米レバレッジ型ETFの比較

2018年7月12日 CFDで取引可能な銘柄を追加しました

2018年9月6日 iFreeレバレッジ500を追加しました

レバレッジ型ETFの選択肢は多い

SBI証券の外国株式口座の開設が完了し、米国ETFを購入可能となりました。

米国市場は流石に本場だけあって、ハイレバETFのような特殊な商品も数多く上場しています。日本の証券会社で購入できるのはその一部となりますが、それでも銘柄数は多くて選択に困るほどです。

さてハイレバレッジ型ETFですが、今のところ国内証券3社(SBI/楽天/マネックス)で購入可能なものはDirexion社の製品に限られています

残念ながらVIX関連のSVXY、UVXY等は購入できません。また、米国で人気の高いDDM(Dow2x)、UDOW(Dow3x)、TQQQ(Nasdaq3x)等も取り扱われていないようです。

※証券会社によっては、取扱い銘柄のリクエストを受け付けているところもあるので、後でリクエストしてみようかと思います。

日本の証券会社で購入可能な米ハイレバETF

2018/7/12 各社の取扱いを再確認しました(記事作成時点と変化なし)

レバレッジ型といっても、選択肢は非常に多いので日本の証券会社で購入可能な銘柄をまとめてみます。(記事執筆時点のものなので、今後変化する可能性があります)

まずはブルタイプのETFから。

レバレッジ型ETFの取り扱い状況 2018年7月12日時点

SBI 楽天 マネ ティッカー 銘柄 連動指数
CHAU DirexionデイリーCSI300中国A株ブル 2倍 CSI300
CURE Direxionデイリーヘルスケア株ブル 3倍 S&Pヘルスケア・セレクト・セクター・インデックス
DRN Direxionデイリー米国REIT ブル3倍 MSCI US REIT
EDC Direxionデイリー新興国株ブル 3倍 MSCI EMI
FAS Direxionデイリー米国金融株ブル 3倍 Russell 1000金融サービス
INDL Direxionデイリー インド株ブル3倍 indus india index
LABU DirexionデイリーS&Pバイオ株ブル 3倍 S&Pバイオテクノロジー・セレクト
NUGT Direxionデイリー金鉱株ブル 3倍 NYSE Arca金鉱株
RUSL Direxionデイリー ロシア株ブル 3倍 マーケット・ベクトル・ロシア
SPXL DirexionデイリーS&P500ブル3倍 S&P500
TMF Direxionデイリー20年超米国債ブル3倍 NYSE20年超米国債
TNA Direxionデイリー米国小型株ブル3倍 Russell2000

連動対象と逆の動きとなるベア(=インバースタイプ)の状況は以下のとおり。

インバース型ETFの取り扱い状況 2018年7月12日時点

SBI 楽天 マネ ティッカー 銘柄 連動指数
CHAD DirexionデイリーCSI300中国A株ベア 1倍 CSI300
DRV Direxionデイリー米国REIT ベア3倍 MSCI US REIT
DUST Direxionデイリー金鉱株ベア3倍 NYSE Arca金鉱株
EDZ Direxionデイリー新興国株ベア3倍 MSCI EMI
FAZ Direxionデイリー米国金融株ベア3倍 Russell1000金融サービス
LABD DirexionデイリーS&Pバイオ株ベア 3倍 S&Pバイオテクノロジー・セレクト
RUSS Direxionデイリー ロシア株ベア 3倍 マーケット・ベクトル・ロシア
SPXS DirexionデイリーS&P500ベア3倍 S&P500
TMV Direxionデイリー20年超米国債ベア3倍 NYSE20年超米国債
TZA Direxionデイリー米国小型株ベア3倍 Russell2000

現時点で3証券の取扱いは全く同じです。購入できるのはDirexionのETFのみで、ProShares社の製品は取り扱われていません

上記ETFを投資対象別に見ると、中国・インドなど新興国株を対象とするものと、米国株式市場の指数を対象とするもの、米国株式市場のセクター別のもの、の3つに分類できます。

番外編:CFDで取引可能な銘柄

上記のとおり現物ETFで取引可能な銘柄は限定されています。しかしCFDを使うことで、取引可能となる銘柄もあります。

取引可能な銘柄は業者ごとに異なるため、代表的な業者であるGMOクリック証券の取扱い銘柄を紹介します。

GMOクリック証券で取引可能な銘柄 2018年7月12日時点

ティッカー 銘柄 連動指数
UCO 原油ブル2倍ETF
UGAZ 天然ガスブル3倍ETN
UVXY 米国VIブルETF
RUSL ロシアブル3倍ETF マーケット・ベクトル・ロシア
YINN 中国ブル3倍ETF
EDC 新興国ブル3倍ETF MSCI EMI
UDOW 米国30ブル3倍ETF NYダウ
DUST 金ベア3倍ETF NYSE Arca金鉱株
NUGT 金ブル3倍ETF
DGAZ 天然ガスベア3倍ETN
SCO 原油ベア2倍ETF
SVXY 米国VIベアETF

※上記銘柄のレバレッジは最大5倍

御覧のように現物では買えないUDOW、SVXY、UVXYを取引することができます。

ただしCFD取引なので注意すべき点もあります。

最大5倍のレバレッジを掛けて資金効率を引き上げることが可能ですが、金利負担が発生します

米ドル建ての金利は、2018年7月12日時点で売り -1.08%、買い -4.92%となっています。FXと違い、売り建て/買い建てのどちらも投資家が金利相当額を支払わなければなりません。

