もちろん、中国側にとっては、アメリカとの国交正常化は、長く渇望していたことである。加えてこの時期、アメリカの後押しを受けた中国は、国連加盟を果たし、おまけに中華民国(台湾)を国連から追放することにも成功した。
こうして米中は国交正常化を成し遂げ、アメリカはそろりそろりと「関与政策」(engagement policy)を始動させていった。
関与政策というのは、中国の経済発展をサポートしてあげれば、それはアメリカの国益にもつながるという考え方だ。経済的にはアメリカ企業の利益を上げるし、政治的にも民主化の方向に進んで行くだろうとアメリカは判断した。
ところが、ポンペオ国務長官曰く、そうはならなかった。経済発展した中国は、アメリカ企業の利益を奪うようになり、軍事大国化してアメリカの覇権を奪いかけている。政治的にも、民主化どころか、21世紀のソ連のような全体主義国家となっていった。「アメリカが中国というフランケンシュタインを作ってしまった」とまで、今回言っている。
そこで、わざわざカリフォルニア州のニクソン図書館までやって来て、「ニクソン大統領が始めたアメリカの半世紀の対中政策を見直す」と宣言したのである。
この日のポンペオ演説は非常に長いものだったので、以下、箇条書きにして、主な発言を紹介する。
・このスピーチは明快な目的、真の任務を持っている。それは米中関係の異なる側面――この何十年もなおざりにされてきた膨れ上がる不均衡と、中国共産党の覇権への指針を説明することだ。
・われわれの目標は、アメリカにとっての脅威をはっきりさせることだ。それはトランプ大統領の対中政策がはっきりさせている確立された自由を守る戦略だ。
・われわれは、中国への関与が共生と協力の明るい未来になると想像していた。だが今日、われわれはいまだにマスクを付け、パンデミックが広がっていく人数を数えている。それは中国共産党の世界への約束の失敗によるものだ。
・われわれは毎朝、香港と新疆ウイグルの新たな抑圧についての見出しを読んでいる。
・われわれは中国軍がますます強大になり、ますます確かな脅威となる様を見ている。
・対中関与政策から50年を経て、アメリカ人が目にさせられているものは何か? アメリカの歴代政権が目指した中国の自由と民主への進化が実現しているか?
・もしもわれわれが自由な21世紀を望むなら、そして習近平が夢見る中国の世紀にならないことを望むなら、やみくもな対中関与という旧いパラダイムは何もなさないだろう。