴはまさにそれ。似顔絵を飛び越えて風刺絵にすら見えるが、「日本画をそのまま動かしたよう」と称される本作では避けられないことだったのだ。
ちなみに、本当に御門のようなアゴだったと言われている人たちがいる。「日の沈まぬ国」を作り上げたハプスブルク家だ。
近親婚を繰り返してきたハプスブルク家のアゴ長遺伝子は最強最悪に。カール五世は特に有名で、下顎が重すぎて常に口が半開きになっていたとか、噛み合わせが悪すぎて食事が丸呑みだったとか、散々なエピソードが後世に伝えられている。
そこまで育たなくてよかったね、御門。
(青柳美帆子)