今回のポンペオ演説が「米中新冷戦」を決定づけた第三の理由は、単にトランプ政権のことではなく、「アメリカの問題」として対中問題を提起したことだ。
周知のように、11月3日の大統領選挙に向けて、トランプ共和党陣営とジョン・バイデン民主党陣営は現在、熾烈な選挙キャンペーンを繰り広げている。いまのところ民主党が優勢で、このまま行けば、民主党への政権交代が実現する。
ポンペオ国務長官は、そのことを見越した上で、「どの党の誰が大統領に就こうが、これからのアメリカは習近平政権と正面から対決していく」というニュアンスで演説しているのである。かつポンペオ国務長官の呼びかけに、民主党側は反対の声を上げていない。
今回のスピーチの場所に選んだのは、カリフォルニア州ヨーバリンダ(Yorba Linda)にあるリチャード・ニクソン図書館(Richard Nixon Presidential Library)だった。
単に大統領選挙のキャンペーンの一環だったら、ポンペオ国務長官がカリフォルニア州に行くことはなかっただろう。それは、東海岸のワシントンDCから西海岸まで距離的に遠いからではなくて、カリフォルニア州が民主党の絶対的基盤だからだ。カリフォルニア州は、どうあっても民主党のバイデン候補が票を取るので、共和党の幹部が行っても選挙的には無意味なのだ。
それではなぜ、ポンペオ国務長官がわざわざ足を延ばしたのかと言えば、それはニクソン大統領が中国との国交正常化の道筋をつけた「親中大統領」だからである。日本で言うなら、日中国交正常化を断行した田中角栄元首相のような存在だ。
1971年7月16日、ニクソン大統領は突然、国交を持たない中国との関係改善と、翌年の中国訪問を発表した。いわゆる「ニクソン・ショック」だ。そして1972年2月に訪中を果たし、毛沢東主席と歴史的な握手を交わした。実際に米中国交正常化を果たしたのは、ジミー・カーター政権下の1979年元日だが、米中国交正常化は明らかに、ニクソン大統領の功績である。
当時、なぜ急転直下の米中の握手となったかと言えば、それはアメリカ側の都合によるものだった。
激しさを増すソ連との冷戦で優位に立ちたい、泥沼化するベトナム戦争を早く終結させたい、低迷する国内経済を回復させるため中国ビジネスを復活させたい……。こうしたアメリカの国益を考えると、冷戦の真っ最中で相手は社会主義国とはいえ、中国と国交を結ぶのがベターと考えたわけだ。