現在は金利上昇局面にあり、今後は金利負担が更に重くなると予想されますので、長期保有は避けた方が良いでしょう。

番外編2:投資信託

追記 2018年9月6日 S&P500レバレッジ投信が新設されたので追加しました

大和投信 iFreeレバレッジ S&P500

  • 日々の動きがS&P500指数(米ドルベース)の2倍となることを目指す
  • 為替ヘッジ有り
  • 信託報酬 0.972%(税込)
  • 買付手数料 上限2.16%(税込) ※証券会社により手数料が異なる可能性あり
  • 2018年8月31日設定

8月末に新たに設定された投信です。国内投信としては初のS&P500レバレッジ型であり、米国ETF SSO(S&P500 2倍)に相当する商品となります。為替ヘッジ有りなので、2040(ダウ2倍、ヘッジあり)のS&P500版という感じですね。

iFreeシリーズの1本ですが、信託報酬が高めで買付手数料がかかります。

パフォーマンス比較

ブル型のETFのパフォーマンスを比較したのが以下のグラフです。

なお、CHAD, LABUなど運用期間の短いものは除外してあります。

まずは、比較的長期間運用されている4種の比較。

米国ブルETF比較1

2011年以降のパフォーマンス比較。*印付のETFは新興国を対象としています。

米国ブル型ETF比較2

メモ

  • 「*」印は新興国を対象とするETF
  • SPXLは2015年付近に2か所異常値が含まれているが、これはデータ入手元(Yahoo finance)の処理の問題と思われる。
  • CHAU、LABUは運用期間が短いため割愛

セクターによりパフォーマンスが異なるのが印象的ですが、それ以上に新興国株ETFのパフォーマンスの悪さが目立ちます。

新興国対象ETFのパフォーマンスが悪いのは何故か?

例としてインド株を取り上げます。

インドのGDP成長率は高く、株価指数の推移は良好です。直近10年間を見る限り、BSE SENSEXのパフォーマンスはS&P500を上回っています。

S&500とBSE SENSEXの比較

しかし、前述のようにINDL(3X)のパフォーマンスはSPXL(S&P500 3X)に遠く及びません。この原因として、

  1. 現地通貨(インドルピー)安
  2. 連動指数が長期間停滞したため、レバレッジが不利に働いた

が考えられます。

現地通貨安(ドル高)

インドルピーの推移を見ると、以下のようにドル高傾向が進んでいます。

インドルピーの推移

データ出処:世界経済のネタ帳 インド・ルピー/USドルの為替レートの推移

特に2011年以降は急激にドル高(インドルピー安)が進んだため、INDLのパフォーマンスを大きく引き下げたと思われます。

インドルピーは2011年から-30%以上下落しているので、ドル換算するとパフォーマンスは大きく下がってしまいます。

2009年以降、アメリカの政策金利がほぼゼロの状態が続き、インドとの金利差が開いていました。これは金利平価説に照らし合わせればドル高が進むことと一致します。

現在アメリカの金利は1.5%であり、今年は3回の利上げが行われると予想されるため、今後はインドルピー安が緩和される可能性はあります。ただ超長期的にみてドル高傾向が続いているので余り期待しない方がいいかも。

レバレッジ効果の悪影響

レバレッジの影響を見るため、INDA(MSCI Inida Index連動、通常タイプ)とINDL(3X)を比較してみます。

INDAとINDLの比較

上記期間において、BSE SENSEXは約2倍に上昇しましたが、INDAは1.5倍にとどまっています。

そして、INDAの日々3倍の動きとなるINDLはINDAより低いパフォーマンスとなってしまいました。

これは連動対象となる指数が長期間停滞すると、大きく減価しまうのが原因であり、レバレッジ型ETFの大きな弱点でもあります。

理由を簡単に説明すると、下落した株価が元の値に戻るには下落率以上に上昇する必要があるから。

例: 100円で購入した株価が30%下落すると、70円。

元の100円に戻るには、100/70 = 1.42857倍になる必要がある。つまり42.8%上昇しなくてはならない。

レバレッジ型ETFは日々の動きを元指数の数倍に拡大しているため、この減価が強調されてしまうことになります。

これはレバレッジ型ETFを購入する際に注意すべきことであり、Direxion社の商品説明でも以下の注記が記載されています。

These leveraged ETFs seek a return that is 300% or -300% of the return of their benchmark index for a single day. The funds should not be expected to provide three times or negative three times the return of the benchmark’s cumulative return for periods greater than a day.

出処:Direxion Daily S&P500 Bull and Bear 3X Shares

レバレッジタイプのETFは連動指数の日々のN倍のパフォーマンスを目指すが、長期的には連動指数のN倍になるわけではない、ということです。

まとめ

新興国株を対象としたETFに関しては、現地通貨安のリスクがあるため思ったほどパフォーマンスが出ていないことが分かりました。インドのGDP成長率は高く、SENSEXのパフォーマンスも良好なので期待していたのですが...

超長期的に見てドル高・現地通貨安が続いているため、私としては新興国を対象とするETFは投資対象から外すこととしました。

INDLとINDAの比較から、レバレッジ型の減価リスクを確認できたのは幸いでした。長期間もみ合いが続けば、どんどん減価してしまう点は特に注意したいと思います。

セクター別のETFは難しいですね。長い間に資金流入の流れが変わるため、現在良好なパフォーマンスのセクターに乗るべきか、或はパフォーマンスの低いセクターを割安と見るべきか悩むところです。

取りあえずは、S&P500の3倍の動きとなるSPXLをメインに取引する予定。私の場合は1659(米国REIT)も保有しているので、これとDRN・DRVを組み合わせることも検討するつもりです。