疑問を投げかけるツイートが話題
「人前で薬飲むのってマナー違反なの?」と投げかけるツイートが3万以上リツイートされ、話題になっている。
このツイートをしたのは、重度のPMS(月経前症候群)を抱え、ホルモン剤を服用しているという、ごまちゃん(@gomachannel0)。
ファミリーレストランで食事の後、薬を飲もうとしたところ、隣の子連れ客に「人前で薬飲むのはマナー違反」と注意されたうえ、「食事中に薬を飲むなんて気持ち悪い」と心無い言葉を浴びせられたのだという。
また、ごまちゃんは、その後のツイートで、「ご高齢の方の中には“人前で薬を出すのはみっともない”という認識で育った方も一定数いるよう」とも書き込んでいる。
そんなマナーがあるとは知らなかった、という他のユーザーのコメントも多く見られたが、あらゆる場面でマナーが求められる昨今、実は“薬の飲み方”にもマナーが存在するのだろうか?
企業などでの人材育成などでもマナー指導を行っている、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんに見解を聞いた。
「基本的には飲んでもいい」
――人前で薬飲むことはマナー違反?
マナーというのは、ある種の決まりごとと思われている方が多いかと思いますが、マナーは決まりごととは言い切れません。
その場にいる方々が心地よかったり、スムーズにその場を進めたりするために、お互いが思いやりの気持ちを言葉や行動であらわしていくことなんです。
「TPPPO(時間、場所、立場、相手、場合)」によって答えは変わってきて、これがマナーだと考えています。
これを前提として、今回の件を考えてみましょう。
「薬を飲む側の人」は、飲まないと体調に関わるから飲みたいですし、飲まないといけない。
どうすればいいのかといいますと、レストランや職場など周りに人がいる場所で薬を飲んでいると、周りの人に体調の心配をさせたりとか、薬を飲むことを不快に思う人がいるかもしれないと想像して、緊急度に応じて、飲む場所やタイミングを考える。
そして、飲む前には周囲の人に「ちょっと失礼します」と言ってから、飲む。
こういうひと言が、人前で薬を飲むときの配慮としてのマナーになってくるかと思います。
――薬は人前で飲んでもよい?
命や体調に関わることだと思いますので、基本的に飲んでもいいですよね。
ただ、世の中には様々な考え方をなさる方もいるので、これを不快に思う人もいるということをわかった上で、自身がどのように飲むのか、そこにマナーが問われるのかもしれません。
一方で、人前で薬を飲むことは、自身の体調不良を他人に知らせることでもあります。
自身の立場的にそれが問題になる、ならないなども考慮することは大切でしょう。
「ちょっと失礼します」と言いづらい場面では?

――「ちょっと失礼します」といって、薬を飲むのは知り合いであれば言えるが、レストランで隣の席の人に言うのは不自然では?
そうですね。不自然ですね。
そういった場合は、テーブルの下で錠剤を開封して、パッと口に入れて、水を飲めばよいかと思います。
――粉薬の場合はどうすればよい?
粉薬は周囲の人に見えないような方向に顔を向けて、素早く飲む。
明らかに薬を飲んでいるということを周囲に見せない配慮があると良いですよね。
このマナー、私は初耳でした

――このツイートをしたTwitterユーザーは「ご高齢の方の中には“人前で薬を出すのはみっともない”という認識で育った方も一定数いるよう」と書いている。昔はこういうマナーがあった?
昔、こういったことをマナーとして言っている人がいたのかもしれません。
私は、九州で生まれ育って年齢は50歳を過ぎていますが、初耳でした。
高齢だから、ということではなく、周囲からそう言われて育ったとか、その人自身の考え方が影響しているのではないでしょうか。
そもそも、自分が知っている慣習以外をマナー違反としてしまう傾向がありますので、今回もその傾向の一つかもしれませんし、他に不快になる要素や事情があったかもしれない、とも考えられますね。
いずれにせよ、マナーはお互いを思いやる気持ちです。
決めつけることなく、今回のケースでいえば、薬を飲む側も、それを不快に思う側も、互いにさりげなく配慮し、受けとめ合える社会になればよいですね。
今回の取材では「人前で薬を飲むのはマナー違反」ということはないようだったが、無用なトラブルを回避するためにも、周囲への配慮や思いやりを心がけることや受けとめる寛容さは大事なのかもしれない。