折りしも現在、「中南海」(北京の中国最高幹部の職住地)は、一年で最も権力闘争が吹き荒れる季節に入っている。
中南海の人々は毎年8月上旬、「北戴河(ほくたいが)会議」と呼ばれる重要会議を行う。河北省の海辺の避暑地「北戴河」に、最高幹部と、すでに引退した元最高幹部たちが一堂に会し、「中国の当面の重要問題」について意見を交わすのだ。
「現代の皇帝」である習近平総書記にとって、現役の政治家の中で、自分に牙を剥くような「反習近平派」は、もはや存在しない。唯一やっかいなのが、すでに現役を引退した長老たちである。普段は彼らを無視していればよいが、年に一度、北戴河会議の時だけは、顔を合わせざるを得ないのである。
これを千載一遇のチャンスと見ているのが、習近平政権内、もしくは外に潜んでいる「非習近平派」の面々である。普段は沈黙を強いられているだけに、北戴河会議で、自分たちが言いたいことを長老に進言してもらおうとするわけだ。
こうした傾向は、習近平政権になってから、幾度も見られている。例えば、2018年8月の北戴河会議だ。
この年の3月に、トランプ大統領が中国に貿易戦争を「宣戦布告」し、同年7月6日に、「第1弾」となる340億ドル分の追加関税を発動した。それによって、中国経済が大揺れとなったため、「習近平政権は強硬な態度を改めるべきだ」という声が、長老たちから上がったのである。
だが、今年の北戴河会議は、2年前と較べても、さらに強烈なアメリカ発の「津波」が押し寄せている中で開かれる。アメリカと対決するのか、妥協を図るのか――21世紀前半の中国の命運を左右する「大英断」を、習近平政権は迫られているのである。日本で言うなら、太平洋戦争を決断した1941年(昭和16年)の御前会議のようなものだ。
習近平総書記は、2018年3月に国家主席の任期を撤廃し、「半永久政権」の道筋をつけた。来年7月に控えた中国共産党創建100周年で、「過去4000年でどの皇帝や王も成し得なかった貧困撲滅の達成」を宣言する予定だ。
その功績を掲げて、2022年秋の第20回中国共産党大会で、総書記再任を決める。続いて、2023年3月の全国人民代表大会で国家主席を再任させる――これが習近平総書記が狙う半永久政権構想と思われる。
ところが今回、アメリカはそこに大きな楔(くさび)を打ち込んで来たのである。「トップを替え、国家体制を替えなければ、戦争も辞さない」というわけだ。